夏の空〜別れ〜 終
六月二十八日。
仕事も順調に進み、残り十件となった。
恭祐達は昼食をとる為
ファミリーレストランへ入る。
『雨ばかりだと思っていたけど、そうでもなかったな?』
『はい。今年の梅雨は雨が少ないんですね』
『少なすぎだろう。外仕事はまぁ土砂降りよりマシだけど、これじゃ野菜が育たないで駄目になるよなぁ〜』
『値上がりしますよね…』
『うむ』
そして昼食を済ませると仕事へ戻った。
三日後、全て終わり会社へと向かう。
車から降りると川野部長が入り口で待っていてくれた。
『お疲れ様。疲れただろう?今日はもう帰って三日ゆっくり休んでくれ』
『はい。分かりました』
『それじゃ、これ、お願いします』
『わかった』
二人は部長と別れると、それぞれの愛車へ乗り込む。
『小嶋さん。お疲れ様でした』
『お疲れ様。次は三日後に会おう』
『はい』
『彼女にちゃんと連絡してやれよ?』
『あ…』
『二人とも、いい感じだったぜ?』
『小嶋さん…その事はもういいじゃないですか』
『照れることはないだろう?』
『照れてなんか…』
『花火大会、約束したんだろう?ちゃんと守れよ?』
『大丈夫ですって』
『絶対だぞ?一晩俺のポケットマネーで二人きりにしてやったんだから』
『……本当、大丈夫ですからその節は有り難う御座いました!』
『男女一夜っていったら…』
『お疲れ様でした!』
恭祐はその先を謂わせんとばかりに
車へ乗り込みドアを閉めた。
小嶋はそんな恭祐を見て、笑う。
ハンドルを握ると、モチスケが待つ矢井田の家へ向かった。
『ピヨ〜!久し振りの、登場ピヨ!』
『本当だな?』
『お兄ちゃんあの日から小嶋さんに
からかわれてばかりピヨ』
『……』
『ピヨ?何かあったピヨ?』
『何もない。何か…空あやしいな?』
『降りそうピヨ?』
『ああ』
『雷、鳴るピヨ?』
『鳴るだろうな…。なぁ勇?』
『ピヨ?』
『モチスケの事なんだけど、そろそろ家族の所へ返そうと思ってるんだ』
『…ピヨ』
『こっちへ来てもう少しで四ヶ月だろう?』
『そんなになるピヨ?』
『うん。それで、二十八日にあっちで
花火大会があるだろう?』
『最後の思い出作り…ピヨ?』
『…ああ。仕事しながら子供を連れた親を見ていたら、そうしなきゃって…思ったんだ』
『それじゃ、花火大会の日は沢山写真を撮るピヨ』
『…淋しくなるな…』
『ピヨ』
『俺達はいつも通り過ごすだけだ』
そして二週間後。
七月十二日。午後十四時。
公園の木に沢山の蝉がとまり
鳴いている。空は雲一つない晴天だ。
恭祐は公園のベンチで一休み中だった。
『暑い…』
『暑いピヨ』
『こうしていても仕方ない。会社へ戻るか…』
『そうするピヨ…』
『モチスケ、先生に剃って貰って涼しそうだったな?』
『羨ましいピヨ』
『勇もやるか?』
『ビヨっ……このままでいいピヨ』
『あはは』
『それならお兄ちゃんもやるピヨ?』
『俺もいいや』
『ピヨ?!』
恭祐は立ち上がり、一歩一歩公園を出た。
どうしても汗が出てくる。
十五分程で会社へ着き、自分の席へ着く。
すると、タケシが冷えた珈琲を恭祐へ差し出した。
『外、暑かったろう?お疲れ様』
『ありがとう。、もう汗だくだよ』
『顔、すげー紅いな?』
『絶対日焼けしただろうなぁ…』
『だな。そうだ。月末地元の花火行くんだろう?』
『ああ。その日にあいつを返そうと思ってるんだ』
『あいつ…羊か?』
『うん。妻子持ちだし』
『…どんな羊達何だろうな?』
『さぁ』
『と、そうそう。俺と恵も花火、一緒に行っていいか?』
『いいけど…虫対策してくれよ?』
『もち 』
『何?何の話ししてるの?』
『鴨下。いや、花火大会デートのお話し 』
『へぇ〜。私も行きたいなぁ』
『鴨下、恭祐ラブだもんな?…けど』
『…けど、何よ?』
『こいつの彼女も来るんだ…』
『…あぁ。そっか…。それじゃ今回は諦めるわ』
『悪い…』
『何、そんな顔してるのよ?毎日会えるだけで御馳走様よ』
『毎日アタックじゃなくて?』
『う〜ん。それもあるわね』
(大人の女は怖いピヨ)
(俺達は子供と大人の中間で、厄介な年頃なんだ…)
『私、一度諦めようかと思ったけど…ヤッパリ恭祐君が好き』
『え?!いや、急にそんな、謂われても…』
『頑張れ恭祐!』
『よぅ!何だ?どうした?』
『小嶋さん…みごとに焼けましたね』
『そうだろう?ヒリヒリして仕方ないよ』
『あっ!そうだ!小嶋さんてサーフィンやってるんですよね?』
『鴨下君、よく知ってるねぇ?そうなんだ』
(お兄ちゃんのまわりには面白い人が沢山ピヨ)
そして仕事が終わると恭祐は車で矢井田のアパートへ向かった。いつも通りだ。
チャイムを鳴らすとすぐ、玄関が開いた。
日焼けを気にしてる矢井田の肌は白く
綺麗な肌だ。
彼女は恭祐を見るなり微笑み、部屋へ戻りながら待つように謂う。パタパタと小走りでモチスケを連れてくる。
メロンを、食べていたモチスケが姿を現せた。
『またメロン食べてるな?』
『昨日お隣に頂いたの。一人じゃ食べきれなくて…いけなかったかな?』
『いえ。ちゃんとお礼謂ったのか?』
『謂いましたよぉ〜♪勿論〜♪』
『こいつ、目がハートだったの。可愛いものだよ』
『俺、こいつの寝顔好きです』
『見てみたいな。恭祐の寝顔は学校に居るとき、たまに見てたなぁ』
『見ないで下さいよ…』
『視界にはいるんだ。そうだ!お前女子達によく寝顔撮られてなぁ』
『ええ?!』
『どんな寝顔だったんですかぁ〜?』
『待て。確か…』
矢井田は自分のスマートフォンをポケットから取り出すと、恭祐の寝顔の写真を探し始めた。
『なんで先生が持ってるんですか?』
『恵がタケシへタケシが私にくれたんだ』
『…へー…』
『あった!これだ!』
どれどれと謂いながらモチスケが見る。学校で寝入る寝顔はどことなく少し疲れている様に見えた。
『大切にしてる』
『しなくて良いです…』
『お兄ちゃんは疲れたら何処でも寝るピヨ』
『やっぱりか?ちなみにこれは昼食後の後らしい』
『…。、あっ!先生に話があるんです。モチスケの事で』
『綿羊の話?』
『はい。今月、俺の地元で花火大会があるんです。その日最後に思い出作りで過ごした後モチスケを、家族のもとへ返そうと思ってるんです』
『ブルァ?』
『人間界じゃ物足りない所もあったと思う。けど、時々淋しそうな顔もしてたし…。モチスケ、向こうへ帰るんだ』
最後の、言葉はモチスケへの言葉だ。
『恭祐さん…』
『皆で、旅行へ行こう。休み、貰ってきたから』
『旅行は来週ピヨ』
『先生も、一緒に、どうですか?』
『二人なの?』
『いえ、タケシと、俺。そして先生です。こいつ等が喋るを知ってるのは二人だけなので…』
『そ、そうか。うん。行こう』
『有り難う御座います。日程は土日です』
『来週の、土日なら全然大丈夫だよ』
矢井田はカレンダーへメモをとった。
その時、恭祐の、腹が、なったのでモチスケを連れて家へ向かった。
『向こうへ戻ったら叱られたりしてな?』
ハンドルを握りしめながら恭祐が、モチスケに謂う。
『大丈夫ですよぉ〜♪慣れたものですからぁ〜♪』
『はは。…一言だけど手紙を書くよ。写真も添えて』
『手紙ピヨ?』
『ああ。、大事にしてくれよ?あぁっ!』
『こんな所にメロンちゃ〜ん♪食べてもいいですかぁ〜♪』
『さっき食べたろう?それに車内が汚れる!やめてくれ』
『分かりましたぁ〜♪では、家に着いてから食べるとしますかぁ〜♪』
『腹こわすぞ?』
『大丈夫ですよぉ〜♪』
『知らないからな?』
車を走らせて数十分。
自宅へ着くと彼は夕飯を作り始めた。
モチスケはメロンを抱えている。
どうしても食べたいらしい。
『あっ!モチスケ!やめろっ!危ない!』
『何がですかぁ〜?』
恭祐の足下へ座ってしまうモチスケ。
彼が使っていた包丁がバランスを、崩してモチスケの、すぐ隣りに落ちた。
トスッ!
『………………!!!』
『はぁ。ひやっとした。夕飯の後にだしてやるから』
『わ…わかりましたぁ…』
『そっちで待っててくれ』
『ブルァ〜イ♪』
『ピヨ?』
勇は恭祐の肩に乗りながら包丁を洗う恭祐の手を見る。
モチスケはバラエティー番組を観ながら夕飯が出来上がるのを待つ。
『明日は少し遅くなるからな?』
『分かってますよぉ〜♪あっ。今日西田さんが久し振りに、会いたいって謂っていましたねぇ〜♪』
『西田さんが?確かに仕事前に、行ったきりだったし。…こっちに、戻ってからは行ってないしなぁ…明後日、会いに行くよ。俺も会いたいし』
『お伝えしておきまぁ〜す♪』
『頼む』
『お兄ちゃん…』
『ん?』
『ピーマンは少なくしてピヨ!』
『駄目だ』
『ピーマン食べると苦いですからねぇ…♪』
『好き嫌いするな。トラウマもないだろ?』
『お兄ちゃんだって、福神漬け食べないピヨ』
『あれはトラウマになってるんだ』
『トラウマですかぁ〜?』
『父さんの手作り食べたら口の中が凄いことになってさ…』
『どうしたんですかぁ〜?』
『暫く喋れなくなった』
『…ピヨ…』
『…………』
『だからチャーハン作る時も入れなかったピヨ…』
『その通り』
話をしながら恭祐はフライパンをつかう。 勇は出来上がるまでその様子をじっと見ていた。
数十分すると勇が大好きなオムライスが出来た。
『食べたらカブト虫とりにいくピヨ』
『カブト虫?』
『ピヨ!』
『仕方ない。今日だけだぞ?』
『やったピヨ!』
『その前にメロンちゃんですからねぇ〜?』
『わかった』
夕飯がわ終わるとメロンを切る。
モチスケは本当にメロンが好きなんだと
恭祐は思った。
その時だ。lineが入った。
”二十八日、楽しみにしてるね!”
と、だけあった。
差出人は奈留からだ。
恭祐は直ぐに返事を返す。
『久し振りに会えるのね。先月会ったけど…』
彼女、奈留はあの時の出来事を思い出し
顔を赤らめた。そして、右手の、中指と、人差し指で自分の唇に触れる。
思い出されるあの感触。
恭祐の目…唇…首筋と鎖骨…。
『駄目駄目っ!どうした!あたし!』
『姉ちゃん?大丈夫?』
『きゃぁっ!何よ?!ノック位してよぉっ!』
『したよ。けど、何の反応もないからさ』
『あ…そう…』
(訊かれた!)
『風呂、入れって』
『わ、判った…』
『姉ちゃん、恭祐さんと何かあった?』
『へっ?!』
『やっぱりーチューとかしたんだ?』
(はぁ。とりあえず幼稚な頭でよかった)
『何だっていいでしょう!もう!』
『お母さーん!お父さーん!姉ちゃんと恭祐さん!一歩進んだみたいー!』
『ハル!』
ガンッ!
『痛っ!』
『馬鹿っ!』
『なんだよぉ〜さっきまで変だったくせに〜!』
『中坊が、謂う台詞か!』
『貴女、やっとじゃない?』
『はっはっはっ!いやー!良かった!』
『お母さん達までぇー!』
彼女はふてくされながら風呂場へ向かった。
その間はやり恭祐と奈留の話題で持ち切りだった。
『……馬鹿…』
『しかし、恭祐君、いい男になったなぁ』
奈留の父は以前デートの時に撮った
二人の写真を思い出してい。
『本当よねぇ〜?あんな小さかった子が…。今じゃ背も高いし…』
『何で俺を見るんだ?』
『別に比較してる訳じゃないわよ?』
『いや、それ。してるだろう?』
『ねー。数学教えてよー?』
『さっ!ビールでも呑むかな!』
『私は明日の、支度しなくちゃ!』
『………。逃げた……姉ちゃーん!風呂出たら数学教えてぇー?』
『カブト、居ないな?』
『山行ってみますかぁ〜?』
『そうだなしかし本当、涼しそうだな?』
『つるっぱげですからねえ〜♪』
『あっ!ホタル!』
『ここは水が綺麗なんですねぇ〜♪』
『そうらしいな』
『ピヨー!モスラピヨー!』
勇が謂うモスラ。それはシンシュウサンだ。
『こっちからも来たピヨー!』
『デカいな…』
『そして騒がしいですねぇ〜♪』
『ビヨーーっ!』
暫く騒がしいまま一夜が明ける。
この調子で日々が過ぎ、旅行の日がやって来た。その日まで、暑い中外歩きをしたものだ。勿論のこと。恭祐は西田の所へも足を運んだ。
『行くときは俺が運転するよ』
『んじゃ、俺は恭祐が、疲れたらで帰りは先生ね?』
『えっ?!』
『よろしくお願いします』
『ピヨ!』
『後でメロンちゃん一切れあげますからぁ〜♪』
『ええ?!』
『珍しい事もあるもんだなぁ〜?』
『はははっ!』
『私だってたまにゎ、分けますよぉ〜♪』
『偉いモッチー!』
『ええ?!なんで茜が居るんだよ?!』
『タケシさんから訊いたの』
『タケシ…』
『いいじゃんいいじゃん 』
(騒がしくなるな…)
(ピヨ…)
騒がしいまま車を発進させた。
後部座席で案の定、茜と矢井田は恭祐の話手盛り上がった。
『花火大会の事は絶対に謂うなよ?』
『…うん』
『一泊だと疲れるかも知れないけど、仕事上仕方ないよな』
『そうだなを先生も月曜日には学校行かなきゃならないみたいだし』
『まっ。楽しめれば何でもいいかな?』
恭祐はミラー越しにモチスケを見た。
勿論の事。茜の、玩具になっているが
出来る限りやり返していた。
数時間、車を走らせると目的地へ着いた。
『ピヨー!ハイランドパークピヨ!』
『まずはジェットコースターだな!』
とタケシ
『えー?!お化け屋敷でしょう?ねぇ?先生?』
と、茜。
『え?、まぁ夏だし…』
『それじゃ、俺と恭祐は鮎でも…』
『二対二!』
茜はどうしてもお化け屋敷へ
入りたいらしい。
『俺、何でもいいよ』
『お兄ちゃん!それは無し!』
茜が恭祐を睨む。
『それじゃ…俺は先生と組むよ』
『えー?!』
『茜は騒がしいから…』
『ひっどーーい!』
『…あ、…私でいいの?』
『…?どうして?ですか?』
『い、いや…何でもない』
『それじゃ入りますかぁ!』
『モチスケはぬいぐるみのフりしてるんだぞ?』
『ブルァ〜イ♪』
『…上手いな?』
『天才ですからぁ〜♪』
『早く行こう!』
こうして四人と二匹は楽しんだ。
お化け屋敷で矢井田が思っていた以上涙目になりながら恭祐にしがみついたりしていた。
モチスケは時々恭祐達の後ろで叫び声をあげていた。
そんなモチスケを愛おしく感じていた。
数分後お化け屋敷を出ると、モチスケの顔が何故かパンパンに腫れ上がっていた。
初めて見るタケシ、茜、矢井田達は動物病院へ連れて行こうと謂いはじまった。
恭祐はモチスケから訊いていたので理由を話した。
『ねぇ?モッチー?向こうでそんな事があったの?』
『ありましたよぉ〜♪』
『アニメ化になるんだろうね』
『先生〜♪なるのでなく狙ってるんですよぉ〜♪』
そんなこんなてわハイランドパークを楽しんだ。
といっても殆どモチスケの話を、訊いていたのだが、それはそれで楽しかった。
ホテルへ着いてからは限られた時間で
プールへ入ったり、温泉に入ったりと
楽しい時間を過ごした。
帰りの車の中では
疲れたのか眠ってしまうモチスケ。
そしてー。
二十八日。
ー今日でモチスケとは、さよならだ。
旅行、どうだった?花火大会は楽しかったかい?ー
『恭祐君!こっちこっち!』
『はぁはぁ…ふぅ。お待たせ。凄い混んでるなぁ相変わらず』
『そうなの。あれ?恵ちゃん達は?』
『今、売店に寄るって。少し待ってて貰って良いかい?』
『うん。……ねぇ』
『うん?』
『手、繋いでもいい?』
『いいよ』
奈留と恭祐はそっと手を繋いだ。
『ブ〜ル〜アァ〜ッ!!何故私を追いかけるぅ〜!
ワンワンワンっ!
『………』
『また追い回されてる…』
その時だ。
夜空に大きな花火が打ち上げられた。
一発。また一発。
続々と、打ち上げられる。
モチスケを追い回していた野良犬は花火の音に驚いたらしく何処かへ逃げて行った。
タケシと恵は花火の音訊いてか走ってきた。
四人は屋台でリンゴ飴を買ったり
金魚すくいも楽しんだ。モチスケへのプレゼントて恭祐が射的で今子供達の間で流行りのなめこをゲットした。
『なめこぉ〜♪』
チョコバナナを食べていたモチスケの口の周りが汚れてしまっている。
恭祐の肩に乗っている勇も負けずに汚れていた。
『花火を観るときはあの丘へ行こうか?』
『そうね。あの場所なら静かに観れるし』
『まだクライマックスじゃないから、屋台…楽しもう…』
『うん!』
奈留はすかさず恭祐の手を握り浴衣姿で
走り出す。
その後ろ姿を恭祐はそっと見守る。
それに、花火だが大体は分かる。
一時間もすればクライマックスの時間だ。
その時間まで飴細工や数字当て。綿飴にお面。
お腹空けば焼きそばやお好み焼きなどなどを楽しんだ。
沢山の人々で賑わっている中の屋台は…やはり良いものだ。
『これ、帰ったらみんなで食べてくれ』
『有り難う御座います恭祐さぁ〜ん♪』
『……モチスケのお蔭でジンギスカン食べられなくなったよ。たまに蹄が当たって痛かったぞ』
『……恭祐さんの骨拳骨も痛かったですけどぉ…』
『泣くな』
『泣いてなんかいませんよぉ〜…』
『そろそろ時間だ。あの丘へ行こう。花火、凄く綺麗に観れるんだ』
『ブルァ〜イ…』
こうしてモチスケを連れ、丘を目指す。
花火が終わったら彼と別れの時だ。
モチスケは屋台で恭祐が買った品物を大切に抱きしめている。
丘へ着くと花火が
目の前に見えた。
恭祐達はその花火を、観ながら
この花火がずっと終わらなければいいのに。
そう思っていた。
恭祐は自分で決めながらもやはり、淋しかった。
モチスケが人間界へやってきた日から今までが頭の中で再生される。
短い様な長い様な。
『たまには…遊びに来てくれ』
『ブルァ〜イ…』
彼等は花火を観ながら涙を流していた。
初めてモチスケが来て、鬼を退治した時は
正直驚いたものだ。
喋る羊だったのだから。
悪戯羊でり、優しい羊だった。
勇の面倒もよく見てくれてので助かった時もあった。
最後の花火が打ち上げられた。
恵、タケシ、奈留。
一人ずつモチスケを撫でたり
抱きしめた。
そして、最後に恭祐から手紙を渡された。
『俺達の事、忘れないでくれよ?もし、次に来るときは皆で来るといい』
モチスケは顔を縦に振る。
その瞬間だ。モチスケの後ろに何処かへ通じる何かが出現した。
『さようなら』
『さようならぁ〜♪』
モチスケは帰った。
ー今日でモチスケとは さよならだ。
旅行、どうだった?花火大会は楽しかったかい?
人間界での生活はどうだったろう?
前に撮った写真と今日よ写真。同封しておくよ。
それと、屋台で買った食べ物。
帰りながら一人で食べるなよ?
君が居た生活、とても楽しかった。
有り難う。
恭祐。−
第一 妖かしを最後まで
有り難う御座いました。
初めて書いた作品なので
ちょっと淋しいかもです。
けど、 続 妖かし を執筆することを
決めました!
本当ゎ途中この作品で終わりに
しようか…と…けど
応援してくれる仲間が居てくれる事に
感謝し、そしてあたしの背中を押してくださった方。。。
本当に有り難う御座います!
猫様、せり様。
有り難う御座います。。。
そしてブックマークして下さっている方々も有り難う御座います。。。
続 妖かし は6月13日を予定しています。




