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博徒が往く  作者: 道ノ瀬
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第3話「Fランク」

あの後何やらスイッチが入ったらしいリュシーに拘束され一刻ほど。説明はぱぱっと終わるはずもなく、一刻を告げる鐘でリュシーが我に返った時にはかなり消耗していた。なんというかいい人は多いんだけどな、ああいうタイプは。怒涛の勢いで言葉が飛んできて、感情の奔流には精神がガリガリと削られる。良くも悪くもエネルギーの塊なんだよな。身を任せている時は自分も元気になった気がするが離れた時にドッと疲れがくる。


「はぁ」


ともあれ親切なリュシーのおかげで冒険者の基本は頭に叩き込むことができた。


「まずは初心者向けのために作られた冒険者管理の森での薬草採取のクエストですね」そういって半ば強引に受注されたクエストを達成するため森へ向かうさなかに、ステータスプレートを見たり、詳しい事はこれに書いてありますからと言って渡された冊子を読んでみたりしたが細やかな差異はあれど大方、すでに説明された内容だった。


――――――――――――――――

イカリ(冒険者)

グレード:F

クラス:遊び人

位階:1

アーツ:危機察知

預け入れ:800000∀(アーツ)  

――――――――――――――――



プレートとボードの一番の差異はプレートでは詳細が確認できないことだな。人に見せることを主眼としたものらしいから必要ないのかもしれない。例えばボードでは遊び人の詳細を見たいと念じたときに重なるようにして

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

【遊び人】

アスガルドにおける一次職のひとつ。能力値では器用が高いが素の戦闘力は0次職並み。

反面、ジョブによる武器制限が無く、器用が高いため自由度は高い。

戦況に応じて職業スキルを使用し、リスクをおいながら能力を底上げして戦う。

 備考

職業変更には戦闘・賭博などでリスクを負い続けることが必要であるが、前者は生き残ることを前提とした戦闘を生業とするもののポリシーに反し、後者に関しては多額の資金が必要であり、それほどの金銭を用意できるものであれば何らかの職についていることが一般的であるため、認知度の低い職である。字面から受ける偏見により印象は悪い。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――


のように表示されるがプレートにはそれがない。


冒険者のステータスプレートに表記される項目は名・グレード・クラス(職)・ランク(位階)・アーツ・ギルドへの預け入れ金の六つ。ステータスボードとの差異は冒険者ランク・アーツ・預け入れ金の3つ。


冒険者のグレードはF・E・D・C・B・A・S・SS・SSSの9つでF・E(雑用)・D/C(討伐者)・B/A(守護者)・S~(開拓者)に分類されるらしい。

一般に想像される旅をしながらモンスターを狩って生計を立てる冒険者というのはグレードCぐらいなものでグレードDまでは生まれた場所の近くにあるギルドに登録して冒険者としてのノウハウを学び、逆にグレードB以上ともなれば要人や領主などに雇われ腰を落ち着けることが多いようだ。またグレードS以上は名誉職のようなものでギルドに一定の貢献を重ねたものが相応の規模のギルドを新天地に開くことが許されるものらしい。


残り2つのアーツと預入金には密接な繋がりがある。

まずステータスプレートに表記させるアーツは通貨の事ではなく、冒険者ギルドに金銭を預け入れる、あるいは支払うことによって得られるスキルの事らしい。金銭でスキルを得る方法は他にもあるが冒険者ギルドではプレートへの表記を条件に、格安で販売しているんだとか。また冒険者は預入金の表記のお陰で冒険者ギルドであればどこでも金銭を引き出すことができるようだ。


▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽▼▽



そうしているうちに門を抜け、森に辿りついた。ギルド管理のという言葉どおり人の手が加わった森で道があり、木は間引きされている。自然のままで手の加えられていない森は正直、不気味だからな。危険がなくても遠慮したい感がある。


「クロト、この世界では森に手を加える事は一般的なことなのか?」

森に入りしばらくしたところで、人の目があるところでは姿を消していてもらうことになったクロトに声をかける。

「人が頻繁に出入りすることを手が加えられていると認識するのであれば肯定です。森は人々の生活圏にありながら、目の届きにくい場所で放置することは魔獣の増殖に繋がります。そのため治安維持の一貫として森内部での薬草の採取や魔獣の討伐と平行して定期的な森の調査が、領主から冒険者ギルドに委託されているのが一般的です。」


「へぇ、この森みたいに開けている森はどうなんだよ?」


「一般的ではありません。が、森とは本来魔素(魔獣が発生する原因)が発生しやすい場所であり、そうでない森は希少性から発見されしだいギルドに保護されるようです。保護される理由として森でしか栽培できない薬草があること。魔獣化の原因である魔石の生成は魔素を含んだものを摂取することと考えられていることが挙げられます。」


「だからこんな草が重宝されるわけか。そりゃ誰だって魔獣になんかなりたくないわな」

「肯定します」

「クロトに言ったんじゃねえよ」

「……」


初めてのクエストとして外観図を渡され依頼されたのは吸魔草の採取。折角だからと識別眼を使ってみると


【吸魔草】

魔素を非常に吸収しやすい性質を持った草。

魔素の研究に用いられる他、薬用としては魔素のない森に植生するものを丸薬とし、体内に溜まった魔素を排出することを目的として要される。


といった情報と説明を受けた吸魔草に相違ないという認識が浮かんだ。説明に情報は自分の知識に依存すると書いてあったから若干不便そうなスキルだと思ったものだが、認識が言葉として浮かぶのは存外分かりやすくて悪くないな。少なくとも採取の依頼では不自由しなさそうだ。


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