帰国、友人、悪霊の影
今回も詠みに来ていただき有り難う御座います。
なんと、今日の妖かしでノート一冊分と
なりました。
さて、今日の妖かしは
ちょっとだけ、シンミリ?しているかと…
恭祐とタケシの会話で友達の絆を感じてくれればなぁ。
と、思います。でゎ、どうぞ(*^^*)
『ピヨ〜♪』
”チョコレート・ディスコ…チョコレート・ディスコ…”
『ふぁ〜…なんですかぁ〜?朝っぱらからぁ〜?』
『ピアノの次はperfume何だよ…』
勇は朝からperfumeのアルバムをかけては
恭祐の机の上で踊っていた。
その様子を恭祐は枕に顔を突っ伏しながらモチスケへ説明をした。
『この前のババ抜きで変になってしまったんでしょうかぁ〜?』
『あのババの取り合い戦か…さぁな…目覚まし代わりでいいんだけど…』
『ピヨ〜♪ピピ〜ヨ〜♪』
勇は華麗に踊り続ける。
恭祐は身体を起こすと散らばったプリントやノートを目にする。
『勇、もう踊るな…』
『何でピヨ?!』
『机の上にあった物が全部落ちてる』
『こりゃ〜酷いですなぁ〜ぐっちゃぐちゃですよぉ〜?』
恭祐とモチスケの言葉に促され机の下に落ちた物をみる。シャーペンまで落ちていた。それをモチスケが拾い、恭祐へ渡した。
『有り難う』
『…ごめんなさいピヨ…』
『無くした訳じゃないし…いいよ』
『…ピヨ…』
踊りながら落としてしまったので
勇は少し悄げて(しょげて)しまった。
その頃。一人の少女が日本空港へ降り立っていた。
『ふぅ。やっと帰って着たわ』
少女は母親と父親へメールを送る。
兄へは内緒で此から家へ向かう。彼女なりのサプライズだ。
兄の記憶は自分が小学六年生までの記憶しかない。そう。彼女の中学生活はアメリカで過ごした…今の彼女は少しときめいていた。
長い髪を左右に揺らし空港を後にした。
『休みの日って暇だよなぁ…』
成実はベッドから起き上がるとスマホを手に取った。丁度メールが入った。
松丘貴子からだった。
『恋愛相談…?何で俺に?つーか相手誰?』
成実は首を傾げながら返事を返した。その頃恭祐はタケシと近くの公園にいた。噴水の前のベンチに座っている。
『俺、お祓い行くよ』
『そっか…良かった。河辺と話したんだな?』
『うん。なぁ恭祐?何でタイミング良くその話をしたんだ?』
『何だろう…何か胸騒ぎがしたんだ。上手く謂えないんだけど…』
『胸騒ぎねぇ〜』
『何だよ?』
『お前さ退院してから何だか可笑しくないか?たまにボーッとしてるって謂うか…”別の誰”かの話を、訊いてるって感じ?』
『な…何が謂いたいんだよ…?』
(まさかタケシにも気づかれてた…?)
恭祐は膝の上に置いた繋がれたままの
犬の散歩綱に力を入れた。
沈黙が続きタケシが口を開いた。
『視えるんだろ?』
『………』
恭祐は何も謂わずタケシをじっと見る。
冷や汗をかくのが判る。タケシから視線をずらすと独り言の様に話し出した。
『気づかれたなら仕方ないか…。ごめん。隠してて…変人に見られると思うと…謂えなくて…タケシや成実や春夫達に白い目で見られたくなくて…ごめん』
『…そっか』
『此から話す事も黙ってて欲しいんだ。時が来たらあいつらにも俺から話す。…雛の事何だけど勇は元々亡くなった人間の幽霊だったんだ。今の俺には守護霊が憑いて居なくて…代わりに俺を守ってくれているんだ』
『…守って守護何とかみたいだな…それで、もし…雛も居なくて守護霊が居なかったら?』
『不幸な事故や病気で死ぬらしい』
『…因みに俺は?』
『タケシの場合は守護霊が弱ってるんだ。そのせいで黒い影がタケシの左肩に居る』
『そいつのせいで…危ない目に?』
『ああ。そいつ、今俺に対して反抗してるし恐れてる』
『何で?』
『”今の俺は”霊感が強いらしくてさ…封印する力も強いとか…。多分、やりかたが判れば俺にもお祓いが出来るかもって…西田さんが…』
『西田さん?』
『…河辺、着たみたいだぞ?』
『あ…本当だ。悪かったな…犬と羊の散歩中』
『いいさ羊は話してる間その辺走ってたし』
『恭祐』
『ん?』
『白い目で見たり、変人だなんで事絶対ないから』
『…有り難う…』
タケシは河辺の所まで走って行った。
そして彼は友として、また恭祐に近づけたと感じていた。
今まで知らなかった恭祐を知れ、嬉しくもあった。振り返ると恭祐はベンチから腰を上げ公園を出るところだった。
公園を出た恭祐達は自宅へ向かった。
『はぁ…俺、判りやすいのかなぁ…』
『あら!恭祐君。久し振りね?』
『高橋さん…お久し振りです今日和』
『本当…冴さんが謂うとおり。また背が伸びたわね?』
高橋結愛は自分の頭の上で手をひらひらとさせ自分の身長と比べた。
すると突然何かを思い出し心優の手をひきながらその場を後にした。
自宅へ戻ると玄関の前で異変を感じた。
派手な霊が居たからだ。日本人ではないのは視れば判る。ノブに手をかけると鍵が開いている。不信に思いながら中へ入ると
二階からバタバタと降りて来る足音がした。足音の持ち主は恭祐目掛け抱きついてきた。
『my brother!』
『うわぁぁっ!』
彼は抱きつかれ弾みで玄関ホールで
倒された。痛みのあまり目を閉じた。
『っー!』
『ご…ごめんなさいっ!』
『いや…いいよ…え?』
目を開けると色白でスラッとした身体。ロングヘアーの少女が恭祐の上で跨がる様に、座っていた。
『…茜…?』
『うん!ただいま。お兄ちゃん!…へへ驚いた?』
『驚いたし頭が痛い…』
『だってあんなリアクションするなんて思わなかったんだもん!』
『家に帰れば鍵は開いてるし中に入れば抱きついてくるし』
『う…ごめん。あ!この仔達ね?!母さんが謂ってた動物ちゃんて?宜しくねぇー、私茜!』
『…いつまで俺の上に乗ってるんだよ?そんなに居心地良いか?』
『あー…。あはは…つい…』
茜が退くと恭祐は立ち上がった。
『…お帰り』
『ただいま』
『…何?』
『お兄ちゃん…格好良くなった』
『何を謂うと思えば…』
その時両親達も帰って着た。
両手に、沢山の荷物を持っていた。
恭祐は母と父から荷物を受け取る。
『有り難う。結構重いぞ?』
『平気』
『あ、茜。お帰りさない。アメリカどうだった?』
『大きくなったな?』
『何だ…二人共帰国の事知ってたの?』
四人は話をしながらリビングへ移動する。
買い物で買った荷物をダイニングテーブルの上へひとまず置く。
『茜が恭祐を驚かすって謂うものでね。悪いな』
『空き巣かと思ったよ』
『ははは!空き巣か!こりゃいい!!そうだなぁ…今日の昼は外食にしようか?』
『本当?!やったぁー!』
『俺はいいや』
『えー?何でよー?』
『こいつらを置いていく訳にはいかないだろ?』
『もうっ!何か意地悪!』
恭祐は笑いながら自分の部屋へ行く。
ドアを開けると勇を肩から降ろした。
『本当に行かなくていいピヨ?』
『うんうん』
『勇はポケットの中に入るけど、モチスケは入らないし…一匹には出来ない』
『どうしてですかぁ?』
『仮にだ。お前が外へ出たりして近所を歩いていたら保健所へ送られるかも知れないんだぞ?それにお前には家族がある』
『ピヨ』
『無事に向こうの世界へ返さなきゃいけないんだ』
『…………』
『昼食は俺が作るよ』
そして昼は勇からのリクエストで
カルボラーナを作る事にした。
卵黄、粉チーズ、液体クリーム、粗挽き胡椒で作る。
茜から一通のメールが届く。
”温泉も行ってくるから帰りも食べてくる”
と、いう内容だった。
パスタが出来上がると勇は
顔を汚しながら食べた。
隣で食べるモチスケにソースが跳ねては
拭くを繰り返す。恭祐は何となく外を見ていると頭痛がした。重くのし掛かるような痛みと気持ち悪さ…。
『…お兄ちゃん…?!』
勇は食べるのを途中止め
恭祐の肩に飛び乗ると眩しい位の光を放った。彼の頭痛と吐き気は無くなった。
『霊感が強いと悪い霊がたまに寄ってくるピヨ。力が強いだけに危ない事もあるピヨ』
『そうなんだ…有り難う』
『えっへんピヨ!』
『うわ!モチスケ!』
『ピヨ?』
モチスケを見るとカルボラーナのソースとパスタが彼の顔に思いっきりかかっていた。
『ピヨーーーーーっ!』
そして夜。
『今日は帰りが遅くなるな。温泉も行くってメールがあったし』
『先に寝るんですかぁ?』
『いつも通りピヨ』
『いつも通りですねぇ〜』
『ピヨ!ピヨピヨピヨ♪』
『何するんだ?』
『さぁ〜?』
すると勇はオーディオの電源を入れ、再生を押した。
”チョコレート・ディスコ…チョコレート・ディスコ…”
『ピヨ♪』
『またか…』
『バキューム〜ぅ』
『タブレット、使ってゲームでもやるか?』
『いいんですかぁ〜?!』
『いいよ』
ー数分後ー
モチスケが少々暗かった。
それに気づいた恭祐が彼に訊く。
『反応しないんですぅ〜』
『え?』
その時、恭祐はモチスケの”手”を見た。
彼の手…つまり蹄。
『悪い…モチスケ…』
『いいえ、いいんです…』
『本当…ごめん…』
『ピヨっ!』
『あ、そろそろだな』
『始まりますねぇ?』
『勇、そろそろゴンがやるぞ?』
『ピヨっ!判ったピヨっ!』
『バキュームは終わりですよぉ〜?消して下さぁ〜い』
『バキューム〜じゃないピヨっ!』
『バキュームみたいな、グループ名じゃないですかぁ〜?』
『何でもいいから消せ』
『ピヨっ!』
勇はオーディオを消すと
ソファーへ座る。恭祐はその間風呂場へ
向かった。浴槽を洗い、自動を押す。
出てくる湯を見ながら昼に襲ったあの頭痛と吐き気を
思い出す。何故、気がつかなかったのか…。もし、あの時あの場に勇とモチスケが居なかったらどうなっていたのか…。
最後まで詠んで頂き
有り難う御座います!
皆様のコメントと評価
嬉しいかぎりです(o^^o)