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 妖かし   作者: 三日月
34/39

光の中

奈留はいうことを聞かない両手を

止めることが出来ず涙を流しながらただ、泣き叫ぶ事しか出来なかった。




『いや…いや…ねぇ恭祐君!返事をして!いやぁぁぁぁぁ!』




その時、暖かい光に包まれる中奈留の手に触れる大きな手が触れた。





『奈留…』

『…ぅ…恭祐…君?』


『そうだよ。大丈夫。終わったから』

『あ…』





光の中奈留は自分の手に力が入っていない事に気がついた。恭祐の首から両手を離すと恐怖から解放されたのか一気に泣き出した。


そんな彼女を恭祐は抱き締めた。

胸の中でぎゃんぎゃん泣く彼女を優しく撫でることしか出来なかった。





『ごめん。怖い思いをさせてしまって…ごめん』

『うんん…良かった…あたしこのまま自分の手で…』


『守るって謂ったのに守れなかった…』


『うんん…そんな事ない。…貴方が居なかったら…他の人を殺っていたかも知れない…恵ちゃん、もしくはタケシ君を…』






気がつくと二人は抱き合ったまま眠っていた…。勇も疲れたのか畳の上で寝てしまっている。朝になっているのも気づかず…。


なかなか起きない二人を恵が揺すりながら起こす。





『起きて、二人共。朝食の時間になっちゃうわよ!』



『『ん…』』



『もう!私達が寝てる時に何してたのよ?部屋は散らかってたし…喧嘩でも無さそうだけど?』


『あ…』

『はっ!こ、こここれはねあの…そんな目しないでよ!』


『何かしらぁ?私まぁだ何も謂ってませんよ?』


『にやけてるじゃない!』

『はいはい。ところでどうして目が腫れてるの?泣いてたの?』


『あ…う…うん…でもね恭祐君と何もしてないし無かったから…』






奈留は自分の両手を見た。

握る、ひらくを繰り返している。

初めて人の首に手をやった…謂うことを利かなくてもやってしまった事には変わりはない。


そんな彼女に恵が着替えようと謂い出したので脱衣場へ向かった。



『んーっ!』

(何だから怠いなぁ…)

『恭祐、何か遭ったのか?』


『あの女だよ…夜遅くに目が覚めたら足元に立っていてね…そいつ、奈留を使って俺を殺そうとしていたんだ。あの時こういっていたんだよ“彼を殺して下さい”って…』


『だから奈留ちゃん…』

『巻き込みたくなかったのに…つくづく嫌になるよ。あんな目に遇わせて…何が“守る”だ…人を巻き込んでまで…』


『恭祐。それは違うんじゃないか?それが運命なんだろ?なるときはなる。仕方のない事だろう?なんで自分を責める?お前の力は幽霊の力になっていたんじゃないのか?


成仏したくても出来なかった奴等を昇天させたり、人に憑いている霊を取り払ったり。違うのか?此れから奈留ちゃんを助けていけば良いじゃんか?彼女だってお前が居ての彼女だろう?


結婚を前提に付き合ってるなら尚更の事だろう?恭祐?』



『タケシ…ってなんで!』




『『ん?』』




『聞こえたんだよ。その言葉だけ。身体が動かなくなっててびっくりしたけどな?格好良かったぜ?』


『河辺に話したのか?!』

『いんや』


『なら、いいけど…』

『お前の話訊いて辻褄が合ったよ。大丈夫、謂わないからさ』


『絶対だぞ』

『俺を信用しろよ』


『タケシ…』


『あん?』

『有り難う。気が楽になったよ』


『ふふん』






着替えが終わった二人は脱衣場から出てきた。恭祐もタケシに着替えるよう謂うと先に着替えていたことに気付いた。





『じゃ、俺も着替えてくるよ』


『はいはーい♪』





『ね、さっきの恭祐君の大声どうしたの?』

『大したことありましぇーん』


『ふーん。あ、時間まで一時間無いわね?』


『本当だ…売店で時間潰す?それか…テレビでも観ます?』






タケシの提案に奈留がテレビを選んだ。

恵もその決定に不満が無く適当にチャンネルをまわした。





『お兄ちゃん、怠いピヨ?』

『少しな…勇は大丈夫か?』

『大丈夫ピヨ。僕はお札を相手に投げただけから…ピヨ』


『そうなのか?じゃぁ、あの光は?』


『あれはお兄ちゃんピヨ。レベルが上がったピヨ』



『俺が…』


『だから怠いピヨ』

『そうか…』






恭祐は夢中だった為気付かないでいた。

奈留を助ける。その一心だった…。

結果、彼女を泣かせてしまったがタケシの言葉で救われた。





『着替えも済んだし出るか』

『ピヨ!』








ドアを開けると三人はテレビを観ていた。どうやらニュースらしい。

アナウンサーが速報を詳しく伝えている。







〔今日未明、和服を身に纏った女性の変死体が発見されました。遺体は白骨化していて身元を示す物も何もなかった。との事です。遺体を発見した地元の方で新聞配達員をしている中谷さん。


彼の話では配達中急に突風が吹き、バイクを停止させたところ、落ちていた山になっていた葉が凄まじい勢いで舞い上がったと謂っていました。落ち葉があった場所を見ると和服を身に纏った女性の変死体があったとの事です〕






テレビを観ていた奈留は恭祐が出て来た事に気がづき彼を見た。

その表情は凍り付いていた。


恭祐も聞こえていた範囲だが彼女が驚いている応えに察しがついた。

テレビの前にくると着ていた和服がイラストだが、映し出された。



昨日何度も見たあの着物だった。

タケシも驚いている。






『恭祐君…』

『うん。この宿の外だ…それに』





ーあの女だ…ー






『もしかしたら此処の従業員さん達、何か訊かれてるかもな?』








良く耳を済ますとパトカーのサイレンも聞こえてくる。

窓の外を見ると良く見えないが人込みと車の渋滞があった。





『車…出れるかな?』

『裏があるだろう?無いか?』





恭祐はタケシへ謂う。

確か出入り口は二つあったはずだ。






『ごめんね…まさかこんな事になるなんて…私が選んだばかりに…』


『河辺が気にする事は無いだろう?時の運だよ』





ちらっと恵を見るとあの時みたいに目が合った。恵は恭祐をしっかりと捉える。





『優しいね。それに、相変わらず綺麗な目。奈留ちゃんの事大切にしてよ?』


『当たり前だろ』






恭祐はチェックアウト時、此処まで案内してくれた嶋田という男に一日の出来事と徐霊した事を伝えようと考えていた。



食事が終わると丁度嶋田の姿があったので声を掛けることにした。

少しなら大丈夫との事だったので手短に話した。







『謂って下されば違う階の部屋を用意しましたのに…何故…』


『何故ってこのままだと此処の経営に響くじゃないですか?それに、廊下や各部屋に居た奴等はお札を貼った同時消えましたし。妖怪って知った時は驚きましたけど』


『私も知りませんでした。有り難う御座います。あ…支配人…』


『お客様、お早うございます』

『お早うございます』


『支配人の田村さんです。支配人、例の階にお泊まりになられたお客様の宮澤様です』


『…なんと…申し訳ございませんでした

。本来あの階を封鎖したい所でしたが経営が厳しく…激安料金でと…あの階に泊まられるお客様は部屋の変更をする方がほとんでして…何か御座いましたでしょうか?』



『いえ、詳しい話は嶋田さんにしておいたので、お時間がある時に訊いて下さい。それと、あの階はもう大丈夫です』





『恭祐ー!何してるんだよー?』




『すみません。連れが呼んでるので失礼します』




『『有り難う御座います』』






二人は深々と頭を下げ感謝の言葉を述べた。



それからのこの日からの宿は怪奇現象もピタリと止み客足も延びることとなる。

白骨化した遺体は何十年も前だと謂うことが判りそのニュースも落ち着くこととなる。





旅行先での写真には沢山の霊が写る。

特にホテルや旅館では…シャッターをきったらもしかしたら荷物の影や布団の間に写っているかも知れない…。











写真…もう旅館先では撮りません。

特にホテルですね。

あの睨む青い目…めちゃくちゃ怖かったですから…。

m(__)m

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