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【3】


【3】


 人魚姫シンドロームという言葉を、新山ルカは初めて知った。

 肉食系なんとかと呼び方が違うだけで本質的には何も中身は変化ないのではないだろうかと思ってしまう。俺にとっての女性に対するイメージで、「お姫様」「受け身の恋」「守られる存在」等のキーワードが浮かび、積極的とは言えないものがあると思ってしまう。いい意味で、積極的になってもいいのでは?と感じてしまう事が多い。

 恋愛面では彼女は迷いながらも積極的で、バランスをとるのが上手い部分が大人だなと感じてしまう。俺のように一線をこえたら危ないと危機感がするほどに、相手に対してのめり込めすぎてしまう事もない。想い人に対して伝える言葉の選び、伝えるタイミングもベストな状態で伝える事ができそうだなと感じる。

 「そうかな?」

 今度は彼女が苦笑を浮かべている。

 「君は相手にちゃんと伝えられる。大丈夫」

 「…不思議、ルカにそう言われると…本当に大丈夫なように思える」

 俺はふっと笑みを浮かべる。

 「あの子の事をもっと信じてみなよ。ダメだったら、その時はその時だな」

 「ひどい」

 「ごめん、でも、言えないって事は相手を信じていないからだろ?」

 そう質問すると彼女は何も返してこなかった。

 返事の言葉が何もない事が、信じきれていない事の答えになっている。

 返事がNOである事が怖いのではない。男女の恋愛だろうと、返事がNOの可能性は何時だってある。相手に自分の気持ちを受け止めてもらえずに、気持ちの存在を認めてもらえない事が怖い。すべてを理解されよう事を望んでいるのではなくて、俺という存在が居る事を「居る」と認識して受け止めてもらいたい。

 存在していないように否定される事を恐れて、相手を信じきれない。そんな自分に自分でも嫌気がさす。嫌気がさしても、このあたりの折り合いを上手く自分の中で片付けられなければ、きっと、大人になりきる事は難しい。

 「…そうだね」

 「俺も、信じきれてないな」

 苦笑を浮かべた。

 あの頃の俺は、相手を信じきれずに本当の事を話していない事が、相手を傷つける事だと気づけるほどの大人でもなかった。思い返してみれば、当たり前の事なのにどうしてあの時に気づけなかったのか、自分でも愚かだと思う。

 「ルカは、心が強いよね。自分の弱い部分も弱いって認める事ができている。弱いことをなかった事にはしてない。その結果、迷って相談していても前向きだと思うし、そういう部分、好き」

 「誉めても何も出てこないよ?」

 「それでも言いたくなったの」

 「あの子にもそんな感じで、いつか自分の気持ちを言えたらいいね」

 「そうね、いつか言えるといいな…あ、ルカ今晩予定あいている?あいていたら飲み会に来ない?」

 「…行こうかな」

 「ありがとう♪」

 彼女から飲み会の時間と場所を聞いて、レポートの区切りをつけた後に授業があるので教室に移動する。


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