†好きの気持ち†
未成年が話の中で、夜更かしやお酒飲むと少し混じっています。皆さんは、成人してからお酒は飲みましょう。
「今日から働かせてもらう天野蜜巳です。宜しくお願いします。」
事務所の入り口で、頭を下げ控えめに朝の挨拶をする。十八歳になったばかりで高校も行かず、あちこちバイトしながら漸く十八歳になった。十八になると、自給の高いバイトを見つける事が出来た。初めは、ハウスクリーニングの募集で面接を受けたが、新築の家で引き渡す前の掃除が主な仕事だった。実は男ばかりの職場で、女性が一人もいない事を後で知った。蜜巳は男が苦手で、昔軽い痴漢にあってから男が怖くて、目も中々合わす事が出来ない。それでも、面接をして採用されたからには男が嫌で、辞めますなんて言えず緊張しながら、今日を迎えた。
初日は五人でチームを組み、あちこち車で移動した。色々掃除をして、慣れない仕事に筋肉痛になり一週間は、痛みと闘った。社長からは『ミミ』と、あだ名を付けられて会社の知らない人間からすると本名と勘違いされてしまう。今時の名前なんだねって笑われたりもしたが、それでも少しずつ会社の人と親しくなっていった。バイトを始めて、三ヶ月が過ぎ夏の暑い日。その日チームの頭である人が、ヘルニアで腰を痛めて車から出れなくなってしまった。蜜巳、一人では仕事が進まないし終わらないので、応援を呼ぶ。夜遅くになってしまったが、漸く終わって仕事している最中は、近くで花火大会が行われており、とても綺麗だった。
「ミミちゃんは、原田と帰って。僕は三村を送っていくから」
「はい」
「じゃ、お疲れ様」
三村とは、今日一日蜜巳と一緒に行動していてヘルニアで、腰を痛めた人。原田とは、三村の代わりに応援しに来てくれた人で、あまり喋った事がないので緊張する。
「自分達も帰ろうか」
「はい」
(あまり話した事ないし、会話がない)
車に乗り込み事務所の帰る時間、どうしようか悩む。口下手な蜜巳にとって、男性が苦手でもある為本当に悩んでしまう。
「あんまり仕事一緒にならないよね」
「そうですね」
毎日、仕事内容によって入れ替わりで違うチームと組まされる。原田とは初日の一回以外、一度も一緒に仕事をした事が無かった。口下手な蜜巳の返事も気にせず、色々話し掛けてくれて事務所に近付くにつれて、自然に話せるようになった。普段なら相手が、話し上手でも時間はかかるのに。
「天野さんは何型?俺はね、B型」
「何型に見えますか?」
「もしかして知られたくない?会社の人間ってO型多いからな」
うーん悩みながら、蜜巳が一番良く言われるO型を言われた。
「違いますよ。Bです」
「あっ俺と一緒だね。仲間だ」
B型は少ないから、嬉しいと言われ今まで苦手と思っていた男性が不思議と自然に話せる。話し上手のうえ、もっと話したくなる。もしかして、昔ホストでもやっていたのだろうか?事務所に戻り、報告書を書いて帰り支度をする。このまま帰ると思っていたが、夜中になろうとしている時間帯で原田が送ってくれると言ったので、お言葉に甘える。時間も時間なので、ご飯を食べに行こうと誘われ一言、親に電話をして原田と一緒に車に乗って、食事をする事になった。
「ラーメンでいい?お洒落な店言われても困るけど」
「構いませんよ」
「そう、女の子ってラーメンとか嫌がるでしょ?」
「そんな事ないですよ」
「本当?今迄の彼女は、ラーメン凄い嫌がっていたから」
『ありがとう』と、お礼を言われてくすぐったい。お店に着き、原田と同じ物を注文する。見た目は、若く見えるが年齢が分からない。二、三才、年が離れてるとも思えない。気になりつつ、注文したラーメンが来たので食べる。食べている最中に年齢を聞いてみた。
「原田さんって、何歳なんですか?」
「うーん?俺何才だろ・・」
自分の年齢が分からないなんて、そんな筈はない。隠したいほどの、年齢を言っているのだろうか?年齢の話は終わり、食べる事に集中。食べ終わり、会計をしようとしたら御馳走してくれるのでお礼を言う。
「本当にありがとうございました」
「ラーメンぐらい安いよ」
「でも、ありがとうございます」
「どういたしまして。この後まだ大丈夫?カラオケでも行かない?」
本当は親に怒られるが、蜜巳は電話をして会社の人達とご飯が長引いているから、帰りが分からないと嘘を吐いた。翌日は日曜で、お休みでも有り初めての夜更かし。本当は歌が苦手で歌えないのだが、もう少し一緒に居たいとカラオケに来た。全く歌わない蜜巳に、原田は気にもしないで代わりに歌ってくれる。
「天野さん、お酒飲める?」
「一様、飲めますが未成年なので」
実は親譲りで、お酒が少しだけ強い蜜巳。たまにだが、親の許可を得て家でお酒を飲む。
「天野さん未成年なの!?そっか・・・進めちゃ駄目だよね」
二十歳を超えていると思っていたようで、老け顔の自分が悲しい。
未成年がお酒飲むのも、夜遊びするのも駄目なのだが、その時の蜜巳は浮かれていた。
「でも、私飲みたいです」
原田独りだけ飲んでいたので、内心自分も欲しいなと思っていた。無理にお願いをして、ジン系のお酒を頼み、飲むを繰り返す。無くなったら、タイミング良く注文されていて何時もより、飲む速さが早い。その日、女の子の日でもあった為に最後は、ふらふらになってしまった。
「原田さん飲ますの、上手」
「天野さんが、意外に飲めるからだよ」
未成年にお酒飲まして、ふらふらにさせて『俺、いけないな』と、苦笑いされ肩を支えてもらいながら階段を降りる。車に乗って、少し移動して公園付近で停めた。飲酒運転になってしまうので、酔い覚ましの為にも一眠りしようと言われる。蜜巳も眠たかったので、頷き眠るが直ぐに目が覚めてしまった。視線が感じるからだ。
視線の正体は、隣の原田だ。
蜜巳は眠たかったので、目が開けれない。見つめられているような気がして、段々恥ずかしくなってきた。耐えられないと思った瞬間、唇に優しく何か触れる。蜜巳は一瞬何か分からなくて考える。
(キスされたんだ!)
直ぐ離れて相手は眠ってしまったので、勘違いと思ったがリアルに感触が残っているので、間違いない。気になって結局眠れず、相手が起きると共に起きたフリをした。
「天野さん眠れた?」
「は、い・・あの、私って何か寝言とか言っていませんでしたか」
起きていたのを気付かれないように、寝言なんて言っていないのは分かってるが原田に聞いてみる。
「寝言?あー、そういえば何か・・」
「嘘!」
「ははっ嘘だよ。冗談、何にも言っていなかったし静かに眠っていたよ」
原田は、冗談だよと笑っている。キスした事は、まるで無かったかのような振る舞い。蜜巳が、寝ていると思っていた行動だから黙っているのだろうが、何だかモヤモヤしてしまう。近くの自販機で、缶コーヒーを買って飲み、送ってもらう。朝方近く帰って来たので、親にばれない様に家の中にそっと忍び込んだ。両親は日曜日ともあって、まだ寝ているようだ。
(良かった起きていなくて)
本当は寝ていなかったので、自分の部屋に戻り目覚ましをセットして少しだけ眠る。色々あったので、直ぐに夢の中に入る。数時間後、目覚ましで起こされ親に何時に帰って来た問われたが、曖昧に誤魔化した。お風呂に入って、原田の事を考える。
(原田さん私の事、どう思っているのかな)
その日一日、頭の中から原田が離れなかった。又、翌日の週初めの月曜がやって来て、蜜巳は恥ずかしくて一週間避ける様になった。話し掛けられても、素っ気なく逃げてしまいお盆の時期になった。四日ほどお休みが有り、会社内で話が終わったらさっさと帰る。
「天野さんもう帰るの?ちょっと待ってて、送っていくから」
「いえ、大丈夫です!お疲れ様でした」
「あっ天野さん・・・」
原田の言葉を無視して、慌てて家に帰る。相変わらず仕事は一緒にならないので、助かったが何だか気まずくて今みたいな行動を、何度もした。とぼとぼ家に帰る途中、急に車のクラクションが鳴って驚く。車道を見れば、原田がのんびり蜜巳の歩く速度に合わせて、運転していた。
「天野さん乗って」
「大丈夫です。家も近いので、独りで帰れます」
断ってもずっとついて来て、車道の原田は他の車に何度も鳴らされて、迷惑だと怒られていた。構わず行って欲しいと、願っても諦めずに蜜巳の歩く速度に合わせてついて来るので、軽く渋滞になってしまう。
「ほら、他の人にも迷惑になるから乗って」
「わかりました」
渋滞になって凄い鳴らされているのに、構わずついて来る原田に根負けして渋々車に乗る事になった。送ってもらうだけ、そう心に念じて静かにしている。家付近に近づき、お礼を言って帰ろうとすれば。
「お盆って予定有る?」
「えっ、ありませんが」
「なら、俺と一緒に出掛けよう」
しまった。そう思ったのは遅すぎで、勝手に予定を組まされてしまった。今更、予定があるとは言えず携帯の番号を交換する事になる。二日間は予定があるようで三日目の朝待ち合わせ場所で、迎えに来るようだ。何処行きたいか、考えなければいけなく迷った。当日ドタキャンでもしようかまで、迷ったぐらいだ。
三日目の朝、原田から電話が来た。向こうも予定があるのかもと、断る口実が出来たと勘違いして電話に出たところ。『仕度出来た?まさか、ドタキャンとか言わないよね』電話越しで、爽やかに言う原田に見透かされて乱されているような気がしてきた。
何処に行きたいか分からないので、原田にお任せして遊園地に行く。絶叫系に乗りたかったが、原田が苦手らしくお化け屋敷や、コーヒーカップとあまり乗り物に乗らなかった。絶叫系が苦手で、乗り物ばかりの遊園地に何故来たか尋ねれば、女の子は好きでしょ?と言われる。歴代の彼女達が、好きだったのだろう・・・少しムッとした。彼女達と一緒にされたのが、嫌だった。
「今日誘ったのはね相談があるんだ」
「相談ですか?」
「うん。最後に観覧車に乗って、話聞いてくれるかな」
観覧車なら大丈夫だから。と、蜜巳がムッとしていたのも知らないで相談したいと観覧車に勝手に行ってしまった。後をついて行き、観覧車に乗り込めば早速、話を切り出す。
「実はね、俺の知り合いに天野さんと同じ年の子を好きになった奴がいる」
「知り合いは何歳ですか?」
「知り合いだけで年齢は知らない。でも相手の子と、十歳以上離れてるみたいだよ」
「なるほど。でも、私に何を聞きたいのですか」
同じ年齢だからと言って、相手を知らない。何も意見など言えないのだが・・・
「天野さんは十歳以上も離れている相手と、恋愛できる?」
「恋愛ですか?うーん、好きになれば問題ないのかもしれませんが」
「そうか、好きになれば」
意味深な言葉を言う、原田に少し疑問だったが一生懸命、年の差恋愛を考える。きっと、本人は年上過ぎて相手にされないと思っているからだ。
「天野さんは、俺の事どう思っている」
「原田さんの事?」
「恋愛として見れる?それとも、おじさんなんて対象外?」
今は原田の、知り合いの話では無かったのだろうか?何故、蜜巳が原田を恋愛対象で見れるか聞かれるのだろう。そう思うが、素直に話す。
「好きなら問題ありません。原田さんは、私の事好きになれますか?」
少しずつ、惹かれていたのは確かだ。原田に、年下は好きになれるのか聞いてみた。
「俺は、好きだよ一目惚れだった。正直、十八歳って知って驚いた」
「えっ・・一目惚れって」
「絶対、俺の嫁さんになる子だって思った。年下と思ってたけど、まさか十歳以上離れてるとはね」
顔を片手で隠しながら、本当は相談じゃなかった事を打ち明けた。最近避けられてたし、今日だってドタキャンされると思って、緊張したと話してくれた。
「天野さんから見たら俺おじさんだし、十三も離れてるから対象外かもしれない」
「十三才もですか・・・そんな風に見えない」
「親譲りの童顔なんだよね」
ニコッと笑って、蜜巳の手を握る。
深呼吸をして、落ち着かせようとしているので、こっちも緊張が移ってしまう。
「天野蜜巳さん、俺で良かったら結婚前提にお付き合いして下さい」
ぎゅっと握った手に、そっと口づけをする原田。
「えっと、こんなお子ちゃまな私ですが、宜しくお願いします」
・・後日・・
「蜜巳、あの時寝たふりしてたでしょ?」
「知っていたんですか!」
「勿論。だから、脈ありかもって」
1ヵ月記念とまではいきませんが、無性に書きたくなりました。
※2か所ほど、当初の設定で原田が福島になっていました。修正しましたが、もしかしてまだ、あるかもしれません。