表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/9

【6】

 【6】


 そもそも、私がルカと出会ったのは大学の構内ではなかった。

 同じ大学に通ってはいても名前すら知らない、そんな事が起きるのは同じ学年だろうとクラスというものがほとんどなく集まる事もない。同じ大学なのだと気がついたのは、路上で出会ってからしばらくたってから知った。


 今思い出してみると、あれはナンパだったと言えるかもしれない。


 大学までの通学路で夕方になると歌っている高校生が居る。

 いつも決まった曜日の決まった時間で路上ライブをしている彼女らと、話しているファンの中にルカが居た。

 特に話しかける事もせずにそのまま通り過ぎてしまうとしたのに、いきなり楽しそうに誰もが知っている曲を歌い始めていて、私の足がとまってしまっている。路上ライブをしている彼女の方が正直なところ歌は上手い。それでもルカの声は、個性的な魅力があってそのまま聞いていたいと思えた。

 歌い終わった頃に拍手をすると、私に気がついたルカは笑みを浮かべる。

 「・・・次は、何時居るの?」

 「まだ決まってないけど、コレよかったらどうぞ。次の活動はそこに書く予定みたいだから」

 そう言って彼女の活動記録ブログのURLが書かれたチラシを渡してくる。

 「分かった」

 その日はそのまま帰宅した。


 その後、何回か活動する予定がある日付を確認すると、その場所に向かうようになっていた。週に1度程度のたった数時間、私にとってはとても輝いている時間で、大人になってもその頃の事は忘れる事はないのだろうと思う。

 連絡先を思い切って聞いてみると、ルカは少し考えてから教えてくれた。

 本人には言うつもりはないけど、もっとこの人の事が知りたい気持ちがかって行動できた勇気は、悔しいけどそんなに何度も起こらないほどのものだった。それをおこしてしまったルカには、人を行動させる魅力がある。

  

 「うまくいくかな?」

 自信なさそうにしているルカを見て、私は意地の悪い笑みを浮かべる。

 「さぁ、それはルカ次第でしょ?」

 「…そうだね」

 「うまくいかなかった時には、私が慰めてあげる」

 冗談で聞こえるような口調で言うと、ルカは驚いた表情を一瞬浮かべてからふと優しい笑みを浮かべる。

 「ありがとう。その時には言葉に甘えさせてもらう」

 「どういたしまして」

  

 ルカはまったくモテないと言うけど、本当にそうなの?

 男性でも女性でもモテるけど、気づかないように心がけていて壁を上手につくって心の内側を見せていないだけなのか。そうだとしたら、私は内側にいる事ができているのなら、嬉しいと思った。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ