第四十七話 打上
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翌日もまた朝からキース達は別行動でスタートした。
元々初日からすんなりと見付けられるとも思っておらず、またキース達が得た情報などもあり、この先も長期戦を睨み、じっくりと探して行くことでチーム内の意見は一致している。
エレノアとビエコフの姉弟二人は、新たに装着をしたリボルビング・グレネードランチャーの調整と昨日購入した塗装チップを使用しての塗り替えをマリーアイゼンに施すべく、街中にある調整場へと出掛けて行った。
外装の塗り替えに関してはキースにも話を持ち掛けられたのだが、いくらデザインのみで性能に支障を来たさないとは言え、センサー職の機体が大きく錆付いていたら、その外観イメージから情報の精度や真偽に疑念が生じる気がした為、幾分心が揺れたものの丁重に辞退した。
エレノア達二人は諸々の仕事を終えたのちに、午後から合流する予定となり、二日目となる街の散策はキースとグレン、それにディートリンデの三人で行うこととなった。
昨日に引き続き、空は青く晴れ渡り、予報によると長かった冬もようやく終わりを迎え、日中は春の息吹を感じられる。
気温こそまだ低いものの、眩しいばかりの太陽の恩恵を受けて、日向となる場所を歩いていると、ぽかぽかとした暖かな陽気に誘われる。
この先は段々と気温も上がっていき、未だ厳冬の名残である堆く降り積もった残雪を溶かして、開始の時と同じ緑豊かな大地へとフィールドが移り変わることだろう。
キース達三人は特に会話を交わすことも無く、陽の当たる歩道を当ても無く、のんびりと歩いている。
歩道の端に積まれた雪の山からは溶け出した水が車道へと溢れ出し、その傍には子供が作ったのであろう、この陽気で崩れて歪な形をした雪だるまがポツンと置かれている。
「こんなものまで再現されているのか……」
キースはその細やかな配慮に嘆息しながらも足を止め、作品を興味深げに眺めている。
「あら、随分と可愛いものがあるのね」
足を止めたキースに気が付き、ディートリンデが隣りへとやって来た。
「初めて気が付いたんですけど、意外とあちこちにこう言った小物が、配置されてたりするんですかね」
「そうかも知れないわね」
今まで街の散策などそれ程重点的には行って来ておらず、大抵は武器屋などと言ったARPS関連の店を回って切り上げていた為に気が付かず、多くの作品を見逃して来たのかも知れない。
暫く二人で雪だるまを眺めながら作品の感想などを話していると、誰かと連絡を取っているのか、少し離れた場所からグレンの話し声が聞こえてくる。
話が済んだ頃を見計らい、気になったキースが声を掛けた。
「今の誰からだったんですか?」
「ヴァンからだ。街をうろついているなら、合流したいとさ」
今日も朝からいつも通りにログインしていたヴァンは、他のメンバー達が休みを取っている為、一人あてもなく街を彷徨っていた。
「向こうも暇を持て余しているのね」
「そうらしい。この先にある公園広場で待ち合わせた」
ディートリンデの物言いに、グレンは少し苦笑をしつつ、先導するように歩き始めた。
待ち合わせとなった公園広場は未だあちこちに雪が残っており、ちょうど冬から初春への移り変わりを感じられる場所であった。
春先には色とりどりの花が咲き乱れ、その中を歩くのであろう小路も今は残雪が覆う中、気の早い草花が春の訪れを敏感に感じて顔を出し始めている。
三人は小路を園内の中心部へと向かって歩いていると、中央にある円形の花壇に向けられて配置されたベンチに、待ち合わせ相手であるヴァンの姿を見付けた。
あと二月もすれば、満開の花々が咲き乱れる様子が見られる特等席になろうベンチに座り、背を曲げてやや屈んだ姿勢を取っている。
頭上から降り注ぐ春の日差しを遮るものはなく、足元に溜まる雪解け水に反射され、陽気とは裏腹に眩しいばかりの光に苛まれているようだ。
「おはよう。随分と早くからログインしているんだな」
キースが声を掛けられると、ヴァンは顔を上げてベンチから立ち上がり、キース達の方へと向かって歩いて来た。
「はよーっす。いやー、ここん所ずっと朝一から居たから、ついな」
「それで入ったは良いけど、することが無いと」
「まあな。で、お前達は何してるんだ?」
ヴァンの問い掛けに対し、キース達は昨日からの顛末を説明した。
「なるほどな」
「ヴァンは見付けたことあるか?」
「まだ無いな。ブラックマーケット自体、紹介を受けたレニンスキの一ヵ所しか知らん」
一瞬、僅かな切っ掛けでも得られるかとした淡い期待が、あっさりと切り捨てられたことで一気に霧散する。
「やっぱり、そう簡単には見付からないようになっているか……」
「そうでも無いぞ」
ヴァンの言葉に、キース達三人の視線が集まる。
「あくまで噂を元に推測した爺さんの意見だけどな。高額所持者かギルドランク高位者になれば、発見の可能性が高くなるんじゃないかって話だぞ」
「金と地位ってことか……」
「だから条件さえ満たせば、向こうから声を掛けて来るんじゃないかと言ってたな」
ブラックマーケットも商売である以上、上客となるであろう条件を満たしたプレイヤーとは関係を持ちたいだろう。となれば、条件を満たした上でそれらしき場所を訪れれば、労せずとも向こうから声を掛けて来ることも十分に考えられる。
「あなたたちは既に探索を終えたのかと思ってたけど、それなら納得だわ」
I.C.O.M.S.に於ける情報収集を担っているのはヴァンとシャバックの二人である。その一人が存在を知っているにも拘らず、発見をしてもいない内から暇を持て余すなど、考えられないことである。
「だとすると、金欠の今探しても、見付けられる可能性は低いか」
つい最近新しい機体とライフル銃を購入しており、またクエストの報酬もあと数日経たないと入金されない為、現状ではキース達の懐は非常に寒いものとなっている。
「でも三本線なら、地位の方の条件は満たしているかも知れないわよ」
今現在、判明しているギルドランク上位のチームは一つ星であるので、ランクが一つ下がる三本線なら条件を満たしている可能性は十分考えられる。
「最初に言ったが、あくまで爺さんの推測だからな。それらしい理由も立つが、確証は一切無いぞ」
とは言え、現状手掛かりすら得られておらず、このまま闇雲に探すよりも試す価値は十分あるだろう。
「おっと、忘れる所だった。今日の夕方空いてるか? ダリルが打ち上げをしようとうるさいんだが」
すっかりと忘れていたらしく、ヴァンは慌てた様子で聞いて来た。
「エレノア達も夕方には終わると思うし、大丈夫だぞ」
「そうか。場所はクルツが抑えてくれるらしいから、後で連絡が行くと思う」
ヴァンは無事に約束を取り付けられ、少しホッとした様子を見せている。このまま忘れていたら、後でどんな目に遭わされるか知れたものじゃない。
一つのクエストを通じて、すっかりと打解けた四人は、その後も今まで過ごして来た話などをしながら街を散策した。
その後、特にこれといった成果も上がらず、約束の時刻近くになった為、四人は散策を切り上げた。
キース達はエレノア達と合流を果たしたのちに、打ち上げ会場となる店へと足を運ぶと、案内された個室には既にクルツ達の姿があった。
「おっ、来たな。空いてる席に座ってくれ」
入室したキース達へと、入口正面に座っていたダリルが声を掛けて来た。
部屋中央には大きな円卓が置かれ、回りに配された席にはクルツ達I.C.O.M.S.のメンバーが散らばって座っていた。
「すいません。お待たせしました」
キース達は挨拶を交わしながら、銘々が空いている席へと着いた。
「いえいえ、まだ約束の時間ではありませんし、平気ですよ」
対面に座っているクルツは、にこやかに答える。
「あーっ、おじーちゃんの服が変わってるー!!」
「良いじゃろ」
シャバックの服は、先日まで着ていたオレンジのパイロットスーツでは無く、一人だけラフなカーゴパンツに温かそうなニットへと変わっていた。
「いーなー」
「あとで買った店を紹介してやろう」
エレノアの羨ましげな視線を受け、シャバックが申し出ると、エレノアの表情が満面の笑みへと一転する。
「やったー!! エリーちゃんも一緒に行こうねー」
「ええ、そうね。長老さん、ありがとうございます」
そんな話で盛り上がっていると、飲み物や食事が続々と運ばれて来る。
「皆さん、飲み物は行き渡りましたか?」
クルツはグラスを手にして立ち上がると、一同を見回した。
「それではクエストの成功と、両チームの今後の躍進を願いまして、乾杯!!」
「「「「乾杯!!」」」」
あちこちでグラスの触れ合う音が鳴り続く。
キース達はテーブルに広がる食事を摘まみながら、酒も無い中、開始当初から盛り上がっていた。
今回のクエスト中の出来事。今までにやらかした様々な失敗談。それぞれが得ている情報交換と、話題の種は尽きない。
そんな中、キースはシャバックの恰好を見ながら、隣に座るグレンへと話掛けた。
「そう言えば、今日からアップデートが入ったんでしたね」
ゲーム内の時間では、開始からそろそろ一年が経とうとしている。
それに伴い、製作側よりいくつかのアップデートが導入された。シャバックが新たに購入した服装も、それに関連したものである。
「でも、内容を知って驚きましたよ」
キースがそう言うと、グレンも一緒になって苦笑いをする。
「俺も、まさかと思ったからな」
今回行われたアップデートの中には事前情報も無く、一つの大きな改正が導入されたことで、プレイヤー達の間では大きな騒ぎとなっている。
一つ目はクエスト受注条件の緩和である。
現在の所、ギルドランク三本線以上のプレイヤーにのみ、クエストが受けられる条件と設定されている。
しかし、この条件だと新たに加入をした低ランクのメンバーが居るチームは条件から外れることとなる。
ゲーム内では一年を経過することで、少なくない数のチームの統廃合が起こっており、チーム内でのランクのバラつきも発生している。
また第二陣以降もちらほらと現れている新規参入者達を積極的に迎え入れているチームも出て来ており、少なからず問題となってきたため、先頃よりプレイヤー達から条件変更の打診が相次いだ。
これを受けて製作側が協議をした結果、低ランク者や新規参入者への排除の動きなどを考慮して、チーム人数の三分の二が条件を満たしていれば良いと条件が緩和されることになった。
次に早速シャバックが恩恵を受けていた、新スキル【被服】が導入された。
このゲームでは世界観に合わせて製作側より用意されていた衣服は、パイロットスーツやフライトジャケット、ツナギなどと言った、どれも軍服や作業着系統の服装しか存在しなかった。
しかし、戦闘時はともかく通常時にはもっと普通の服を着たいとの要望が多数寄せられ、ならばとプレイヤー達が自由に製作出来るスキルを導入することになった。
もっとも、この背景にはただでさえ数の少ない女性プレイヤーからの声に対する配慮と、ゲーム内に出店している企業から広告などで使用する際に、あまりにもイメージを損なうような見栄えに対して問題となっていたことにも起因する。
爽やかでお洒落なイメージで売っている企業の店内に、迷彩色の軍服を着た客で席が埋められている映像を見ようものなら、イメージダウンは免れないだろう。特に出店している多くの企業が飲食系なことも大きな要因である。
自由な製作することが可能とは言え、倫理的にも無秩序を避け、当初の世界観保護の為に一つの規制が掛けられた。服の形状によって、操縦時に能力値が減少するペナルティーが科せられる。
ARPSは操縦の際、体の動きをトレースする為に手足を拘束する必要がある。その為、身体の動きを阻害する形状やリボンや貴金属と言った装飾が多いもの、その反対に肌を晒すものなど、操縦や戦闘に支障を来たす要素を満たした服装は全てペナルティーの対象となる。
それとこれも苦情が相次いだ、街中での移動手段も拡大された。
これは未だ多くのプレイヤー達が、日常の移動に際し公共の交通手段を利用していることもあり、それらの増強を図ることになった。
新たに導入をされるものは二つ。
一つは路面電車である。二両編成と言う小型のものながら運行間隔を狭めることで、今までの路線バスよりも所要時間を短縮出来る。路線は幹線道路のみとなるが、全ての街で今後運行されることとなる。
もう一つが戦闘での使用に向かない一般車両の導入である。
今まで購入が可能となる車両は、いずれも軍によって使用されているものだけで、購入方法にしても店売りなどはしておらず、多くのプレイヤー達にとって簡単には買えないものであった。
そこで数こそ明確にはされなかったが新たに導入された車両は、車種によっては街中の店でも取り扱うなど購入方法の改善も同時に行われている。
そして、導入直後から物議を醸し、大きな話題となっているのが問題の猟兵プレイの公認である。
以前より運営側への問い合わせがあった為、調べを進めていた所、確かにARPSを所持せずに生身の身体で戦闘を行っているプレイヤーの存在が確認された。その数はシュネイック共和国で三名、ラサーラ共同連合で二名、そしてニュートリアス連邦共和国で六名と、総勢十一名にも及んだ。
もっとも、猟兵に挑んだプレイヤーは延べで三桁にも達する人数を数え、この大半はグレンと同様、死亡によって機体を失った者達である。
しかし、ゲームシステムの穴を突くようなプレイスタイルには、当然ながら装備やシステムのサポート、戦闘など各種のバランス調整と言った類のものは端から存在しない。更に機体を介さず生身の身体を駆使することは、個人のプレーヤースキルがそのまま戦闘力に大きく反映されることとなる。
その為、ロマンや好奇心などから手を出す数こそ多かったものの、大半のプレイヤー達はプレイスタイルを確立するまで至らずに断念してしまった。
また所属するチームの意向も大きい。そもそも猟兵プレイとは、当初完全にネタやロマン職扱いであった。個々人の能力に大きく依存することもあり、戦力として計算することが難しく、成長後の姿も全くの未知数。そのようなお荷物な存在を二つしかないバックアップ枠を使ってまで、わざわざ抱えるチームは非常に少なかったのも理由の一端である。
当初、製作側ではそのようなプレイスタイルの確立を想定しておらず、また本作の根幹とも言えるロボット同士の対戦と言う観点からも議論は紛糾したが、最終的にはゲームが破壊されないならば、そのような異分子が多少混じっても面白いだろうと、黙認と言う形で公式に存在を認めることになった。
但し、今まで同様、開始時に於ける武器や装備の支援などと言った、公式からのサポートは一切行われない。更に、猟兵の為のバランス調整なども、この先一切行われないことも共に明示された。
その為、今回の件で新たに猟兵プレイを始めたいと言うプレイヤー達は、今までと同様にプレイスタイルを確立するまで非常に困難な道程が待っている。製作側としても、システム外の手段を用いられていることから、文句があるなら最初からロボットに乗ってプレイしてくれと言う思いがある。
とは言え、その存在を公式に認めたことで、猟兵用の武器や装備を導入して行くことが新たに決まった。但し、これに関しても街中で手軽に入手出来ず、通常の販売ルートとは異なる入手方法から探って行かねばならない。
更に、前述で紹介した【被服】スキルも関わってくる。
今まではボディアーマーと言った防護服などは需要も無く、ゲーム内に於いて存在しなかったが、新たな職種の誕生によって猟兵用の装備を製作する者も現れて来るだろう。
その他にも公認に伴い、ギルドへの猟兵登録が新たに導入されて、いくつかの恩恵を受けられるようになった。
今まではARPSを所持していないことから、バックアップメンバーとしての登録しか出来なかったが、これからはパイロット枠にも登録が可能となった。これにより、猟兵が所属をしていても、メカニックの二名体勢が取れるようになる。
それとギルドへの猟兵登録者に限り、死亡時にAIが消去されなくなった。これは猟兵と言うプレイスタイル上、プレイヤーとAIとの距離が離れている場合が多いことから、条件を満たすことが困難と判断された為だ。もっとも猟兵プレイの場合、戦闘はプレイヤースキルに依存されることも要因として挙げられる。
そして最後に猟兵プレイヤー達にとって一番大きな改正となるのが、戦闘エリア内でのPKによる罰則の廃止だ。
戦場に於いて、生身で出歩くと言うことは死亡する確率が非常に高い行為である。故意や事故などの如何に関わらず、直接的な攻撃だけでなく、副次効果と言った間接的な要因で死亡に至る可能性は十分ある。その為、罰則を適用する線引きが非常に困難となり、今回の決定に至った。
これにより、今後猟兵プレイヤーは国内に於いてもPKの危険に晒されるようになる。
「いやー、まさか、お前以外にも猟兵をやっている物好きが居るとは驚いたぞ」
半ば、呆れた様子でダリルはグレンへと声を掛けた。
「俺が一番驚いてますよ」
ダリルの言葉を受け、グレンも今回のアップデートの内容を見た時の衝撃を思い出す。
グレン本人としては、猟兵プレイは切羽詰まった状態で他の手段が無い中、仕方なく始めたと言う思いが強い。そのことから、こんな物好きなことをやっているプレイヤーは自分位だろうと、どこかで達観していた。
ところが、公式の発表を見ると三ヵ国総計で十一名。ここシュネイックだけ見ても、グレンを除いて他に二名もの同業者の存在を知ることとなった。
「でも、これからはもっと増えるかものう」
「えー、そうなのー?」
ARPSを駆ることに喜びを見出しているエレノアにとって、わざわざ自ら機体を降りると言う選択に驚いている。
「今日見た限りでも、早速情報や装備を集めようとしておるのが、ちらほら街中で見掛けたからの」
「だから、街が慌ただしかったのね」
ディートリンデは納得したような表情を浮かべた。昨日と比べると、今日の街はどこかざわついた印象を感じていたのだ。
「一度、グレンさん以外の猟兵プレイヤーにも会ってみたいですね」
キースが話を振ると、グレンも頷いた。
「そりゃ、俺もだ。色々と情報交換もしてみたいしな」
グレンを含めて、全ての猟兵達は今まで情報を秘匿して来た。それはゲーム内に於いて一年もの長きに渡って、存在が公にならなかったことからも分かるだろう。
その為、グレンの技能は全て独自に身に付けたものだけである。しかし、技術や戦術と言ったものは、他者との交流や互いに競い合うことで初めて磨かれ、新たなものが生み出されていく。
特に先日のクエストでの対戦を経て、グレンは今装備や技術の強化を熱望している。
「それでは私達も見掛けたら、グレン君に連絡を入れますね」
「是非、お願いしますっ」
クルツの心遣いを、グレンは有り難く受ける。
「そういや、お前は新しい装備はもう試したか?」
ダリルは食べることに忙しそうなエレノアに声を掛けた。
手にしていた皿に盛られた最後の一口を食べ終えると、エレノアはニヤリとした笑みを浮かべながら口を開いた。
「へっへっへ、あのねー、ちょっと試したけど凄かったよー」
昼間、エレノアはマリーアイゼンを街中にある調整場へと持ち込んでいた。そこで外装の塗り替えを行うと共に、新装備となるリボルビング・グレネードランチャーの稼働調整と試射も同時に行っていた。
弾数こそ少なく、使い所が難しい装備ではあるものの、試射での威力などは十二分に満足いく数値を叩き出しており、実戦での投入が非常に楽しみである。
特にエレノアなどは新しい玩具を与えられた子供の如く、早く使いたくてうずうずとした気持ちを抱えていた。
「くぅーっ、羨ましいぜっ。今度会った時、使ってる所を見せてくれな」
「うん、いいよー」
この手のゲームではレア装備を入手した際、仲間内でお披露目をする機会も多々ある。
エレノア自身もその思いに共感することから、ダリルの申し出を快く了承した。
「キース君達は、この先どう言う予定ですか?」
クルツに尋ねられると、キースは手にしていたお茶で喉を潤してから、口を開いた。
「俺達は明日にでも街を出ようと思ってます」
「そうですか。それはちょっと寂しいですね」
クルツ達はプレイ時間に制約がある為、移動に際してもあまり自由が効かない。
「一応チェロニツィ経由で、レニンスキに戻る予定です」
大森林地帯を左回りに周回する形で、チェロニツィからエスクドロフを回って、拠点のあるレニンスキへと戻るつもりである。
「私達は反対のソルコラヴリからカルチェフに行く予定なので、ここでお別れですね」
「俺達はレニンスキを拠点を置いてますので、来た際には是非連絡を下さい」
「私達もレニンスキに戻る予定にしてますので、またその時にお会いしましょう」
二人はレニンスキでの再会を約束して、握手を交わした。
クエストの成功も手伝って、親睦を深めた両チームの打ち上げは、結局夜更けまで続くことになった。
初めてとなる他チームとの、短くも濃い共闘の日々はここで一旦幕を閉じた。




