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第6話:生徒会役員になる

 

 ☆


 入学式が終わり、部活動を何処にしようかと勧誘掲示板を見ていた凪に生徒会から呼び出しがあった。

 校内の案内をしてくれた礼を言うつもりで訪れた凪を待っていたのは、生徒会役員というポストだった。

 断ろうとしたが、浩樹は理事長からの辞令書をかざし拒否を許さなかった。



「大丈夫。なんとかなる」



 無責任としか言えない浩樹のセリフ。



「あたしがちゃんとフォローするからお嬢ちゃんは安心していいよ」



 女性ファン悩殺間違いなしの越智のウインクに後退りすると、透かさず紫藤が後ろから両肩に手を置いた。



「徐々に慣れていけばいいですし、僕達もそのために出来る事はします。

 それに遣り甲斐はあると思いますよ」



 逃げようと思っても肩に置かれた手によって完全に退路を絶たれている。



「……分かりました。宜しくお願いします……」



 そう答えるのを聞いて、越智が笑顔全開で凪に飛び付いてきた。

 越智の腕の中にすっぽりと収まった凪は、目を白黒させていたが、それに構う事なく更に腕に力を込めた。



「お嬢ちゃんならそう言ってくれると信じていたよ」


(うっひゃ~、ど、どうしよう……!)



 きつく抱き締められ悶えていると、帯刀が凪を越智から引き剥がし、自分の傍に寄せた。



「では、彼女は会計補佐として俺の仕事のヘルプに入ってもらう」



 このセリフに、越智は反対した。



「何言ってんだよ。お嬢ちゃんはあたしと一緒に副会長をして貰うんだよ」


「こっちは膨大な案件を処理してるんだ。俺の仕事を手伝って貰うのが妥当だと思うが?」


「それは、貴方がみんなを辞めさせたからでしょう。

 自業自得では?」


(始まるな……)



 静かに、だがよく通る紫藤の声が響き渡り、浩樹は小さく舌打ちしながら目頭を押さえた。



「人聞きが悪いな。

 あれは自分の不出来によって自主的に辞めたんだ」


「仕事を押し付け、氷のような視線でバカにしていたように見受けましたけど?」


「フッ。お前程じゃないさ。優しい顔して露骨に溜息ついて先輩を追い詰めていたじゃないか。

 そのせいで先輩方は姿を消したんだよな」


「そんなことした覚えはないですね」



 笑みを浮かべながらの会話。

 それは静かなトーンであるほど周囲を凍らせる。

 それに耐えきれなくなった凪は、声を張り上げて二人の間に入っていった。



「あ、あたし会計補佐やります!」


「お、お嬢ちゃん!?」



 狼狽える越智に凪は、微笑んだ。



「だって、越智先輩言っていたじゃないですか。

 帯刀先輩に負担をかなり掛けてすまないと思ってるって。

 あたしじゃ大した力になれないかもしれないですけど、頑張って補佐が出来るようになりたいです」



 そんなセリフを聞いて、帯刀は驚いたように越智を見、越智は照れ臭そうに顔を背けた。



「……あの、あたし何か変な事を言いましたか?」



 恐る恐るそう聞く凪に、浩樹は太陽のような笑みを浮かべ、彼女の頭を撫でた。



「いや、正しい。これから頼んだぞ。凪」


「はい!……ん?今、名前」


「その方が親しみ湧くだろ?嫌か?」



 当然のように言う浩樹に凪も嬉しそうに頷いた。



「名前で呼ばれた方が嬉しいです」


「だろ?だから俺の事も浩樹でいいぞ」


「ひ、ひ、浩…樹先輩……?」



 凪は戸惑いながら名を呼ぶと、恥ずかしさで耳まで赤くなって俯いた。



(小動物みたいで可愛いな)



 浩樹はそれでいいと答えながら頭を更にグリグリと撫でた。



「初めにこの学校について学んでもらう」



 話がついたと判断した帯刀は、早速デスクの上にファイルをドサッと置いた。

 デスクの上に山積みになってるそれを見て、凪は生唾を飲んだ。



「おい、恭介。

 凪は、入学式が終わったばかりだぞ。

 いきなりそれはないだろう?」


「浩樹の言う通りだ。

 今夜は歓迎パーティだぞ?お嬢ちゃんは主役なんだからドレスアップの準備がある」



 抗議する二人を一瞥し、何事もないように答える。



「パーティは8時からだ。時間はある」


「だからってなぁ」



 一日ぐらい勘弁しろと訴える二人を凪は制した。



「あの!心配して下さってありがとうございます。

 でも、大丈夫ですから」


「しかし、お嬢ちゃん」


「帯刀先輩はあたしに早く慣れさせようと思ってこれを準備して下さったワケですよね?あたしだって早く慣れたいですから」



 笑顔でそう言われ、越智は仕方ないといった表情を浮かべた。



「そんな笑顔で言われたら引き下がるしかないじゃないか。

 でも、無理はダメだぞ。その可愛らしい顔が曇るのは悲しい事なんだからな」



 同性がとても使う言葉じゃない。

 凪は、なんとか苦笑するだけで留めて、デスクに向かった。



(に、しても膨大な……)



 内心ウンザリした凪だったが、ファイルをみていくうちに面白くなり、苦痛を感じる事はなくなっていた。

 特に行事を行う経緯はとても面白く、時を忘れて没頭した。



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