第十二話 連携
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酷い損傷を受けたが、何とか自力での帰還を果たしたカグツチの損傷は、一番酷いのが半壊となった胴体部で、次に打撃を受け続けた左肘の駆動部だった。
すぐにでも修理を施したかったが、現状では悠長に時間を掛けてもいられない。今居る場所は左右を森に挟まれた街道。トレーラーにとっては、逃げ場の無い一本道なのだ。この場での再度の襲撃は、何としても避けなければならない。賭けになるが、キース達は修理よりもまずは安全の確保のために、移動を優先とした。
急ぎ街道を走りだすと、どうやら賭けには勝てたようで、特に二度目の襲撃を受ける事無く少し開けた場所へと辿り着き、そこで昼休憩に至った。
今回の戦闘を経て、一つの喜ばしい出来事があった。
「へえ、エレノア凄いじゃないか」
「そうだね。三人の中じゃ初めてだもんね」
「えへへ、ありがとー」
遂にエレノアが上位派生スキルを得たのだ。
【パンチ】がLv25以上で発生する【ダブルパンチ】というものだ。効果は左右で交互に連続攻撃する際、二発目の攻撃力を1.25倍にするというものだ。
「ボクシングでいう所のワンツーって奴ですね」
「ただでさえ威力があるのに、ナックルでのストレートが1.25倍か……」
「両方攻撃を当てないといけないみたいですから、実際はかなり難しそうですけど」
条件は二発目なので、フェイント等当たっていない攻撃では発動はしない。
「これって、パイルバンカーでも良いのかなー?」
「あれは一応盾攻撃になるんじゃないのかな」
「そっかー、ちょっと残念」
昼食後、僅かな時間を利用してカグツチの修理を施す。時間が足りないため、完調までには至らないが、多少の誤魔化しは出来るだろう。
その後再び街道へと戻り、西へと直走る。どうにか再度襲撃を受けることなく、本日の宿泊予定地へと辿り着くことが出来た。
そこは西へと向かった街道の突き当たりにある湖の畔の一角だ。街道はこの後湖に沿って、しばらく南西へと降りていくことになる。
湖畔の開けた場所へトレーラーを停めると、ビエコフは早速カグツチの本格的な修復を開始した。
その間キース達は食事を用意するためにGIストーブを使い、四人分の湯を沸かし始める。本日のメニューはアルファ米にレトルトの豚の角煮を乗せ、香味野菜を散らした角煮丼と味噌汁だ。
ランタンの灯りの元、四人は車座に座り談笑しながら食事をした。
食事が終わると、早速今回購入したハンモックの設営に取り掛かる。
「いやー、すっごく寝るのが楽しみだねー」
エレノアは設営しているキースの周りを嬉しそうに見ているだけだ。
「少しは手伝えよ……」
注意はするものの、効果がないのは今までの付き合いの中で十分過ぎる程分かっている。
仕方なく、キースは全員のハンモックを湖畔に立つ木の間に設営していく。
食事は兎も角、ハンモックは三人分しか無いので、護衛対象の女性は警護も考えトレーラーの中で寝て貰う。
前回同様、三人で夜間警戒のローテーションを組む。二十一時から三時間毎に六時までだが、カグツチの修復完了予定が零時頃ということもあり、ビエコフ、キース、エレノアの順で今回は回す。
夜明け前の時間に差し掛かると、担当していたエレノアは前回の襲撃を思い起こし少し緊張するも、初日は無事に夜が明けていった。
「今回は何にも起こらなかったねー」
朝食となるパンを頬張りながら、エレノアが昨晩の事を話題にする。
「まだ初日だ。あと一泊あるぞ」
キース自身も少し気が抜けそうになるのを、引き締める意味を込め注意を促す。
「分かっているわよっ」
少し膨れっ面になりながら、エレノアが不満そうに答える。
「ですけど、長期の依頼だと夜間襲撃が無いのは助かりますね」
現状キース達はメンバーが三人しかいないため、昼夜を問わず襲撃され続けると、戦力以前に体力が尽きてあっさり終わってしまうだろう。
「まあな、四六時中気を張り詰めてる訳にもいかないからな」
「そうそう」
四六時中気を緩めてそうな表情で頷いているエレノアを、二人は何とも言えない表情で見つめていた。
食事が終わると早速トレーラーは南西へと進路を取る。これからしばらくの間は、右手側に湖を見ながらの気持ちの良い道を走って行くことになる。
日を浴びキラキラと光り輝く湖面には、風による水面の揺らぎも無く、遠くにそびえる山脈の雪化粧をされた山頂部を綺麗に写している。
「ドライブには最高の所だねー。私も車の方に乗りたいなー」
警戒態勢のためARPSに搭乗しているエレノアが、トレーラーの窓を開け、気持ち良さそうに運転しているビエコフに対し、羨ましそうに呟くのが通信から聞こえて来る。実際キースにしても、秋に入り気温も下がり涼しく過ごしやすいこの時期に、現在の状況での移動にはかなりの忍耐を強いられている。
そんな行楽気分のドライブに対し、午前中一度襲撃を受けたが旧型ARPS一機と車両三台の構成だったため、あっさりと撃退することが出来た。
昼の休憩を挟み、午後に入ると一時間程で湖とも別れ、また左右を森に囲まれての道程に戻る。
森に囲まれ、午前中に感じた解放感が消えた街道をしばらく進むと、時折森が途切れる個所が現れ、草原地帯が近づいて来たのを実感する。
二日目の宿泊予定地まで後二時間となる頃、本日二度目となる襲撃を探知した。
――マスター、方位2-0-4、距離18.3kmにアンノウンを二つ感知――
「アデリナ、方位2-0-4を中心として重点探索」
――了解です。方位1-8-9から2-1-9までの重点探索を開始します――
今までよりも、敵の少ない事に一瞬余裕を感じる。しかし詳細がまだ不明なのを思い出すと、自戒と共にキースはすぐに気を引き締めに掛かる。実力が足りず負けるなら兎も角、油断しての敗北では悔み切れない。
――アンノウン判明。85式が二機、アサルトライフルとシールド装備が一機、弾数六発のショルダーミサイルガンポッド装備が一機。ミサイル持ちは今回BPも装備しているため、予備弾倉持ちだと推測されます――
「いよいよ予備持ちが出て来たか……」
現状スヴァローグにはチャフが十発装備されている。しかし今回予備弾倉があると、全弾をチャフで回避することは不可能になる。チャフが切れると、かなりの損傷を覚悟しないといけなくなるだろう。
早速判明した情報を二人に伝え、対処を検討していく。
「それで、今回はどうすればいいの?」
情報の開示直後に、エレノアが今回の指針を聞いてくる。
「少しは自分でも考えろ……」
一瞬すらも自身で考えなかったエレノアに、呆れ気味にキースは返答を返す。
「えー、じゃあねー、取り敢えず二機で突っ込む」
「それじゃあ、考えてないのと一緒だよ……」
エレノアの素の発言に対し、ビエコフが呆れた様に突っ込む。
「……まあ、今回はそれで行こうかと思う」
奇しくも自身の方針と一致したために、キースは非常に不本意ながらも同意する。
「ほらー、当たったー」
「いや、クイズじゃないから。それとキースさんは、それなりに理由があっての事だからね」
二人を放って置くといつまでも話が進みそうにないので、キースは今回の対処案を説明していく。
「今までは敵が複数いても一対一の状況にして対応してたけど、今回は各個撃破を試してみようと思う」
「えー、何それ?」
「なる程、相性的にも今回はその方が有効そうですね」
真逆の反応を見せる二人に、キースは行動の真意を伝える。
「今回はミサイル持ちとカグツチの相性が悪すぎるんだよ」
「何よー、そんな事ないわよっ」
キースの指摘に対し、エレノアはすぐさま反発した。
「最後まで話を聞けって。だからスヴァローグでミサイルを避けながら、二機で盾持ちを先に倒す」
「キースさんも前回同装備持ちに手こずっていましたからね」
「そういうこと。今回は互いの相性の悪さを補いつつ倒そうという訳」
今までは多少の事はゴリ押しで対処して来たが、今回は相対する相手を分けるにはあまりにも相性が悪すぎた。しかし、それも一対一での場合のことだ。
今回はミサイル避けと牽制をキースが行い、撃破役をエレノアが担当して、最初から二対一の局面を作ることにする。
「上手くいけば、今後も取り入れていきたいしな」
「むー、私はこう相手と一対一で……」
戦術と気持ちの折り合いがつかず、エレノアは一人唸っている。
「今後は相手の台数も増えていくから、局面では可能だけど中々純粋な勝負は難しいと思うよ」
実際数が増える程に、乱戦の様相になるであろうことは予想される。
「心配しなくても、その内PvPになればエレノアの満足する戦いも出来るようになるさ」
エレノアが更に思考の罠に入り掛ける前に、キースがすかさずフォローを入れる。
「そっかー。早く他国に行けるようにならないとねー」
あっさりと今までの懸念を放り捨て、立ち直った姿を見て、二人は毎度のことと思いつつも溜息を一つ吐いた。
対処法もようやく決まり、各自準備へと取り掛かる。
迎撃地点は6km程進んだ、丁度森が一旦途切れた場所を選んだ。100m位ある少し開けた草原部分だ。森を背にして15m程前に出た場所に、カグツチとスヴァローグが並んで立ち構えている。
相手は盾持ちを先頭に、その後ろを少し離れてミサイル持ちが続く形で現れた。
「エレノアは俺の前には出るなよ」
「りょーかーい」
念押しの注意を与えていると、早速開始の合図とばかりにミサイルが飛んで来た。
――マスター、ミサイル二発。個々に標的指定されています――
「エレノア、俺の後ろに回れ。アデリナ、チャフ発射っ」
到着までの僅かな時間で、二人に指示を送る。
「おっけー」
――了解です。チャフを発射します――
シールドを構えているスヴァローグの背中から、妨害用フィルムの破片が舞い散る中、カグツチが素早く後ろに回り込み射線を一つに重ねる。
こちらへと向かって来たミサイルが、チャフの霧の中を突っ切り二機の頭上を通り過ぎ、奥の森へと入り爆発を起こす。
すると爆発を合図に盾持ちから、銃弾が飛んで来る様になる。スヴァローグは盾で防ぎつつ、銃弾での応戦をしながら、二機そろって森の中へと後退を開始した。
「上手いこと付いて来いよ」
――マスター、残弾十二発です――
森の中へと侵入するとすぐに木で遮蔽を取り、相手を引き付けるべく一旦立ち止まりながら牽制を入れる。
「まだ来ないのかなー」
――少し落ち着いたらどうだ――
カグツチは森に侵入すると、スヴァローグから離れ単独で奥へと進み、敵の森林侵入後に襲撃をしやすい位置へと着いた。
木の陰に潜み、左肩を隠すように機体を右側から出し様子を窺う。
前方60m先では、一度立ち止まっていたスヴァローグが、再度銃撃をしながら森の奥へと入って来るのが見える。
そしてとうとう敵の盾持ちも、森へと侵入して来た。
――エレノア、もう少し引き付けてからだぞ。折角アデリナが撹乱しているんだから――
「分かっているわよ。後15mの辛抱よ」
キースはエレノアの襲撃をより確実とするべく、森林への侵入と同時にジャミングを掛け敵の探索を妨害していた。
視認による索敵を余儀なくされた敵ARPSは、警戒しながらもゆっくりと森の中へと入り込んだ。
敵が誘い込まれた場所は、木と木の間隔が僅かに開けた空間だった。その空間の中央に踏み込んだ瞬間、突如左前方から肩の赤いARPSが、木の陰から飛び出した。
ローラーダッシュを掛け、モーターの唸りと共に枯れた枝葉を後方に撒き散らしながら、カグツチは一直線に敵へと向かっていく。
盾持ちもすぐに接近に気付き、対応すべく右手に持つ銃を相手に向けようとするも、今度はその右手側から銃撃を受け側面を被弾する。
「よーし、キースナイス牽制」
――珍しく、被弾せず近づけたな――
一瞬対応が止まった隙を突き、カグツチは盾持ちの左側面に取り付くと、シールドを構えている左腕にショルダータックルを当てる。
相手が衝撃でふらつき、機体が右側を向くと、すかさずキースからの銃弾が機体正面を襲う。エレノアは目の前で背を見せた相手に対し、右手のナックルで中心部に一撃入れた直後、すかさず左のパイルバンカーで一気に機体を刺し貫く。
「やったか?」
――わざとらしいフラグを立てるのはやめろ――
「GARPはノリが悪いなー」
目の前で膝を突き各坐した機体を前に、二人は不毛な言い合いを続けていた。
一機を倒し終え、残りのミサイル持ちARPSに対処するべく、キースは相手の情報を再度収集する。
「敵の位置は変っていないか?」
――はい、盾持ちが森に侵入後は一歩も動いてません――
アデリナの言葉通り、草原には一機の立ちつくす機体がある。実際森の木々の中だとミサイルの優位性が損なわれるので、相手を遮蔽の取れない場所で待つのは得策と言える。
「下手に動かれて、トレーラーを狙われたら厄介かと思ったけど、杞憂だったみたいだな」
――トレーラーはこちらより1km後方に控えてますし、一応私の方で随時警戒していました――
「そうか、ありがとうアデリナ」
――いいえ、マスター――
今回の対処で唯一の懸念は、トレーラーを直接ミサイル持ちに狙われることだった。一応対策としてスヴァローグの索敵情報をビエコフに流し、射程内に入らないことを決め、万が一の場合でもロケットによる牽制で時間を稼ぐ段取りにはしていた。
「エレノア、ミサイル持ちを仕留めるぞ」
「お任せあれ」
カグツチと合流後、一旦森の出口で相手の状況を視認するべく立ち止まると、すぐに相手からの挨拶に迎えられた。
――マスター、ロックオン確認。照準はこちらです――
「チャフ発射っ」
後ろに付いて来たカグツチではなく、スヴァローグに狙いを絞られたのは好都合と思いつつ、キースはチャフの指示を出す。
周りを木々に囲まれ、秋とはいえまだ沢山の葉が生い茂る中、発射された妨害用フィルムの破片はその多くを枝葉の中へ埋没させた。
そのことに気付かなかったキースは、一向に進路が逸れることなく、自機へと向かってくるミサイルに肝を冷やす羽目となる。
運良くギリギリで逸れたミサイルの爆風を浴び、機体に舞い上がった土砂や落ち葉を被りながら、エレノアに合図を送る。
「すぐ後ろに付いてくれよ」
「おっけー」
返事を聞くと、シールドを構えローラーダッシュで一気に敵ARPSへと近づいていく。
森から飛び出したのを見て、相手から再度ミサイルが発射される。
――マスター、ミサイル来ます。これで敵残弾二発です――
ミサイルの発射を確認すると、キースは急制動を掛けチャフを発射する。
後方から付いて来ているカグツチも、敵との射線に出ない様スヴァローグの陰へと潜むように止まる。
撃たれたミサイルが、チャフの撒かれた頭上を通過する。スヴァローグは相対距離が詰まり、射程へと入った敵に牽制を入れつつ、再びダッシュを掛け敵へと迫っていく。
シールドの脇に覗く銃口から、銃弾を放ちながら疾走するスヴァローグ。そのすぐ後ろ、影を踏む様な距離で追走するカグツチ。二機は一体となって敵へ押し迫る。
敵のARPSは銃弾を受けたことで回避を余儀なくされ、次弾を発射するタイミングを逸していた。その一瞬のもたつきは、二機を一気に肉薄させることとなる。
「エレノアっ」
「いただきっ」
合図を受けたカグツチは一瞬でスヴァローグの脇から飛び出すと、更に加速して追い抜き、その勢いのまま敵ARPSの正面に肩から激突した。
衝撃を受けつつも、何とか転倒を免れた敵ARPSは機体を立て直そうとするも、既に懐にはカグツチに入り込まれている。
相手に立て直しの猶予を与えず、エレノアは懐の中に潜り込んだまま、右手のナックルを敵の脇腹に連続で撃ち込む。
ダメージを受け、動きが散漫になった敵ARPSに対し、止めとばかりに左のジャブから渾身の右ストレートを胸部へと放つ。
一際甲高い音を立てた直後、相手から最後のミサイルが放たれた。二人は一瞬冷やりとするも、狙いも碌に付けられていなかったため、明後日の方角へと消えて行った。
目を戻すと、そこには胸部が大きく陥没し、仰向けに倒れた機体が残されていた。
無事襲撃者を撃退した一行は、再び街道を南に進んで行く。
キレンスクロフへ行った時とは違い、今の所何とか修復も出来ており、大きな遅れもなく予定通りのタイムスケジュールで進んでいた。
その後は襲撃にも遭わずに、二日目の宿泊地へと到着した。
そこは小高い丘にある僅かな平原だった。森を抜けてからもかなり距離があり、辺り一面をススキのような乳白色の穂先をした草が覆っている。街道もこの先は少し下っているため、かなり遠くまで土の露出した街道が延びているのが見える。
キースが夕飯の準備のために湯を沸かし始めると、背後でエレノアとビエコフの争う声が聞こえて来た。
「だから、それはダメだってっ」
「何でよ、緊急事態なんだからしょーがないじゃないっ」
只事じゃない物言いに、キースは慌てて二人の元へ駈けつける。
「一体どうしたんだ」
「「ちょっと聞いてよ(下さいよ)」」
話を聞くと、それは寝るためのハンモックの設営時に遡る。
昨夜は湖畔にある立木を利用し、その間に各自吊るして寝たのだが、今日の宿泊地は平原。見渡す限り、木一本見当たらない場所だ。そのためどうするか思案していた所、エレノアがトレーラーのフックを利用することを思いついた。それにはビエコフも賛成したのだが、二ヵ所必要な内一ヵ所しか見つからない。当初はARPSを利用しようとしたが、襲撃を受けた際支障をきたすので断念。そこで目を付けたのが、重機に付いているアームとクレーンだ。トレーラーの荷台の端に付いたフックに引っかけ、反対側をアームやクレーンで引っ張ろうと言い出したのである。
「なるほど……」
「良い案でしょ。ちゃんと人数分あるし、バッチリじゃない」
キースの了承とも取れる返事を聞き、畳み掛けるエレノア。
「いや、そんなことのために重機を使うのは……」
有用性を認めつつも、心情的に了承出来ないビエコフ。
「まあ、ビエコフの気持ちも分かる。そこで代案が無ければ、エレノアの方法で了承してくれ」
キース自身もエレノアの案で納得してしまい、思考が止まったために両者を満足させる案が無かった。
「……分かりました。何か方法を考えます」
非常に複雑な表情でビエコフは肯いた。
騒動を何とか治めると、すぐに夕食へと移る。本日のメニューはレトルトのたらこソースを絡めたパスタとスープだ。
そして結局対案を出せず、実に心外そうな表情を浮かべながら、ビエコフはハンモックのために重機を動かした。
昨夜と同じローテーションで夜間警戒をするも、二日目も襲撃は起こらず無事に朝を迎えられた。
行程も残り半日。森も消え、遠くまで見通せる草原の中、一行は予定より少し早い昼前にノヴォべリスクへと到着した。