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クリスマス・イヴ記念小説

作者: ラチェット

今回の小説は特に設定も人物紹介も御座いません。

因みに、第2弾は今日の12時に投稿予定です。

ではお楽しみに♪


 「ふ~・・・。寒い寒い・・・。しっかし、世間は今日は確か・・・クリスマス・イブか~。ま、相手もいない俺には関係の無い行事だけどな」


そう独り言を呟く男が一人、クリスマスムード一色のその男の家の近所であろう商店街を一人歩いている。因みにこう呟いてはいるが何もこの男に友人が居ないと言う訳ではない。寧ろ多い方だろう。しかし、何故この男は一人クリスマスイブ過ごしているのか。


答えは簡単だ。その知り合いが皆親だったり高校時代の友達だったり恋人だったりと過ごしているからである。ではこの男も親とだったり恋人とだったり過ごせば良いという意見があるかもしれない。


しかしこの男、今は親元を離れて働いている為実家に帰る事が出来ない。それに明日も仕事があるのだからどちらにしろ帰る気は無いだろうが。それに恋人も居るには居たが誰とも長続きせずつい二月前にも別れている。


「は~・・・。ったく、世の中ままならね~な~」


そうぼやき商店街を潜り抜け信号に辿り着く。しかしその手には先ほど商店街を入るまでに無かった袋が提げられている。商店街のおばちゃんとおじさん達が余り物だから持って行けと言いくれたものだ。


そして信号を渡り2分ほど歩いた先に彼の住んでいるマンションがあった。・・・いや、これはその辺にあるマンションと一緒にしては失礼だろう。ここは所謂億ションと呼ばれる高級マンションである。そこに彼は一人で住んでいる。


と言うよりこれが付き合っても長続きしない原因でもある。付き合った人を家に連れてくると皆が皆、この男が金持ちだと理解し金目当てで付き合うようになるのである。それが嫌だから彼は彼女が金目当てと気付いた瞬間に別れているため長続きしないのである。


マンションに入り自分の部屋の前に立ちドアに鍵を差込む。鍵を回しガチャリ、と音が鳴りドアのロックが解除された音を聞き、鍵を外しドアノブを回しドアを開ける。


パンッ!パンパンパンッ!


「・・・・・・は?」


ドアを開けた瞬間何かが破裂したような音が鳴った。身体を見るが別に拳銃で撃たれて血が出てなんじゃこらー!?という訳でもない。ではどう言う事か?


「にゃはは~。ビックリした?ビックリしたでしょ!」


「・・・ああ。何でお前がここに居るんだ?咲」


音の答えはクラッカーの音だったようだ。では誰が鳴らしたのか?その答えは今俺の眼の前居る女性・・・と言っても俺より4つ下だから俺からしたらまだ女の子みたいな感じの子が居た。


「何でって・・・彼女が彼氏の家に無断で遊びに来ちゃダメなの?」


俺の目の前に居るこの名前は咲と言い俺の彼女だ。・・・いや正確に言うなら元と前に付くのだがな。ってか


「・・・付き合ってたのもう2年前だろうが。それに、無断で来るのはダメだろ。お前にも今付き合ってる彼氏くらい居るだろーが」


そう、咲と付き合っていたのはもう2年も前。俺が22歳で彼女が18歳の時。就職活動が始まる前に昔に入ってた大学のサークルの後輩達に飲みに行くから来て下さいよ!って誘わわれて飲み会に行った先で出会った。


その時悪酔いし出した後輩に絡まれてセクハラされているのを、俺が絡んでた後輩を鉄拳制裁して助けて、それが切欠で話し出した。年上が多い中だったからなのであろう、彼女は猫を被っていたらしく最初は大人しい後輩だったのだが、時間が経つに連れて快活な性格が垣間見えだして、飲み会解散直前にもなると既に俺(先輩)相手にタメ口でフレンドリーな口調で話していた。


他のやつだと少しムカッとするかもしれないが、俺は昔から敬語に慣れていなかったから咲の普段通りに話す様を見て好感を覚えた。それから連絡先を交換し、俺は就職活動の傍ら咲はサークル活動と勉学の傍ら二人でよく遊びに出かけた。


そして俺の就職先が決まってから咲に『俺から』告白した。咲はそれを了承し付き合い始めた。それからの1年ほどは楽しい時間が続いていた。咲は俺の家に呼んでも唯一今までと接し方を変えなかった恋人だ。


俺はそれが嬉しかった。他に今まで付き合ってきた人は全員目を変えて俺を一人の男としてではなく金を持っている男としか見てこなかった。しかし咲はそんな目で俺を見ず、ただ俺個人を見てくれた。


俺はその一年で咲にしてやれる事を出来る範囲でしてきたと思う。当然その中には俺が昂って肌を重ねると言う行為もあった。しかし咲は笑顔で俺のそんな行為も受け止めてくれた。俺はまたそれが嬉しく更に咲を愛した。


しかしその日々も突然終わりを告げた。


「・・・ん?何考えてるの?」


「いや・・・『あの時』の事を思い出して、な・・・」


「あっ・・・。あの時の事は・・・本当にゴメンなさい・・・」


「・・・いや、咲を攻めているわけじゃないんだがな。それにな、その事については既にお前からもお前の親父さんからも謝罪は受けてるし・・・」


「うん・・・。それでもあの時の事は・・・。お母さんがまさかあんな事言うなんて・・・」


「・・・でも本当に酷いのは俺だな・・・。お前を俺の一時的な感情で一方的に切り捨てたんだし・・・」


「ち、ちがう、よ・・・。確かに急に別れた時は悲しかったけど・・・それでも大本の原因はうちのお母さんですし・・・」


「それでも、だよ・・・。お前の親父さんとした約束も結局直ぐに反故にしてしまったわけだしな・・・」


そう『あの時』とは一年前。俺が始めて咲の家に招かれた時の事だ。俺はそこそこ洒落た、でも落ち着きのある服を着て咲の家を訪れた。家に入ると居間に通されそこで咲の両親が座って待っていたので名前を名乗り、一年前から咲と交際している旨を告げた。


咲のお父さんはあまり細かく交際については聞かず「娘を泣かせるような事をしない限り、私からは何も言う事はありません」と言って下さった。それに少し驚いたが、直ぐに何時も通りに戻り「絶対にそのようなことが無いと誓います」と返した。


すると笑顔になり「娘をよろしく頼むよ」とだけ言い口を閉ざした。しかし顔は俺が来た時と違い笑みを携えていた。


しかし母親は違った。俺の名前を聞いた瞬間今までと態度を180度変えた。だって名前を聞いた瞬間の第一声が


「あの来栖財閥の御曹司の名前じゃない!?咲、よくこんな良い人捕まえたね!!絶対にこの人を離しちゃいけないよ!!」だ。


それを聞いた瞬間「ああ・・・。この親も今までのあいつ等(元彼女達)と同じか・・・」と思い一気に俺の気分が悪くなった。


そして俺は直ぐに咲の家を出た。咲と咲のお父さんが何か言っていたが俺には何も聞こえなかった。その後1週間程俺は咲には会わなかった。電話してきてもメールが来ても無視を決め込んだ。


咲には俺から家の合鍵を渡していたが家を訪れてもチェーンが掛けてある為に家には入れない。そして咲の家を訪れてから2週間後、俺は咲と俺から一方的な別れを切り出し、返答も聞かぬまま咲と別れた。


別れて最初の2ヶ月位までは咲も俺の家にもう一度付き合おうよと言いに訪れていた。しかしそれも俺が全て無視を決め込むと来なくなった。やがて連絡も取れなくなり俺と咲の繋がりが徐々に無くなっていた。


そして俺の中では咲との事は良い思い出に昇華していた・・・。なのに、何故今のタイミングでまた咲が俺の前に現れたんだ?・・・彼女を一方的に切った酷い元彼の前に。


「・・・なんでここにきたんだ?」


「だから~。彼女が彼氏の家に「そう言う事を言ってるんじゃねーよ」・・・」


「お前も分かってるんだろ?俺とお前はもう『終わったんだ』。なのに、何故また俺の前に現れたんだ?」


「・・・・・・」


「・・・答えろよ、咲!」


我慢できずに大きな声を出して咲を問い詰める。そして咲は一度眼を閉じた後、眼を開き俺の眼を見ながら告げた。


「・・・また、瞬夜さんともう一度付き合いたかったから」


「・・・は?」


こいつは今何て言った?付き合う?誰がだ?俺と咲がか?


「お、おい・・・」


「冗談でも何でもありませんよ。私はもう一度瞬夜さんと付き合いたいから、瞬夜さんの家に来ました」


「な、何でだよ・・・。お前とはもう一年前に「確かに、一度私と瞬夜さんの関係は終わりました」な、なら分かってるだろう!?それにお前にだって付き合ってる彼氏くらい」


「いませんよ」


「なっ!?」


「私は・・・あの日、瞬夜さんに別れを告げられて以来、一度も誰とも交際していません。確かに他に大学の同級生や先輩、サークルの後輩からも告白されました。でも」


そこで咲は一度言葉を切り俺に近づきそして、


「私は、来栖瞬夜さん以外を愛する気は毛頭ありません」


俺に抱きつきそう言った。


「私は、貴方の事が今でも大好きです。愛しています・・・」


「咲・・・」


咲は此方を向き瞳を潤ませながら言った。


「・・・今瞬夜さんにお付き合いしている方が居るとしても、私は瞬夜さんの事を、瞬夜さんだけを愛しています。例え貴方の中で私が一番じゃなくても、私は貴方を愛しています。・・・それだけ知っておいて欲しかったんです」


そう言って咲は俺から離れようとする。だから俺は、


「えっ・・・!」


「・・・自分の心に、嘘を吐くのはもうやめにするよ・・・」


咲を俺の胸の中に引き寄せ、先ほどとは違い今度は俺から咲を抱きしめる。咲は今の状態が少し理解できないようだ。


「しゅん、やさん・・・?」


「俺は・・・あの日から何人もの女性と付き合った。無論、その中には肌を重ねた人も居た」


「・・・・・」


俺の独白を咲は無言で聞いている。しかし気分は良くないだろう。自分の好きな人が何人もの人と付き合い、あまつさえ肌まで重ねたと言うのだから。


「・・・でも、誰とも長続きしなかった。皆俺の名前を知ると目の色を変えたからだ」


「瞬夜さん・・・」


「でも、それだけが理由じゃなかったんだ」


「えっ?」


そう、大部分は目の色を変えたからだ。しかし他にも要素はあったのだ。


「・・・どうしても、付き合った相手皆、お前(咲)と重ねちまうんだよ・・・」


「それって・・・」


咲の瞳がさっき以上に潤んできている。しかし俺はそれを気にせずに話を進める。


「・・・お前は、俺が唯一自分から告白した相手だ・・・。そして今までで一番楽しい時間を一緒に過ごしたパートナーだ・・・。でも、それじゃダメだと・・・、重ねるのは相手にも咲にも失礼だと思い出来るだけ咲との事を忘れるように努力した」


そこで俺は一度話しを切り、瞳の涙が殆ど溢れかけている咲を見て、人差し指で涙を拭ってやる。そして再び口を開く。


「でも無理だったよ・・・。どうしても咲の事が頭に浮かんだ。こんな時は咲はこうした。こうしたら咲は喜んでくれた。誰と付き合っていても全て咲が基準になっていた」


「うん・・・うん・・・!」


「だから・・・」


俺は咲の眼を真正面から見据え咲も涙を流しながら、しかし眼を逸らさず此方を見つめ返してくれる。


「こんな・・・自分の身勝手な思いで、一度咲を捨てた男と・・・再び付き合ってもらえますか?」


俺は今まで偽ってきた自分の心を素直に咲に解き放った。咲は俺を見て、


「はい・・・喜んで・・・!」


涙の残る、しかし今まで見た中で一番綺麗な笑顔で返事をしてくれた。


クリスマス・イブ。キリストの生誕日である12月25日の前の日である24日を一般的に指す。教会では礼拝などを行う日。今の日本では恋人や親族などと過ごす事が多い日。


その日、心の底から愛し合った二人が、一度は道を違ったが、再び同じ道を寄り添いあいながら進んでいく。


「今度は・・・絶対に離しませんよ?瞬夜さん♪」


「ああ・・・。俺も、絶対にこの手を離さないよ、咲・・・」


二人を祝福するように、星も瞬きを増していく・・・。















                  ~~おまけ~~



「そう言えば咲」


「うん?何ですか、瞬夜さん?」


「今日、ちゃんと両親に言ってきたんだよな?」


「・・・・・」


「咲?」


「え~と・・・。実は友達の所に泊まるって言っただけで・・・」


「・・・はぁ~。・・・今すぐ電話して」


「う、うん・・・。・・・あ、お父さん?実はね、今日の泊まりなんだけどね・・・その実は瞬夜さんの家に来てるんだ。・・・うん、うん・・・。分かってる、でも瞬夜さんともよりを戻したし・・・うん・・・へっ?ええ~と、うんそう、だけど・・・え!?・・わ、分かった」


「ん?どうしたんだ?やっぱり俺のところじゃダメなのか?」


「瞬夜さん・・・。お父さんが電話で話したいことがあるって」


「へ?」


「はい」


「お、おう・・・。お電話代わりました来栖です」


『おお・・・。本当に来栖君の所だったのか・・・。久しぶりだね、来栖君』


「はい・・・。あの、その節はとんだご迷惑をおかけいたしました。誠に申し訳ありません」


『いやいや・・・。あれはうちの家内が悪いからね・・・』


「いえ、それもあるんですが・・・」


『うん?他に何かあったかな?』


「はい・・・。お父様と約束した咲を泣かさないと言う約束を守れなかった事をまだ謝罪できていなかったですから・・・」


『ああ・・・そうだったね。しかし、その謝罪はまた今度うちに来た時にしてもらって構わないかな?』


「はい、大丈夫です。・・・所で話したいこととは何でしょうか?」


『いや、何、また咲の事を頼むよと言う事と・・・』


「それと・・・?」


『今日は咲はそちらに泊まってもらうけど・・・久しぶりだからってそんなにハッスルしてはあげないであげてくれよ?』


「なっ・・!!///」


『ああ・・・それとキチンと避妊はしてくれよ?君もまだ24歳だし咲も20歳だ。今子供が出来たら大変だろうからね、そう言う事はキチンとしておかないといけないよ?じゃあまた今度、うちに来てくれたまえ義息子よ』


「ちょっ!お、お父さん!?・・・ダメだ、切られた」


「瞬夜さん、お父さんは何と?」


「ああ~・・・。えっと、そのな///・・・する時は、キチンと避妊しろよって・・・」


「お、お父さん・・・////


「取り合えず、晩御飯食べようぜ!//」


「う、うん!//腕によりをかけて作るね♪//」


「おう・・・久しぶりだから。すげえ楽しみだ♪」


「ふふ・・昔より腕も上がってるから期待してくれて構わないよ?」





その夜、その部屋から明かりが消えることは無かった。そしてその部屋から楽しそうな声が消えることも無かった。しかし、何をしていたかは、皆様のご想像にお任せいたします。

お楽しみいただけましたか?

次の作品は、今日の12時。次の小説は、明日に投稿します。

では今日の12時に投稿する物は・・・?

自分の投稿作品を把握している方は分かるかも?


では次の作品もお楽しみに♪

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