正体バラしました
「聞け!」
「全ての人間よ」
突然、
公園のジャングルジムのてっぺんで、
京都の四万十川みたいな澄んだ瞳をした少女が、
某ステルスアクションゲームの携帯ゲーム機版に登場する、
そのゲームのプレイヤーキャラクターが使用する、
近接戦闘術の強化版を使う手強い敵キャラみたいな、
声で叫んだ為に、
彼女以外の周囲の人間全員が口をぽかんと開けて驚愕した。
そして二言目。
「こんにちまでに、いつの時代でも、どこの場所でも、誰でも一度は抱くであろう某、暗闇よりも、更にさらに、ドス黒い害虫並みに、不滅な夢がある」
「それはずばり世界征服だ」
「エヘン」
「しかしながら、これまでにその夢を成就した者は指で数えられる程に少ないのだ」
「古代ローマ王国」
「ちゅご・・・」
血圧が、
老若男女に愛され続けるジェットコースター並みの速さで急上昇していたから、
思わず噛んでしまった。
そして訂正。
「中国の始皇帝」
「そしてドイツ第三帝国」
「今現在から、私はここにグレート・ニュー・ワンを結社する事にした」
「ちなみに、グレート・ニュー・ワンとは、新たなる支配者という意味だ」
「だが、完全無欠完璧超人のアタイでも一人で世界征服は出来ないんだ」
「だからこの俺様と一緒に世界征服を手伝いたい、という心がネットの世界ぐらい広大な者はおらぬか」
ここで彼女の、
黒人に対する人種差別を徹廃するよう力説した、
アメリカ合州国のプロテスタントパブテスマ派の、
某黒人牧師みたいな、
演説が終わる。
直後、
彼女は公園にいた2人の男性と3人の女性、
そして一匹のチワワからスタンディング・オベーションを受けた。
それはいつまでも続いた。
長すぎて、真昼間に演説自体が終わったのに、
スタンディング・オベーションはなんと深夜2時59分まで続いた。
そして皆が帰宅しようとした時、
「ああ」
「後一つ言い忘れていた」
「僕は男の娘だ」
演説者が正体をバラした。