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第二話 作成

5/16 漢字変換率修正

5/25 誤字修正

6/10 一部加筆修正

 先程までの粉塵が舞い、破壊音が溢れる世界からは一瞬にして、空気が一転した。


 ついさっきまで戦場の、それも激震地とも言える中心部にいた筈が、何時の間にやら対極の様な場所に着いていた。それまでの耳に響く破壊音に代わり、今はそれまでの心を鎮める様なゆったりした曲が流れている。周りを見渡すと何もない場所に異物の様な感じでポツンと椅子が置かれてる。


「どうぞ、そちらへお掛け下さい」

 どこからともなく、しっかりとした女性の声が聞こえて来る。

「えーと、今の状況を説明して欲しいんだけど」

 心構えをする前から驚きの展開に晒されたが、一先ず落ち付けそうな雰囲気を感じ説明をお願いしてみる。

「こちらでは、今からキャラの作成を行って貰います」

「じゃあ、今までいた戦場は何?」

「あちらは初ログイン者全員にご覧になって頂いている、オープニングムービーです。もっとも何種類か用意されているため、どれをご覧になったかまでは解りませんが」

「あれ、オープニングムービーかよ。しかもまだ他にもあるのか……」

「はい。ランダムで選ばれるため、全部を見るには結構な回数を試さなければいけませんが。一応設定で省略する事も出来ますので、次回からは普通に入る事も可能です」

 毎回戦場のど真ん中に飛ばされることが回避出来ると知り、ここでようやく椅子へと腰掛ける。




 その後は女性の声に沿って、淡々とキャラを作成していく。最初は所属国家の選定。選択肢は三つ。大陸北部に位置する『シュネイック共和国』 国土の大半を山岳と森林で覆われ、冬期には唯一積雪を観測する。南西部に位置するのは『ラサーラ共同連合』 ここは国土の半分以上が砂漠で、残りの草原地帯も徐々に浸食されている。最後が南東部に位置する『ニュートリアス連邦共和国』 国土に幾つもの河川が流れ、湿地帯やジャングルが存在する。

 それと所属は出来ないが中立国である『サルアチア商業国』 この四ヵ国がこの大陸には存在する。


 ここでは事前の打ち合わせ通りに『シュネイック共和国』を選択。未沙(みさ)曰く「砂漠の灼熱地獄もジャングルの虫地獄も嫌」とのこと。灼熱は分かるが、果たしてVR世界に虫地獄は存在するのだろうか。


 続いてキャラ性能の設定に入るのだが、ぶっちゃけ余り意味はなさないらしい。βテスターによる情報だと操作にはスキル。戦闘には機体とAIが物をいうみたいなので、ここでは平均に仕上げた上で余ったポイントを生命力のHPとスタミナのSPに振る事にする。あくまでロボットがメインなのだから、それは当然ともいえる。


 次はVR特有である外見設定になる。今の時代、生体情報で様々な事が処理されているので、このゲームへのユーザー登録にもその情報が使われている。そのため、既に性別や体格はそれを元に再現されており、ここで行われるのは再現された本人の外見を現実でのトラブルに支障が出ないように改変する作業だ。とは言え、大幅な変更は出来ないので髪型や目の色などで印象を誤魔化す程度だ。


 そしてキャラ作成の最後は名前決めだ。これも多くの時間を要する項目の一つだが、『鋼鉄(はがね)の新世界』では世界観保護のため、自由に登録する事は出来ず膨大な数がある候補の中からの選択式だ。


「この辺は色々と賛否有るみたいだけど……」

 適当に文字を入力すると、その文字から続く膨大な数の名前がズラッと並ぶ。国光は何度か試し、その候補の中から最初に目に留まった『キース』に決める。

「あんまり待たせると色々とうるさいのがいるから、さくさく決めてかないと。名前を決めたら終わりかな?」

「いえ、最後にAIカードを選択してもらいます」

 喋り終わると同時に、目の前に見た目は同一のカードが二枚浮かんでいた。


 事前情報によるとこのAIが重要な要素らしい。カード型であるAIは操縦時に機体にセットすると、機体の制御や火器管制などを行ってくれ、プレイヤーは操縦のみに専念出来る様になる有り難い代物とのこと。また、戦闘経験により成長もしてくれるので、歴戦のAIになるとその経験値から相手の戦術予測なども出来るようになり、AI無双も可能になるらしい。とは言え、そこまで育てた人がいない現状、その様な可能性を秘めた作りになっている程度でしか無いが。


「これは選択によって、当たり外れがあったりしますか」

「性能に差はございません。この事は全てのカードに言えることですが」

「すると、全プレイヤーのカードには全く差が無いってこと?」

「そうです。性能自体には差はございません。ただAIにはそれぞれ個性があるため、そのカード毎にプレイヤーとの相性がございます。その相性次第では今後の成長に差が生じますので、結果として当たり外れと呼べるものはあるかもしれません」

「外れも存在するのか……」

「それ程悲観する事はございません。生体情報を元に選別を行っているので、相性の悪い物は最初から選択肢には選ばれておりません」

「そうなんだ。それじゃあ、この右のカードにするよ」

「かしこまりました。一つ御忠告致しますと、あまりモラルに反する行動ばかりを取りますと、AIに影響が出て性能自体が減少致しますので、選択よりもその後の育成の方が重要になります」

「ありがとう。これで終了でいいのかな」

「はい。AIの設定はゲーム内で行いますので、これで終了になります。それではどうぞ楽しい時間をお過ごし下さい」


 これでようやく待ち合わせ場所である、開始地点へと向かう事になった。

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