第十九話 加入
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戦闘終了後に四人は集まると、コーヒーで休息を取る事にした。
時刻はまだ午前二時を回ったばかりではあったが、戦闘による高揚ですっかりと眠気は飛んでしまっている。
そして、今回の戦闘で二人目となる上位スキル保持者が誕生した。
「キースさん、おめでとうございます」
「やったな」
「私より遅れたが、これからも日々精進したまえよー」
三者三様で祝福してくれて、エレノアに至っては、キースの背中を何度も嬉しそうに叩いている。
今回発見したのは【スキャン】Lv25で発生する【ハッキング】で、これは敵の機体に対し、様々な電子攻撃を仕掛けられるというものだ。
「それって、ひょっとしてチート?」
キースの説明を聞き、真っ先にエレノアが反応した。
「いや、そんなに便利じゃないみたいだ。相手のシステムを乗っ取るとか効果が高いものは、成功率が低く、時間も掛かり、ハッキング中はかなりの処理能力を要求されるから、現状の機体だと性能が落ちて移動すら困難になるみたいだ。戦闘の最中に使うのはかなり難しいかな。それに相手とのセンサー系スキルのLv差、機体の出力と性能差、戦場の状況と色々な要因によっても効果や成功率が左右されるから、現状だとあまり役に立つとは言い難いかな」
スキルの説明文やアデリナからの話を聞くと、無双が出来る程のものでは全く無い、というのがキースの結論だ。
「今は無理でも育てていけば、やれる事は多そうだから面白そうなスキルだな」
グレンには既に色々な使い方が思い付いているのか、何かを企む様な笑みを浮かべている。
「まあ、ぼちぼちとやっていきますよ」
キース本人も現状は兎も角、将来性には高い期待を抱いている。
長く楽しめそうなスキルの獲得に、内心では色めき立っていた。
その後、一人を警戒に残して三人は、再び就寝に着いた。
辺り一面に立ち込めていた霧も、夜が明けるに従い晴れていく。
しかし流石に晴天とまではいかない様で、日が昇る時間になっても薄暗く、空はどんよりとした雲に覆われていた。
就寝後は襲撃にも遭わず、無事に朝を迎えた一行は、半日足らずの行程といえ期日最終日な事もあり、簡単な食事で済ませると、急いでペトロヴェートへと向かった。
雨が止んだとはいえ、多量の水分を含んだ土の路面は酷く泥濘、度々ハンドルを取られ、思う様に速度を上げる事も出来ず、非常に神経を使う運転となった。
130km程の道程に三時間半もの時間を要したが、昼を迎える前に何とかペトロヴェートへと到着する事が出来た。
ペトロヴェートの街は、二重構造で出来た街である。
主要な拠点は旧市街と呼ばれる、中世欧州風な外観の街並みで構成された区画に配置されている。
薄い橙色で統一された屋根瓦に石や煉瓦の壁で造られた建物は、どれも高さが三階程度しか無く、石畳と相まって非常に雰囲気のある美しい街に仕上がっている。
その旧市街を取り囲む形で、現代建築といえるビル等の建物が建てられた新市街が存在している。
早速街の中へと入ろうとすると、道路に二人の男性が出て来て、街入口で停められた。
「あの、何か?」
ビエコフが窓を開け、道路を封鎖した人物へと声を掛ける。
「悪いが、一旦そこの広場で泥を落としてくれ。旧市街は石畳になっていて、保全のためにその様な汚れた状態の車両は停めているんだ」
現状トレーラーは、雨の中進んで来た所為でタイヤは泥塗れ。車体の至る所にも撥ねた泥が付き、載っているARPSやサイドカーもかなり汚れている。
「まあ、この外観だと言われてもしゃーないわな」
グレンも自嘲気味に賛同する。
男の先導を受け、トレーラーを広場へと入れる。
そこには多くの整備所の受付が並び、大勢の客引きが声を上げている。
キース達は開始当初から運搬車両と拠点を持っていた為、殆ど関わりが無かった事も有り、物珍しそうに周りの喧騒を眺めていた。
その前を横切ると、奥の方の片隅にガソリンスタンドでよく見るタイプの洗車機が二台並んで設置してある。
「こいつに通すと洗ってくれる。ARPSも直立状態でなら洗えるぞ」
そう言うと男は洗車機に付いているパネルを操作しながら、使い方を説明してくれた。
洗車機は高さが10m近くある巨大な物で、優にARPSを内部に飲み込める大きさであった。その内部は三方から高圧の水を噴出して洗う構造で、ブラシなどは一切付いていない。
「普通のホースとかは無いですか?」
「それなら、こっちに一つだけだが有るぞ」
男はグレンを連れて、設置場所へと向かって歩いて行く。
流石にサイドカーを洗うには洗車機だと大きく、ARPSにも使用する為に水圧もかなり高いとあって、入れるとミラー等は簡単に壊れそうだ。
キース達はARPSを降ろすと、二台の洗車機を使用して一斉に泥を落とし始めた。
グレンも少し離れた場所でホースを使い、サイドカーを手洗いしている。
約三十分程掛け、全ての車両を洗い終えると、ようやく街の中へと入る事が許された。
左右に幾つものビルが立ち並ぶ幹線道路を走っていると、目の前に旧市街地との境界である外壁が見えて来た。
巨大な石を積んだ、高さ5mを越す壁が、視界の先までずっと続いている。
その入口である門は、以前は付いていたであろう扉は撤去され、今は常時開放した状態となっている。
門を潜り抜けると、幹線道路はアスファルトから石畳へと変わる。
走ると特有の音と振動が、車内にも僅かに伝わってくる。
左右の建物も石造りの外観に代わり、昼時という事もあって、屋根にある煙突からは幾つもの煙が立ち上っているのが見える。
周りの雰囲気が一変し、近代的な造作のARPSやトレーラーはかなり浮いた存在に感じる。
幹線道路を突き進んだ街の中心部は、大きな円形の広場となっていて、主要な建物は全てその周りに配置されている様だ。
広場を3/4周程回り、東側にあるギルドの地下駐車場へと入ると、早速配達物を持って受付へと向かう。
中世的な外観と合わせたのか、ペトロヴェートのギルドは内装もアール・デコ調で作られていた。
「ここのギルド、お洒落だねー」
「そうだな。細かい所もちゃんと配慮されているな」
キョロキョロと盛んに見回しているエレノアに釣られる形で、キースもつぶさに観察をする。
近代的な設備である照明や依頼用モニター等も、その外観は浮かない様、キチンとアール・デコ調に合わせた独自のデザインとなっていた。
その甲斐あってか、中はとても傭兵ギルドとは思えず、洒落たカフェの様な雰囲気を醸し出している。
四人は受付へ行き、配達物であるアタッシュケースを渡して受領確認を取る。
するとグレンが、二本線へとランクが上がった。
「おめでとー」
「おめでとうございます。これで皆ランクが並びましたね」
「ありがとな」
皆の祝福を受け、照れくさそうにグレンはカードを受け取った。
それと朗報がもう一つ、今回の報酬で目標としていた予備機の購入代金が貯まったのだ。
「これで何とか、最悪の状況には陥らなくなったな」
「そうですね。なるべくなら、その様な使用は避けたいですが」
「何にせよ、保険が出来るのは良い事だぞ」
三人は揃った様に視線を一人へと向ける。
「な、なによ……」
エレノアは皆の視線を受けると、一瞬たじろぐ様に後退った。
その後は新天地での恒例となる散策を行うも、ここペトロヴェートでも機体購入のアンロックに繋がる結果を得られなかった。
唯一、ヘッドセット式の無線を見付けたグレンだけが、満足そうな表情を見せている。
一行は区切りが良い事もあり、翌日の待ち合わせを決めると現実へと帰還した。
国光は現実へと戻ると、開始してからの習慣となっている、関連サイトの巡回をして情報の収集を図った。
「ほう、第二陣も結構な人数がいるんだな」
第一陣程ではないが、第二陣も一万規模での参加者がおり、明日はシュネイック共和国も開始の街であるレニンスキの広場には、大勢の人が集まるのだろう。
流石に今日はどこのサイトでも、メインは第二陣関連と同時に入るアップデートの話題で持ち切りだった。
第二陣は先行との差を考慮してか、開始時に優遇アイテムが渡されるらしく、どのサイトも賛否の意見で溢れている。
「まあ、多少は良いと思うけど。一体何を貰えるのかな?」
公式サイトによると、シュネイック共和国の場合は冬が近い事もあり、冬季装備を一式貰える様だ。ただ残念ながら開始前という事で、内容までは開示されてはいない。
「これって、冬季装備が必要って事だよな。俺達も雪が降る前に準備しないと拙いよな」
アップデートに関しては細かい修正が殆どで、大きな変更は所属国の移籍が可能となった事位だろうか。
今まで鋼鉄の新世界は、新規からの作り替え以外では所属国の変更は不可能だった。しかし開始したものの、様々な理由から国を変えたいとの声が多数上がり、今回条件付きでの導入となった様だ。
「俺達には関係ないか。それより冬季装備って、何がどれだけ必要なんだ……」
思い付く所では、ARPSの雪上移動用装備やアイカメラにも凍結を防止するものが必要だろう。
トレーラーにもスタッドレスタイヤなどの装備は、容易に想像する事が出来る。
「一番の問題は、ARPSを露出した状態で載せている事だよな」
現状トレーラーの荷台は単なる平台である。そこにフックを使い、ARPSを固定して運んでいる。
降雪時にこの状態だと、当然ARPSにも雪が積もり、最悪凍結の恐れも生まれてくる。そうなると、襲撃時には戦闘どころの話では無くなってしまう。
「その辺は後付け出来るものがあるだろうけど、折角予備機の貯金が出来たのに、出費が嵩むな……」
色々とサイトを巡ってみるも、流石にトレーラーの情報は少なく、冬季用装備の情報となると皆無といって良い程見かけない。
「しょうがないか。明日健と相談だな」
粗方の情報を得ると、電源を落とし、明日に備える事にした。
翌日、待ち合わせ場所であるペトロヴェートの中央広場へと行くと、驚く光景が目に飛び込んで来た。
何と、グレンがとても綺麗な女性と連れ立って、談笑していたのである。
ここはKY等と呼ばれぬ様、遠目から観察しようと、キースはそっと二人から離れる方向へと歩き出すが、僅かに遅かった様で気付いたグレンから声が掛かった。
「おい、どこに行くつもりだ……」
その口調からも、呆れた様子が伝わってくる。
「いや……、楽しげに話されていたので……」
見つかったのならしょうがないと諦め、グレン達の方へと向かって歩いていく。
隣にいる女性はグレンより少し低く、165cm位だろうか。肩に軽く掛かる程の長さの銀の髪が日の光を浴びて、風に揺れる度にキラキラと輝いている。瞳も一見黒く見えるが、時折日に当たると濃い紫色へと変わる。すらっとした細身の体格は、エレノアとは違い出る所はちゃんと出ている。年齢もキースより少し上だろうか、大人びた印象で二十二、三歳位に思える。
「あの、こちらの女性は……」
「二人が来たら、ちゃんと紹介する。相談したい事もあるしな」
そういうと、三人となってエレノア達の到着を待つ。
残りの二人は、待ち合わせの時刻ギリギリとなって現れた。
「グレンさんが、彼女連れて来てる!!」
キースとは違い、一目見るなりエレノアは一目散に走り寄り、開口一番叫んだ。
その後を遅れて来たビエコフも、女性の姿を見るなり驚いている様子だ。
「あー、ちゃんと説明するから、お前らちょっと待て」
「私からもお話をしたいので、どこか落ち付ける場所へ行きましょうか」
女性からの誘いを受け、エレノアも少し落ち着きを見せる。
一行は広場に隣接するオープンカフェへと移動すると各自注文を済ませ、頼んだ品が到着するまでの間に、お互いの自己紹介を済ませる。
「私の名前はディートリンデ。呼び辛いと思うから、好きに呼んでね」
女性の名前を聞いた後、しばらく雑談に興じ、各自の頼んだ飲み物が揃った所で本題へと入っていく。
「先ず最初に誤解を解いておくが、こいつは彼女では無い。何度か別のゲーム内で連んだ事のある、ただの腐れ縁だ」
開始早々に、グレンがキース達三人へと説明をしだした。
「えー、ほんとにー」
エレノアは目を細め、疑いの眼差しをグレンへと送っている。
「それに関しては、本当よ」
一連のやり取りが可笑しかったらしく、ディートリンデはくすくすと手を当てて笑いながらも、関係性を否定した。
「そっかー」
「何で俺の話は……」
ディートリンデとの対応の違いに、グレンは恨みがましい視線を送るのを、キースとビエコフの二人で慰めている。
「それで、何でグレンさんはディートリンデさんを連れて来たの?」
ようやくエレノアが、本題とも言える疑問を口にした。
「それ何だが、昨日連絡があってな。こいつ、今日『亡命』して来たんだわ」
「亡命って、今日アップデートされた奴ですかっ」
キースが確認すると、グレンは頷いた。
亡命とは、本日第二陣と同時にアップデートされた、所属国を変更する手段の名称である。
安易な変更を防ぐ為に、その条件は厳しく設定されいる。先ず所持金半減にギルドランクが二ランク降格。一本線の場合は無印への降格及び昇格条件となる基準ポイントの加算。最低ランクの無印の場合も降下分相当の昇格基準ポイントが加算される。
所属国で得た武器や機体のアンロック等の個人実績も全てリセットされる。他国への機体持ち出しは許可されない為に、所持機は破棄。代わりに所属国の初期支給機が与えられる。唯一、所持スキルとAIのみは、ペナルティー無く持ち出しが可能となる。
尚、開始地点に関しては、通常の開始の街以外にも首都を除き、好きな街を選択する事が可能となる。この辺は様々な移籍理由を考慮した、運営側の配慮である。
「確か、色々とペナルティがあった筈ですが……」
ビエコフが心配げな視線を向けると、ディートリンデは僅かに微笑みを見せた。
「その辺の事情をこれからお話しますね」
「えっ、良いんですか」
「ああ、ちゃんと聞いて貰わないと、話にならないからな」
グレンの物言いに三人は首を傾げる中、ディートリンデが静かに経緯を語り始めた。
ディートリンデは、元々はラサーラ共同連合に所属していた。
グレンとの関係からも分かる通り、ディートリンデもソロ志向のプレイヤーである。
この鋼鉄の新世界でも、当初はソロとして遊ぶ予定であった。だがソロだけで無く、自身のプレイスタイルの影響もあり初戦闘でその苛酷さに気付き、すぐに開始地点へと引き返す事となった。
開始地点では、多くのソロプレイヤー達がチームメンバーを募集しており、ディートリンデもその一つへと参加を決めた。
参加したチームは元々がソロとして過ごそうとしていた者達の集まりという事もあってか、その後の進み方は他所よりも早く、一躍ラサーラでのトップ集団へと駈け上る事になる。
その頃からだろうか、チーム内の和が乱れ始めていったのは。
ソロ志向の集団の所為か、元から幾分協調性に欠けるチームであったが、トップ集団に着けた事での慢心からか、その姿が如実に現れ出した。
その様なチーム事情を受け、徐々にディートリンデは脱退を考え始めていたが、ある日決定打となる事件が起こる。
その日も最近よくあるちょっとしたいざこざから、いつしかチームを割る騒動へと発展したのだ。
六人で構成されたチームは、中立であるディートリンデと傍観者一人を除き、二対二の対立へと移り、結果解散する事になった。
元々脱退を考慮していたディートリンデだが、問題が残る結末となる。
どちらに付く気もなかったので中立に徹していた事が、双方から色々と要らぬ遺恨を残す結果となったのだ。
解散したとは言え、同じ国内に居れば、後々様々な火種となるであろう事は明白だ。
そしてその様なトラブルの火種を抱えた自分を、好き好んで受け入れてくれるチームにも心当たりは無かった。
そんな最中耳にしたのが、今回のアップデートによる他国への移籍解禁だった。
ディートリンデは、すぐに知り合いへと片っ端から連絡を取った。
スキルと経験差から、第二陣とのチームを組む事には躊躇した。然りとて、ソロでの難しさは身に沁みている。
条件等を言える状況でも立ち場でも無いが、出来れば女性メンバーが在籍するチームに参加するのが理想だ。
鋼鉄の新世界というゲームはその内容もあり、非常に女性プレイヤーが少ない。世に女性比率が五割近くもある様なVRゲームが存在する中、実に二割を切っている状況だ。
異性とでも悪くは無いが、出来れば同性同士でこのゲームの話なども楽しみたい。
色々と声を掛けるが、その多くはこのゲームをやっていないか、もしくはメンバーの空きが無いかのどちらかであった。
難易度からいっても多くのチームは空きなどが無い、最大数の六名のパイロットで構成されていた。
もうダメかと諦めかけた時に、運良く連絡が取れたのがグレンだった。
ソロプレイヤー同士と言う事も有り、幾つかのゲーム内で出会い、何度か臨時でパーティー組んだ経験のみであったが、そのいずれでも細かな配慮のされた言動がディートリンデの心証に残っていた。
一縷の望みを掛けて伺うと、グレン本人も最近チームに加わったばかりという話が返って来た。
そのチームには今現在人数にも空きがあり、尚且つ女性メンバーも在籍すると、正に探し求めていた理想とも言える条件だった。
そして決め手となったのは、楽しそうにチームの事を語るグレンの様子だった。
そこでディートリンデはすぐに決心し、グレンの「承諾を得るまで待て」との言葉を押し切り、強引に亡命をして今に至ったのだ。
「すまんな。本人に悪気は無いんだが、抑えきれなかった」
「ごめんなさいね。私も直接会って話をしたかったから……」
「いえ、良いですよ。そんな状況なら仕方が無いです」
「そーよ。しょーがないわよっ」
申し訳なさそうにする二人に、キースとエレノアがフォローを入れる。
「そう言って貰えると助かるわ。まだ私自身の話をしてないわね。ギルドランクは今回の移籍で落ちて二本線よ。それと役割は、ライフルを使用した遠距離攻撃。それとスキルだけど……」
ここでディートリンデのスキル構成を紹介する。
初登場となるスキルは、狙撃銃による攻撃に判定が付く【ライフル】Lv32、身体系スキルの一つで集中力を高める事で、行動の精度を上昇させる【専心】Lv29の二つ。
他は【観測】Lv26、【スキャン】Lv26、【チャフ】Lv5、【ダッシュ】Lv20、【ムーブ】Lv11だ。
因みに、条件を満たしているが上位スキルである【ハッキング】は未修得である。
「人となりと腕前については、俺が保証するわ」
何度も組んだ経験を持つグレンが、太鼓判を押した。
「あの、亡命ってギルドランク降格するんですよね。今二本線って事は……」
「ええ、ラサーラに居た時は一つ星だったわ」
ディートリンデの発言に、キース達三人は羨望の眼差しを向ける。
「これ以上の詳しい話は追々って事で……」
そう言うとグレンはキース達に向かい、真剣な表情を見せると徐に話を切り出す。
「入って間もない俺が言うのも何だが、メンバーに加えて貰えないか」
「お願いします」
二人が同時に頭を下げる。
「そんな事しないでも良いですよ。グレンさんの友人なんですから、歓迎します」
「そうですよ。頭を上げて下さい」
「かんげー。これからいっぱい楽しもーねー」
二人が頭を上げると、そこには笑顔を向ける三人の姿が見えた。
潤む瞳を堪え、ディートリンデはその視界に四人を入れると、
「有難う」
と小さな一言と共にやわらかく微笑んだ。
その後はディートリンデの親睦会となり、その様な機会が無かったグレンがいじけるという一幕が見られた。
こうしてキース達に五人目となるメンバー、ディートリンデが新たに加わる事となった。




