5.地の文
これがないと小説ではない、ただの台本です。
ですが、比喩も大事です。読んでいれば分かりますが、理解のしやすさがまるで違います。
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地の文とは? あまり聞いたことがないと思います。地の文とは、セリフではない文のことを指します。いわゆる説明やキャラの内心のことです。
地の文がないと、2chのSSまたは台本のようになってしまいます。個人的に、地の文のない小説は小説じゃないと思っています。
地の文がないと小説じゃない。
試しにその辺の小説をひっくり返してみて下さい。ラノベでも構いません。
適当に目に付いたページを読んでみて、どうでしょう。一ページまるまるセリフなんてことはないでしょう。地の文は、セリフ以上に大事なものなのです。
さて、どこまで地の文が重要なのかを理解していただけたかは分かりませんが、ここからはその書き方について書いていきます。
例を挙げます。
『芽喰孤虫』から。
「卑怯だろロッヅェさん!」
「勝てばいいんですよ勝てば!」
こうしてみると兄弟みたいだなぁ、と遠く思う。
『そろそろ助けてあげるか』とガルファントが一歩近づいた瞬間、一陣の風と共にロッヅェと黒土は引き剥がされていた。――右手でロッヅェの頭を、左手で黒土の頭、というように鷲掴みにしていた。
「ハルカゼ……」
「さん……」
さて、ここから地の文を抜いてみましょう。
こうなります。
「卑怯だろロッヅェさん!」
「勝てばいいんですよ勝てば!」
「ハルカゼ……」
「さん……」
極端な例を挙げましたが、地の文が一切ない場合、こんな短くなってしまいます。また、いきなり『陽風』というキャラが出てきて、しかも何をやったか、ということが全く分かりません。
どういうことだ。全くわからねぇってばよ。
さて、全文→会話文のみという順で見ると退化していますが、今度は逆に見てみて下さい。当たり前ですが進化していますね。
地の分というのは、基本的に『説明』です。描写だとか思惑だとか、最初は面倒な言い方をしなくていいです。
ですが、『説明』から『描写』と言えるようになるのが一番理想です。
(実際、地の文なんて、小説を読まない限り身につかないものだと思います。こうして言ってみたところでピンとくるようなものじゃないですし。
一応、読書量によって描写の仕方は変わってきますよ、とだけ言っておきます)
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説明や描写で、上手い小説家の方はちょくちょく上手い比喩を入れてきます。比喩とは、『〜のような』、『〜みたいな』というような、例えのことを比喩と言います。
上手い人は本当に上手い比喩(例え)を使ってきます。
これはほとんど、書き手の感性によって書き方が変わってきます。上手くしたいのなら読書しかないでしょうね。
伊坂幸太郎作:死神の精度
上記は比喩が上手く、ストーリー的にも楽しめると思います。僕のオススメです。
次に、人物の感情です。これも立派な『描写』です。
人物の感情は、その場面によって様々です。怖かったり、楽しかったり、悲しかったり。台詞と地の文の両方で表現する人もいます。そこは人それぞれ、自由です。
多分、感情は比喩よりは楽かもしれません。
自分が感じた通りに筋を作って、その筋を人物に通せばいいのですから。
要は、自分の感じたことと想像力の問題です。『この人物ならこうなるだろうな』ということが試されます。
ですが、やはり半分以上は経験がものを言いますね。
最後に、人物の動きです。
これは戦闘描写をしてみると分かりますが、かなり細かく書く必要があります。ですが、身体の部位の名をわざわざ出す必要はありません。
腕が〜。足が〜。を基盤にすればいいと思います。
日常で自分が動いている時を、脳内で文章にして見てください。
『右足を前に出す。対応する左腕を振り、身体を中心の軸はそのままに捻る』
最初はこんなんでいいです。段々と、上手くなっていきますから。
読書と経験、日常での描写練習が重要です。
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