【5】
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ルカがレポートを書く姿を見ながら、由香は、少し胸が切なくなった。
行動すべてを私が独占できるわけでもない。なのに、毎日のように部室に顔を出していなかった彼女が、部室に来なくなった事が寂しくて、他に、夢中にさせている何かに対して嫉妬すら覚えている。その何かが、趣味等の出来事なのか、それとも、人物なのか、物質に対するものなのか、どれであったとしても嫉妬してしまう私は、自分で自分を嫌いになってしまいそうになる。
学科も違う、クラスも違う、学年も違う、そんなルカと会えるのは部活をのぞいてしまったら、一週間に一度あるこの授業でのみでしか会えない。
そんな単純な事に最近まで気づく事ができなかった。いや、気づいてはいたのに、現実を直視する事をさけていた。現実を直視する事をしてしまったら、もう時間があまり残されていないのだという焦りと、卒業してしまったら彼女とたまにでもいいから会えるのかという不安に押しつぶされそうになってしまう事を感じていた。
この感情が恋愛感情なのか?
自分で自問自答してみても、答えがなかなか出てくる気配を感じない。自分で自覚できないのに、ルカに伝えようがない。
「?」
じっと彼女を見ている気配を感じ、彼女は私を見つめる。視線だけでどうかした?と質問してくるのを感じた。
「ね、今ルカって好きな人いるの?」
「今は…まだ、居ない」
「そっか、居るのか」
「……」
答えにくそうに沈黙になる時は、ルカの場合は肯定の意味がある。
「もしかして、最近部室によらなくなったのは、そういう事なの?」
彼女は視線を私から逃れるように横にそらした。こういう反応をするという事は図星だ。これ以上質問したところで、もうこの話題に関して彼女が答えてくれる事はないだろうなと思い、わざと明るい口調を心がけた。
「ふーん、そういう事かぁ。その人とうまくいくといいね」
そこでこの話題を終わりにしたのだが、彼女は複雑そうな表情を浮かべていた。その事が気になりつつもあえて質問する事はできなかった。
好きなものは好きだと伝えないと後悔するのだとよく聞く言葉だが、私はきっとルカへの気持ちは伝えないままでいる事になりそうだ。もし、告白する事ができたとしたら、それは自分で自分の気持ちを認める事ができた時になるだろう。そんな日がくるのかどうかは私自身にも分からない。