【7】
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大学の最寄り駅近くにある居酒屋チェーン店に、私は待ち合わせよりも少し早くに来ていた。当初の予定では3人の予定だった。特に予約をしていたわけではないが、2人多く5人がこの場所に集まっていた。
「…なんか人数増えてない?」
「気のせい、気のせい」
「絶対気のせいじゃないでしょ?」
ルカに視線を向ける。
増えたのはルカの知り合いなのは明らかだった。呆れたため息を私はついた。
「それはね、アルコール飲ませなければ法律には触れないよ?全員の年齢確認はしないと思うし…それでも、未成年を誘うってどうなの?『成人』として」
「人数は多い方が楽しいでしょ?」
「ふーん、本当に? 他に目的があるんじゃないの?」
ルカの本当の目的は、彼女を人数が多い集まりに誘えさえすればよくて、利用された感じがするのは、気のせいではないのだろう。つき合いの長い私の直感がそう告げている。どうして、こういう時の直感ほどよく当たるのか。
疑わしいという視線をルカに向けると、アハハと苦笑を浮かべたまま耐えきれなくなったのか視線を横にそらした。
その場にいたルカに誘われた夏美さん以外の全員が、ほぼ同じ事を思った気配がする。(この人、図星)だと。
「…私から行きたいと言ったので、新山さんが悪い訳じゃないです」
当人の夏美さんは困ったような口調でルカをかばう事を口にした。それなら、仕方ないのかもしれないとみんなで視線をあわせた絶妙なタイミングで、次の事を彼女が言った事で、仕方ないのかもしれないという空気が壊れされた。
「ただ、夕飯を食べたいと言っただけで」
由香は子供を叱るような表情を浮かべてルカを見る。
「ルカ」
「はい」
「だめでしょ、夕飯食べたいと言う未成年に成年が誘うのは」
「…はい」
しょんぼりとした表情を浮かべ、ルカは上目づかいで由香を見上げる。
「やっぱり、ダメ?」
「……」
無言のダメを見て、ダメかと独り言を言う。
「ま、せっかくだし、みんなで食べよう♪ここ料理もおいしいって評判がいいお店なんだよね」
「そうだね、このメンバーで集まる事がそうそうなさそうだし」
「夏美さんも行こう」
みんなが居酒屋に姿を消す中、何度目かの深いため息を私は吐き出した。
一人で彼女を誘う勇気がなくて、ルカを飲みに誘った。それが結果として人数がもっと増えるなんてと思いながらも、どこかでほっと安心している自分がいる事に気がついていた。楽しい喧噪の中では、彼女に告白しようとする自分なんて隠れてしまって、今だけでも隠れていてほしかった。
私はこの後、お酒の力というのは恐ろしいものだというのを実感する時間を過ごす事になってしまった。