少女
闇の帳は落ちたけど
光の電車は走ってく
車内は縦横四方に揺れて
人は独りでによろける
新馬場についた電車は
ドアを開いて人を乗せる
立っている僕の前の
椅子が二つ開いた
お婆さんがいるから
座るのを遠慮してたら
お婆さんはドアを出る
今さっき乗ってきた
年端もいかない女の子が
椅子の片方に座った
嗚呼
屈託のない笑みって
これなんだ
そんなことを思ったり
純粋な心って
これなんだ
そんなことを思った
嗚呼
僕から抜け落ちたものは
とても大きく
とても小さい
僕がずっと学んだきたものは
白鳥が飛ぶ方法じゃなくて
カラスが人を襲う方法だったんだ
嗚呼
僕は電車を降りて
ため息をつく
そうだ。
x=31だったんだ
僕には
ホームを去る列車は
眩しすぎたんだ
少女よ、白鳥を抱け。