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 妖かし   作者: 三日月
31/39

ツイテクル

タケシは恭祐の手を握ったまま

グングン歩く。手を離せば逃げられることが判っているからだ。


脱衣場へ着くとやっと手を離した。





『全く。気持ち悪い』

『だってお前絶対逃げるだろう?』

『当たり前だろう。俺はシャワー浴びたんだから』


『馬鹿だなぁ折角なんだから温泉に入らないと意味ないだろう?』


『何処の親父だよ』


『露天風呂!』


『訊いてない…』


『僕は霊体に戻るピヨ』


『さぁ!入るぞー!』

『走り回るなよ?』


『いや、そこまで子供じゃないし大人だし!』


『子供と大人の中間だろ…全く…』





恭祐もブツブツ文句を謂いながら露天風呂を目指した。






『あーあ…気持ちーなぁっ!』


『頼むから静かに入れ』

『なんで?』


『疲れてるんだよさっきので』


『確かに…けど戻ってくるまでに終わって良かったな?』


『ああ』


『大浴場は明日朝な』

『一人で入りに来いよ?』


『なんで!』



(なんか疲れる)






目的を果たしたタケシは浴衣に身を包むてお冷やを一気に飲み干した。

恭祐も同じように飲み干しすと背凭れの長い椅子に腰を下ろした。






『食事は19時だったよな?』

『もう空いたのか?タケシ?』


『微妙に…』

『なんだよそれ…さ、部屋へ戻ろう…』

『卓球!』


『あ、忘れてた。それじゃ先に行っててくれ。二人を連れてくるから』


『おうっ!任せとけ!』


(ついていけないあのテンション…)







恭祐は二人が居る部屋まで行くと奈留と恵がタロット占いをやっていた。





『何してるの?占い…?』

『そう。恵ちゃんが今占ってくれてるの』


『後で宮澤君も占ってあげるね』


『いや、俺はいいよ。あ、二人も卓球やるだろう?タケシが待ってるんだ』


『『行く!』』





ハモるほど仲の良い二人もヤル気満々だ。やる気のないのは恭祐だけらしい。






『貴重品は金庫の中だよな?』

『勿論よ。宮澤君は?』

『小銭だけ持つよ。卓球だろ?』

『あ、そか…』





それぞれ小銭だけを持つとタケシが待つ所まで目指した。

場所まで着くと恵とタケシで始まった。




『奈留』

『うん?』

『平気か?』

『うん』

『今は居ないみたいだな…』

『うん。ねぇ、恭祐君は怖くないの?』

『全然』

『あたしが怖がりなのかなぁ』


『女子なんだし、それが普通なんじゃないかな?って…怖くない娘も居るけれど』



『そうね。…あ、夕食まで一時間か』

『もう?』

『そうよ』

『時間てあっと謂う間だよな…』





「…て下さい」





着た。

和服の女が彼女の後ろに立っている。

よく訊き取れないが何か謂っている。

恭祐は然り気無く奈留の左手を握る…。

狙いは奈留らしい…一体何をしようとしている?




『なぁ』

『うん?』

『こうしてみてるだけってのも何だし俺達も違う台でやらないか?』


『いいの?』


『こうなりゃ自棄(やけ)だ』

『やる!』





やっと笑顔を見せてくれた。

恭祐はホッとしラケットとピンポン玉を

手にし奈留へ渡した。




『どうぞ、やりたいだろ?』

『有り難う』





タケシと恵はやり始めた二人を少し見学することにした。自分達は数回落としてしまったが恭祐と奈留は長く続いている

互いに譲らない様に見える。


どちらが先に一点を取るまで見ているのも長そうなのでタケシ達は再開した。






『二人共凄いね』

『ああ。って恭祐やる気なかったんじゃ…』






一体なんなんだと謂わんばかりのタケシを余所に、恭祐は奈留の気を反らすのに夢中だ。彼女もまたそれに応えようとラケットを振る。




和服の女は微かだが顔を少し上げているようだ。しかしここで女と眼を合わせてはイケない。視えている事が判ってしまう。そうなったらしつこく付きまとうか“何か”だろう…。



そうこうしていると、夕食の時間が近付いてきた。卓球を終わらせ、指定された場所まで向かう。


和服の女は暗くなった部屋で不気味に一人立っていた…。






『ふぅー腹減ったなぁ~夕飯は何だろうな!』


『はぁはぁ…食べることばかりだな…』


『恭祐君汗凄いね…』

『奈留もな…』


『なぁーんか、二人嫉妬しちゃう位いい感じねぇー?何か遭ったの?』


『え?特に何も無いよ?』


『へぇー』






恵は歩きながらではあるが

奈留の返事にいやらしく微笑んだ。






『もう!何も無いから!』


『判ったわよ。でもキスくらいしたんでしょう?中庭デート』


『河辺、残念だけど二人で散歩しただけだよ?』


『勿体無いなぁ?きょんきょん』

『本当勿体無いわ』


『二人でやってろ』






テーブルに着くと膳が既に運ばれてきてあった。まだ温かい。

きっと運ばれたばかりだ。


野菜の天ぷらとえび、キスもあった。

真ん中に大きな皿に乗せられ綺麗に彩られている。

茶碗蒸しに刺身、お吸い物。


奈留はこんなに食べられるのだろうかと少しだが不安になってしまう。






『すげー!旨そうだなぁ~』




タケシがそういうと襖の方から声がした。





『失礼致します。この度、我が宿をご利用頂有り難う御座います。お飲み物の御注文はおありでしょうか?』



『あたし烏龍茶』

『私も』

『俺も烏龍茶で』

『んじゃぁ俺は…』


『タケシも烏龍茶でいいだろう?』

『だな』



『では、烏龍茶4つで宜しいでしょうか?』



『はい。お願いします』





恭祐が応えると会釈をし、部屋から出ていった。







『さ、食べよう』





『『頂きまーす』』



『ねぇ、宮澤君』

『ん?』


『初めてっていつ?』


『ぶーッ!』

『ぅぐッ!』


『汚ーいッ!』


『何だよ急に…食事中なんだぞ?』


『きょんきょん顔真っ赤』


『タケシッ!』


『で?いつなの?』


『教えない』

『ね…ねぇ、この天ぷら美味しいよ?』


『奈留ちゃん話そらさない』


『もう…はっ…』






「…下さい…」






(どうして恭祐君が謂うとおり…)





奈留は恭祐を見ると彼も同じように

奈留の方を見ていた。

食事の時くらい女の存在を忘れたかったがそうも出来ない…。


しかし、何を謂っているのだろう?

今回もまた訊き取れない。






『ちょち二人共どうしたの?大丈夫?』





心配になったのか恵が二人へ話し掛ける。タケシはこの時初めて和服姿の女に気づいた。目を合わせるな。


恭祐の無言の言葉がタケシへ伝える。

勇は彼の膝の上で無言を貫く。






『何よータケシ君まで…変なの』


『河辺、肩に毛虫がついてるぞ』

『えっ?!…って…ついてるわけ無いでしょう!宮澤君の意地悪ッ!』


『クス…ふふふ…あははは…ッ!』


『どうして笑うのよぉー』


『恵可愛い!一枚撮らないとな!』






恭祐の気転でなんとか楽しい場になったが、此れからチェックアウトまでどうなるか…。



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