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 妖かし   作者: 三日月
33/39

彼女達が風呂からあがると

恭祐達も入れ替わりで入る。

勇はお決まりの桶の中でプカプカと

浮きながら身体を洗う。


タケシは一人で小さい露天風呂で疲れた身体を癒している。




『勇、お前大丈夫か?』

『大丈夫ピヨ。それより、その痣が心配ピヨ……あーピヨ!』


『何だよ大声出して?』


『汗を流したらすぐ出るピヨ!もしかしたらその印…狙ってるんじゃなくて部屋の中へ入れるように付けたかも知れないピヨ!』


『…だとしたら…奈留が危ない…』


『出るピヨ!』





恭祐はタケシに伝えると二人はすぐ

風呂を出た。

浴衣に着替えると彼女達が居る部屋へ急ぐ。






『早かったわね…どうしたの?』





恵がきょとんとしながら

二人に訊いた。





『え?あーいや…早く呑みたくて…』


『全く二人共…まだ未成年でしょう!』



『『すみません…』』





恵に叱られてしまった。

なので酒はそのまま持ち帰り小嶋へ

お土産物がてら渡す事になった。







『恭祐君、顔色悪いけど大丈夫?』


『ああ。心配無いよ』





奈留は少々心配気味だ。

小さい頃からのつき合いで少しだが

御互い距離を置いた時期もあった。


けれど、お互いの事は判っている。

相手の癖を…。


奈留は判っていた。

彼が何か隠していることを。







『お願いだから何でも話して?隠し事は無しよ』


『奈留には敵わないなぁ…』

『小さい頃から一緒だもん…判るよ』


『…奈留が、怖がるような話なんだ。それでも良いのか?』

『…和服の(ひと)?』


『ああ。あいつはこの部屋へ入れないって謂っただろう?けれど…さっき自販機の前で…ここに何かされたみたいでね


入れない事を知って俺に印をつけたみたいなんだ。見えるかい?ここなんだけど』


『…うんん…何も見えない』

『そうか…ごめん。油断してたよ…』


『平気よ』

『え?』


『だって恭祐君が守ってくれるんでしょう?なら平気よ』

『ああ。守ってやるさ』





『二人で何話してるの?仲間に入れてよ?』

『恵ちゃん駄目だよ邪魔しちゃ?お二人さん将来を誓い合ってるんだから』


『わぁー宮澤君…男らしくなったのね…』




『失礼だぞ河辺…』

『クス…』


『笑うことないだろう…奈留…』

『ごめん…ふふ』






この後四人はトランプをやったり

UNOをやったりゲームを楽しんだ。

寝る前はあの日以来やっていなかった

枕投げをやった。


タケシは何故か恭祐が投げた枕に自ら

当たる事となった?

恵は其を見て苦しくなる程腹を抱えて笑ったり、奈留は両手で口を隠し驚いていた。



恭祐は何故そんな行動を取るタケシを

呆れていた。







『本当馬鹿』

『鼻いてぇ…』


『さぁ、寝ましょう?』

『そうね』






四人は夜光燈にすると布団へ潜った。

タケシ、恭祐、奈留、恵の順となった。

恵は疲れていたのか先に寝息を立てている。タケシももう少しで夢の中だろう。



恭祐はぼんやり夜光燈を見つめながら

右隣で起きている勇を指で撫でる。

奈留は何度か寝返りを打っていたが

気がつくと眠っていた。






彼もそのうち眠くなり瞼を閉じた。

静まり返った部屋は少し不気味だ…。

ドアには恭祐が貼った札が貼られている。


丑三つ時になろうとした時間に自然と目が覚める恭祐。横になったまま何気無く足元の方へ目をやると、誰かが立っていた…。






(あいつだ…俺と奈留の足元に立っている…)





ゆっくり目を閉じ、再度開ける。

少し近付いてきていた。

このままじゃイケないと判断した彼は自ら身体を起こした。






『やっぱり…入れるために付けたのか』


「起きた…」


『え…?』





隣で寝ていた奈留へ目を配らせると

彼女は虚ろな目で身体を起こしていた。

そして、和服の女は呪文のように言葉を発する。







「…て下さい…」



『…一体何を謂っているんだ!おい!タケシ!河辺!』






いくら二人を起こそうとしてもピクリとも動かない。





「…れ……をして…下さい…」





奈留の両手はゆっくりと上がり

恭祐の首をへ掛ける。






『奈留ッ!目を覚ませッ!』






ぱしんっ!





『はっ……あたし…ひっ!…御免なさいあたし一体…』






その時だ。

彼女の後ろから…。






「彼を殺して下さい!」




『きゃぁぁぁぁっ!』






「彼を殺して下さい彼を殺して下さい彼を殺して下さい彼を殺して下さい…」





『いやぁっ!やめてぇっ!』

『奈留ッ!』






恭祐はすかさず彼女を抱き寄せた。

勇は何とか恭祐の肩に乗り二人の回りにアーチ形の光のような物を作り出した。







「彼を殺して下さい…」




『何故俺達を狙う?!』




「殺せ…殺せ…ッ!」



『嫌よ…あたしは彼を殺さないし殺させないっ!貴女に何が遇ったか知らないけれど…あたしは…恭祐君の事が大好きなの!』



「殺せ…殺せ……そいつを殺せ……」





『嫌。彼の居ない人生なんて絶対に嫌よ!』


『奈留…あまり刺激するな。後は俺に任せてくれないか?』


『恭祐君…』


『約束だろう?守るって』


『うん…』



『ふぅ…同じ質問で済まない何故俺達を狙う?それともこの宿に泊まる人達が気に入らないのか?』



「私は…あの男と同じように…この宿が建つ前の宿で殺された…私は本気で好きだった…なのに彼は私の他に女が居て……それどころか婚約までしていた………それを打ち明けられた……あんなに貢いでいたのに…結婚まで考えていたのに…男は信用ならぬ…」




『俺は絶対にそんな事しない!こいつとの結婚も視野に入れて…それを前提に付き合ってる!お前なんかに台無しにされてたまるかッ!』


『え…』





奈留は思いもよらぬ恭祐の告白に体が熱くなった。まさか、彼がそう考えていたなんて…。







「壊してやるお前の未来を…」



『させないッ!』






恭祐は枕元に準備していたお札を手に取ると口でくわえ胸元で手を合わせ目を閉じ念じる…そっと目を開くと赤い目になっていた。



奈留はその様子にただ驚くだけだった。

何処から現れたのか…彼女は大きな銀色の狐に気づく。勿論、勇だ。二人を尻尾でくるみ顔は恭祐の横にある。







「彼を殺して下さい!彼を殺して下さい!彼を殺して下さい!」


『うっ!頭が…ッ!』





奈留は酷い頭痛に両手を頭に添える。

ちらりと見る恭祐はお札を右手に持ち直す。






『汝、人に害をもたらす者…

汝居るべき場所へ行けッ!』





彼がお札をハラリさせると勇は目を光らせそれを女へ飛ばした。





「殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せッ!」



『いやぁ!手が…やめてッ!

いやぁぁぁぁぁッ!』





激しい光りが彼等を包みだす。

その瞬間奈留は恭祐がこちらを見て優しい表情を見せていた。しかし彼女の両手は止まることなく彼の首を締め付けた。


彼の顔は眩しい光りで見えなくなる…

奈留の目から一筋の涙が溢れ落ちた…。







『いや…いや…恭祐君ッ!』




読んで頂有り難う御座います。

投稿出来ていなかった分、頑張ります。

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