始まりの会議
何故、画家という職があるのだろうか。古来貴族とかが楽しむために作られた職業ではないのだろうか。書かれた絵については誰も多くは本人に聞くことはないだろう。今もどこかで売れない絵をひたすら描いている人は必ずいるはずだ。
八木圭太は警視庁にいた。相棒はいるがいつもどこかをうろうろしている。暇だといっていると変わらない。捜査一課にいるが嘘を並べられるような会議は嫌いだ。後、うまいこと上からの圧力に対抗しないのも嫌いだ。
「八木、新しい事件の会議だって。来いとか言ってるけど。」
工藤昭は八木とは少し違う。何処かが違うかというと上からの命令を絶対に聞かないといけないと思っている。捜査一課で机をもらっているが八木にとっては欲しくてもらったわけじゃない。
「行くさ。行かないと上が偉そうに怒るからな。もうこりごりだよ。で、事件についてはまだ何も言っていないんだろう?」
「まぁ、そうなんだけどな。一番広い会議室だよ。とりあえず来いよ。」
工藤は八木の肩を叩いた。強さは強すぎるとかいうほどではなかった。会議室に行くともう大勢の刑事たちが集まっていた。長机がたくさん連なっているが空席が目立つ。まだどこかで別の捜査している刑事も加えるのだろうと勝手に考えこんだ。
「工藤。今回の事件は?」
「被害者は阿部登。無職みたいだと踏んでるらしい。ナイフみたいなもので刺されて倒れていたみたい。」
仮定のオンパレードでさっぱり内容が入ってこない。上の人もさほど急いでないのか長い時間待たされた。コーヒーもお茶も用意はしないのだ。下の人がする行為もない。
「それじゃあ自宅で殺されたことについてはまだ調べている奴がいないのか。まだ何も進んでいないのか。情報が入った奴から動かせばいいのに・・・。」
「そうもいかないんだよ。きっと。」
騒がしかった場が静まりかえった。学校で怖いとされる先生が来たときに対応する子供のように映る。一番前の椅子に座った。
「これから会議を行う。」
後ろにつく奴はきっとエリートとかいう人たちだろう。ペコペコ簡単に頭を下げるのだろうから。
「被害者は阿部登。職業、無職と推定しておく。近隣の人達が無職だろうといっていたからな。殺人現場は阿部の自宅。争った形跡もない。顔見しりだと思われる。何かないか?」
「阿部は以前勤めていた会社に行ったところ、数か月前にやめていることがわかりました。同僚は理由を知らないという人がとても多いようです。」
事件の始まりは会議から始まる。どんな現実が待ち受けているのか。