プロローグ 覚醒
不思議な話は如何でしょうか…。
もし、自分が視える様になったらどうしますか?
黒くて霧みたいな影
四畳半の畳を叩く音
など…。
何部目かゎお教え出来ませんが
途中作者が体験した出来事。が…。
信じる信じないは貴方次第です。
ただ。初めて視たのは霧みたいな黒い影
です。
休日の午後、子供達が公園でボール遊びをしている。天気にも恵まれ楽しそうにはしゃいでいる。だが、その幸せな時間は長く続く事はなかった。
一台の車が近づいていることに気づいていない
一人の女の子が道へ転がり出てしまったボールを取りに出てしまう。
そして……。
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覚醒
キキィ……
ドォォォン……
(痛い…どうしたんだ俺?…あぁ…確か飛び出してきた子供を助けようと…あ…そっか…。ひかれたんだ…)
『うわぁぁん!!お兄ちゃーん!!』
(良かった。女の子は無事か…)
『あぁ!なんて事だ…き、救急車…』
『うわぁぁん!!ママぁぁっ!お兄ちゃんがぁぁぁ!!…あ…』
横たわる少年は泣いている子供の頭を
優しく撫でた。すると涙を流している女の子は、ふと泣くのをやめた。
『大丈夫だから、泣くのはやめな…』
『グズ…お兄ちゃん…』
『ちょっとだけ、体が痛いだけだから…』
『う…ごめんなさい…ごめんなさい…』
『大丈夫、大丈夫だよ…』
騒ぎに気づいた女の子の母親がやってきた。自分の子供の無事を確認した後、娘の隣で横たわる男の姿が目に入った。
『ママぁ!!!うわぁぁぁん!!お兄ちゃんが…お兄ちゃんがね心優の事助けてね…お兄ちゃんがね…うっ…うっ…』
『心優…ママが悪いのよ…ちゃんと見ていれば…』
母親は男へ視線をずらすと顔色が変わった。知っているからだ。彼もまた、母親を見ているがしっかりとは見えずにいた。
『恭祐…君…』
『良かったです…お子さんが…無事で…』
『…え…?しっかりして?!』
彼は目を閉じてしまう。
近くまで来ているのだろう。救急車とパトカーのサイレンが聞こえてきた。
到着するとあっという間に騒々しくなる。
車の運転手は警察と話を始め、救急隊は恭祐へ近寄る。
『お兄さん!判る?!お兄さん!』
『すみません、彼の知人ですか?!』
『はい…彼は宮澤恭祐君。確か十七歳です。誕生日までは…』
『判りました。有り難う御座います』
(騒がしくなってきたなぁ…そっか…助けた子は心優ちゃんだったのか…大きくなったなぁ…)
恭祐は担架に乗せられ、救急車の中へ。
そして、近くの総合病院へ運ばれて行った。
病院へ着くまでの間救急隊員が彼の血圧や脈拍を測ったりとしていた。
そんな中彼は不思議な夢を見ていた。
金色の光が辺りを照らす。彼、恭祐は草原の中一人立っている。向かい側から誰かが近づいてくる。
恭祐はじっと静かに様子を見ることした。
途中、目が霞んだ為擦り、また先程の方向を見る。しかし、誰か居たはずなのだが気配が無くなっていた。
『気のせい…か?』
恭祐は右手を頭の後ろへまわし、視線を足元へやる。すると今まで確かに誰も居なかったはず。
誰かの足がある。
ゆっくりと顔をあげる。
『うわっ!誰だよ!?』
顔をあげると水色のワンピースを着た女が立っていた。
そして唐突にその女はこう言い放った。
「私の眼、貴方にあげる。…貴方なら信じられるから…」
『目?なんだよそれ?俺にだって目はちゃんと…それに君に出来る訳が…』
「出来るわ。簡単な事よ」
『簡単って…』
「目を閉じて?」
『けど…』
女は少し困った顔をした。
”困っているのはこっちの方だ”と謂ってやりたかったが、どうせ変な夢だと思い直し彼は謂われた通り目を閉じた。
暫くすると女が何かしているのか気配がする、後ろにまわったらしく両手で恭祐の瞼へ自分の手を重ねた。
恭祐は”夢の中”で姿勢を崩し、女の腕の中で寝入ってしまった。
「立派な高校生が居るものね」
女は恭祐の頭を撫でた。
…事故から十日。まだ意識は戻らずにいた。
『今日も戻らないのか…』
『でも…まだ体温はあるわ』
『しっ!』
『………』
『恭祐…?』
(何だか…耳元で話し声が…あ…)
『父さん……母さん……』
『貴方!!』
『やっと意識が戻ったか!?』
母親は興奮しながらもナースコールを押していた。看護師が担当医を連れて病室へやってきた。担当医のネームプレートには”野口 健医師”とあった。
野口は恭祐の様態を診る。
『意識が戻ればもう大丈夫。相手がトラックじゃなくて良かったよ。ただ不思議な事が一つ…車は結構破損してしまったらしいけど、君は背中の怪我と左腕の骨折だけで後は無傷だった』
『無傷…』
キキィ…
ドォォォン…
確かに車とぶつかった。はっきり覚えている。だが、その直後何かに助けられた様な…そんな感覚があった。
そして酷く瞼が重かった。
『どうしたの?恭祐…?』
『あの時…何か…助けられた様な…不思議な感触が…』
『不思議な感触?』
『はい。けど…』
『まさか……』
野口は何か独り言を始めた。
隣で立っている看護師は気持ち悪そうな目つきで謂った。
『先生、気持ち悪いですよ?』
『あ…これは失礼。いや、不思議な話さ』
そう謂った後野口は三人へ一礼し、また時間になったら来ると言い残し病室から出て行った。両親も昼時に見舞いに来るらしく恭祐の携帯を枕元に置き二人も出て行った。
ただ恭祐は医師の言葉を気にしていた。そして…あの夢はなんだったのか…。
父と母が仕事へ出て暫くすると
あの日助けた心優と母親の結愛が恭祐が居る病室を訪れた。会うのは事故以来だ。心優は恭祐の事を見るなり、わんわん泣いた。
あの事故から毎日気にしていたのだという。無理もない。彼は今日まで眠ったままだったのだから。母親の結愛もまた自分の不注意で娘がボールを取りに飛び出した事で恭祐が事故に遭った事を気にしていた。
話をしていると、心優の父親、孝信もやってきた。
『本当に…申し訳なかった…!』
孝信は深々と頭を下げる。
『ご両親には僕達から謝罪させてもらったよ』
『そんな…もう大丈夫なので気にしないで下さい…。それに…それ以上謂うと小さな心優ちゃんが可哀想ですから…』
恭祐は心優を撫でながら孝信へ謂う。
『そう謂って貰えると何だかホッとするよ。…有り難う。何て謂うかな?君は本当に優しいね…こいつがお熱になる気持ちが判るな』
『お熱?』
『パパ!謂わないで!』
『ふふ。この子ったらずっとヒーローの側に居たいんですって』
『こいつの初恋…だな』
心優は顔を赤くしながら結愛の後ろへ
隠れようとしたが、それを恭祐が阻止した。心優の顔の近くまで自分の顔を持っていくと、一言呟いた。
『有り難う。心優ちゃん』
『…うん…』
まだ小さい子供だが心優は女である。
幾ら五歳の子供だからといって、幼い少女の心はとても繊細なのである。初めての恋なら尚更だ。
恭祐は優しく微笑んだ。
心優は…はにかんだ。
それからというもの、心優は毎日恭祐の見舞いに来た。幼稚園で何を作ったとか、誰と何して遊んだとか、先生が失敗した話だとか、友達が園で泣いてしまった事を一生懸命話してくれるのだ。
だからだろうか、彼は午後三時には必ず病室で心優達を待つようになっていた。
看護師が病室へ入ってきた。
『今日和。今日はどう?気分良いかしら?』
『はい。有り難う御座います』
『それはいい事ね。…最近あの子、よく着てくれるわね?恭祐君格好いいからお熱なのかしらね?』
『そんな事…』
『あら?だって来る度”恭祐お兄ちゃんに会いに来たの”って謂いながら貴方の病室へ行くのよ?』
『そうみたいですね』
あの元気な声は彼の居る病室までよく聞こえるのだ。
『検査結果は午後になってから出ますからね?恐らくその時に退院の話、先生からあるはずですから。ただ!無茶はしない様にお願いしますね』
『はい。…でも何故目の検査を?』
『それがね…あの後急に謂いだしたのよ。目の検査をしてくれって』
『そうなんですか?』
『ええ。それにあれから独り言も多いのよ…』
恭祐は思い出した。担当医が先日、この病室で話した事。それは医師の体験だった。
医師、野口は通勤時事故を起こしたのだという。前方を走る車が蛇行運転を繰り返し、危ないと思い前の車を避けようと右車線へ出た瞬間…事故は起きた。
『その時、君と同じでね…怪我を負ったものの軽い方だった。そして車内で何かに助けられた…。
暖かくて安心感のある感じというか…。それは今も忘れられないなぁ。
眠りっぱなしの時が…同じくあってね”夢”を見た。
水色のワンピースの女だった。彼女が私に、”手”をあげると…だが私にはちゃんと手がある。医師でもない君に何が出来る?そう謂うと彼女は”出来る”と。
女は私の手を取り自分の手を重ねた。その時なんだ。
”次は誰かさんに眼をあげるの”
…私はずっと気になっていたんだ』
『その誰かさんが俺なんですね』
『その様だ』
そんなやり取りだった。
『それじゃ、次は結果が出たら先生と来ますね』
『はい』
看護師は出て行った。
(どうして”眼”だったんだ…?)
その時だ。
急に両目が熱くなりだした。
『うっ!!』
「大丈夫。それは一時的なものだから。次回からは熱くなったりはしないわ」
『…き、君は…あの夢の…』
「…………」
女はすぐに消えた。
変わりにボロボロの服を着た小学生位の
男児がベッドの前に立っていた。
『い…いつからそこに?』
「ずっと」
『ずっと?さっきまで…き、君は…』
「僕、死んだんだ。一年生の時…」
(なる程。だから服が…)
『幽霊…て事か…』
「お兄ちゃん、視える様になったんだね」
『そうみたいだ』
「お願いがあるんだ」
『なんだい?』
「これをパパとママに渡してほしいの」
『手紙?』
「僕、本当はお兄ちゃんになるはずだったんだ。だけど妹が生まれる前に川で…」
『もしかして…心優ちゃんの…』
「うん。たかはし ゆう」
『判った。必ず渡すよ』
「有り難う…お兄ちゃん…」
勇は微笑むと光の粒となって
消えていった。
数時間後
検査結果が出た。異常は何も無かった。
ただ、写真と比べると瞳の色が変わっているとの事だった。生活に支障は無いが
何か気になる事があったら受診してくれとこ事だった。
恭祐は心優と結愛が来る間売店で購入した小説を詠むことにした。ただ、何故か不安だった。五年前に亡くなった息子の手紙を渡して何て思われるだろう。
怒って話をしてくれなくなるのでは?
どう切り出して良いのか色々と悩んだ。だが、約束した以上渡さなければならない。
時間になると病室の扉がスライドした。
勿論、心優と結愛だ。
心優の手には花束が握られている。
恭祐が退院して三日後。ようやく学校へ行ける様になった。
あの日、初めて幽霊を視た日…。
病室の扉が横にスライドし、心優と結愛が
入って来た。
《入院中の病室にて》
『ねぇ、…あの子の事覚える?』
『……勇君。ですよね…』
無論そうだ。
結愛は五年前と前の事故の事を
思い出していたのだ。
『あの時…もしかしたら心優を…事故で失ったんじゃないかって…そう思ったの…
この子の無事を確認出来るまで、とても恐かった。
けど…あの場所に倒れていたのは貴方だった…ごめんなさい。本当はほんの少し…
ホッとした自分が居たの…だけど恭祐君がまだ意識が戻らないって
耳にした時はもしかしたら…お礼が出来ない…謝る事も出来ないの…って
…酷い事謂っていたら…』
『大丈夫です。謂いたい事はちゃんと伝わっていますから…。どう致しまして』
『恭祐君…』
『俺の方こそ…不躾がましいんですが…
実は……その……手紙を……』
『手紙?』
結愛は誰から?と思いながら首を傾げた。
恭祐は覚悟を決めて話し出した。
『……変人だと思われる覚悟でお話します』
そう謂うと昏睡状態の時に見ていた
あの”夢”の話を始めた。心優と結愛は
何かの物語を訊いている様だった。
『それで…手紙が此方です』
『……この字…』
結愛はボロボロになった自分宛ての手紙を取りだした。
見覚えのある字だった。確かに誰が何て謂おうと…勇の字だ。
〔ママへ いつもありがとう
ぼくは、もうすぐお兄さんになります
だから、ぼくはママのおてつだいも
がんばります!
いもうとには やさしくします!
はやく、いもうとに あいたいです!
ママのことは ぼくがまもります!
ずっとずっと いっしょです!
ゆう 〕
手紙を読み終えた彼女は目に、沢山の涙がこぼれ落ちた。
天国からの手紙だね。と心優が母親に謂う。
『信じるわ…だって…この字は…』
『有り難う御座います。信じてくれて…』
二人は十分くらいだが恭祐と話をして
いつも通り病院を後にした。そして野口から退院の日を告げられた。
『おーいっ!恭祐ーっ!!』
『あ、おはようタケシ』
『もう出て来ていいのかよ?』
『ああ。先生も驚いてたよ』
『良かったじゃん?でも昏睡状態って訊いた時は心配したぜ?』
『悪い。心配かけたな…』
『全くだっての!』
彼、恭祐の友人で川野タケシ。
同じクラスの一人だ。
タケシは勢いあまって恭祐の背中を
いつも通り叩いてしまう。
『痛いっ!』
『あ…悪い…』
『まだ痛むんだからなぁ…』
『すまん!つい、いつもの癖で…』
『いいよ。だけど気をつけてくれよ?』
『なら良かった』
『タケシ…。あ…』
『どうした?』
一足前を歩くタケシが立ち止まり
恭祐へ振り返る。
『いや…』
(気のせいか…?)
数秒程桜の木の下辺りを見渡した。
とくに変わった所もなく、誰かが居るわけでもなかった。
『何だよ?早くしないと遅刻するぜ?』
『あ…あぁ。悪い…』
風が柔らかく吹いた。
恭祐が見ていた桜の木の側に子供の影があった。彼の後ろ姿を見ている様だった。
学校へ着くと案の定、彼は取り囲まれた。
『子供助けたんだったてな?!』
『え…』
『もういいの?左腕、大丈夫?不便じゃない?』
『あ…うん…』
『昏睡状態だったってマジかよ?!』
『ああ…うん…』
『恭祐お前凄いなぁ…』
『子供のヒーローよね!』
(何でこうなるんだ?気持ちは嬉しいんだけど…)
時間なのか担任の矢井田加奈子が教室へやってきた。恭祐の机を取り囲んでいた生徒は矢井田の一声で自分の席へ着く。
『宮澤』
『はい…』
『立派な事をしたな。生きていて何よりだ!』
『はい…』
朝のホームルームが終わると
一時間目の授業が始まった。授業はかなり進んでいたが、毎日タケシがノートをコピーしては見舞いがてら持ってきてくれたので支障は無かった。
頬杖ついて黒板を見ては思い出していた。
その時。
スコーンっ!!
『っ!!』
『宮澤〜余所見しな〜い!』
『してませんっ!』
どっと笑いが湧き上がった。勿論矢井田の授業は必ずこうなのだ。周りが笑うのでつられて恭祐も笑う。
やっぱり楽しい。そう感じた。
授業が終わるり、手を洗っていると登校中に感じたあの視線があった。
『…ふぅ…出ておいで…?』
「……」
『あっ!……』
恭祐は人影の少ない廊下へ視線の持ち主を移動させた。
高橋勇だ。
『何で君が?!』
「あのね…お兄ちゃんの側に居てもいい?」
『はぁ?だって君は成仏したんじゃ…』
「謂うこと利くから
悪い霊にならない様姿を変えるから」
『参ったなぁ…仕方ない今は時間が限られてるし…詳しい話は帰ったら訊くからな?』
「うん!有り難うお兄ちゃん!」
勇の体が淡く光と小動物へ姿を、変えた。
薄い黄色で丸い体、小さな羽、小さなくちばし。雛そのものだ。
『宜しくピヨ』
『雛…ピヨって……』
初めての作品を投稿させて頂きました。
物語を作る事が大好きで
一昨年からまた書き始めました!
楽しんで詠んで頂ければ幸いです。
どうぞ、宜しくお願いします(*^^*)