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第十話 試斬

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 リビングでお茶を飲み一息入れていると、いつの間にか思考がまたゲームへと戻っていく。

 そんな事に気付き国光は苦笑しながらも、今後の行き先を一人で検討してみる。


 まずはキレンスクロフを基点に据える。この街からの行き先は三つ。

 一つは開始地点の街レニンスキに戻る。こちらは来た道を単に戻る事となり、道程は二日だ。

 次は北に二日行った所にある『マクノーシ・スラビシュ』 こちらはそれなりに栄えている街で、更に北に行くと首都である『ミーヌフクス』がある。

 最後は東に一日行った『ナヴォラキ』だ。こちらはキレンスクロフよりも更に小さく、街というよりも村といった感じの所らしい。

 場所だけを考慮すると、マクノーシ・スラビシュ一択だろう。首都にはいずれ行きたいので、その前に一度は訪れておきたい街だ。レニンスキへも三日半で直接戻れる。


 ただ現状の問題は、損傷した二機の修復がまだ終わっていない事だ。

 カグツチに関しては、時間の問題ですぐ完了するだろう。だがスヴァローグは正直読めない。損傷率を見れば、半壊と言って良い状態なのだ。

 流石に初めて行く所に、修復が終わっていない状態の機体で向かうのは、余りにも無謀だろう。

 そうすると、一度通って状況が分かるレニンスキへと戻り、拠点で各自の機体改修も含め、時間を掛けて修復するのが良さそうだ。だが、あの二人はどう考えるだろうか。




 夕食を終え、約束の九時少し前に入ると二人はもう待っていた。

 挨拶もそこそこに、改めて現状と今後の行き先を三人で検討し始める。

「さて、次の行き先なんだが……」

「スヴァローグはどうするの?」

「それもあるんだよな。ビエコフの考えは?」

「カグツチは兎も角、スヴァローグはこの場では修理せず、一度この状態で拠点へ持って帰りたいですね」

「スヴァローグ直さないの?」

「いや、直すけどちょっと考えている事があってね。キースさんはどう考えてます?」

「俺も一度レニンスキへ戻るのが良いかなと考えてる」

「じゃあ、一度戻ってみんなキチンと直してあげよー」

 ビエコフは兎も角エレノアはごねると思ったが、あっさりとレニンスキへ戻る事が決まった。


 機体の修理に関しては、カグツチをこの場で完全修復させる。そしてスヴァローグは、依頼が無ければ拠点に戻るまで一旦保留する事にした。ビエコフの話ではこの場で完全に直すよりも、この際機体の改修に手を付けた方が良いのではと提案されたからだ。勿論依頼を受注する際には、支障を来たさない程度に応急処置をして対応する事になる。

 方針が決まった三人は、ギルドでレニンスキまでの依頼があるか探しに出掛けた。


 物事は早々都合良くはいかないらしい。ギルドで依頼を探すも、一両日中に出立するレニンスキへの依頼は存在しなかった。

 そもそも配達依頼は一件も無く、次のレニンスキ行き護衛依頼は早いものでも三日後の出発である。

 本来なら待つのが定石だろうが、スヴァローグの修理も有るので時間を優先して明朝キレンスクロフを発つ事に決める。


 翌日は朝七時にキレンスクロフを出立した。今回は一度通った道であり、依頼を受領している訳ではないので以前とは違い、一行に張り詰めた空気は感じない。トレーラーの座席に三人で並んで座り、のんびりと周りの景色を楽しみ、会話を交わしながらの道程である。それもその筈、戦闘に対応出来るのがカグツチ一機のため、帰りは襲撃を全て回避するつもりだ。そのためスヴァローグでの探索だけは常時掛けて、その結果をアイバンへと送っている。

 出発から五時間が経過した頃、来る時に三機のARPSに襲撃を受けた岩場近くに差し掛かった。再度の襲撃を警戒し、三人の緊張も増したがどうやら襲撃は無く、センサーにも反応は現れなかった。丁度昼時ということもあり、周囲の安全も確認出来たのでここで昼休憩を入れる。


「そう言えば、実は寄りたい所があるんだが……」

 食事をしている二人に対し、キースは護衛で来た時に気付いたことを話していく。

 それは襲撃判明後、迎撃地点を探していた時に不思議な反応を示す場所があったのだ。その場所は迎撃地点の更に奥、距離にして4km程入った場所だ。

「どんな感じなのよ」

「うーん、金属反応が幾つもあるとしか言いようが無いな。あの時はそれ程詳しく調べる余裕も無かったし……」

「奥ってことは、襲撃者が来た方ですよね。大丈夫なんでしょうか?」

「確実に平気とは言えないけど、来たら直ぐ逃げるという方針でどうかな」

 多少のリスクはあるが、二人も興味を持ったようで、了承を受けたのち距離にして10km程の寄り道をする事にした。




 行きに戦闘をした岩場の続く場所を通る。逃げ場が限定されるので、一行のセンサーを見る目に緊張が灯る。無事に通り抜け左右の岩壁が無くなると、目の前に遠くまで見晴らせる草原が現れる。草原は一面緑の中、所々灰色の水玉模様の様に疎らに岩が点在している。そんな中に岩と同色ながら、異様な風体のモニュメントの如く鎮座している物が見える。注意深く見ていくと、それはARPSであった。皆一様に破損しており、ある物は両腕が外れ、ある物は頭部が無く、ある物は胸部に穴が開き倒れている。そんな状態の物が無数見つかる。

「これは一体何なのよっ」

「多分だけど、襲撃による犠牲者、いや機体かな」

「確かに、場所と状況は一致するな」

 一旦三人はトレーラーを降りると、間近に機体を確認するために近づいて行く。膝を突き各坐したARPSは、それでも高さが3m以上ある。両腕が無く、風化により塗装が剥げ、錆付いた機体は人から見放され、どこか物悲しく目に映る。キースとエレノアは機体周りを歩きながら、他の機体の方へと移動していく。ビエコフは一人放置された機体に潜り込み、内部を様子を頻りに調べている。

「キースさんっ、ここにあるARPSって何機ぐらいでしたか?」

 潜り込んでいた機体から、突然顔を上げたビエコフが叫び出した。

「確か、十二、三機だったと思うけど……」

「まだ生きてるユニットがいくつかあります。全部回収していきましょう」

 外装は壊れ、錆付き使い物にはならないが、内部のユニットに関しては、破損された部位以外ではまだ使えるユニットが存在したのだ。その後、約二時間を掛け全ての生きたユニットを回収して街道へと戻っていった。回収後のビエコフは終始上機嫌で、まだ時間がなく詳しくは調べきれていないため、掘り出し物を期待している様子だ。


 その後は寄り道もせず、襲撃も事前に察知して回避し、一行は順調に西へと直走った。今回は行きと違い、夕食を済ませた後も深夜零時頃までは走行した。宿泊地に到着後は、夜間警戒をキースとエレノアで三時間ずつ、翌朝六時まで行う。その甲斐あって、寄り道をしたけど行きよりも四時間以上早い、朝の九時半過ぎにレニンスキへと戻って来れた。

 一度拠点により破損したARPSを置いて、アンロック後の品揃えの確認するために、三人はレニンスキにある全ての店を訪問しに向かう。




「いやー、あの仕掛けは吃驚したねー」

 エレノアが興奮冷めやらぬ様子で、自身の受けた衝撃を口にしている。

「確かにあれは凄かったな」

「でもあれをやられると、ロック掛かっている人は絶対気付かないですよ」

 それはアンロック後、最初の店に入った時のことだった。そこは以前にも、キースの初期支給の武器を取りに訪れたことのある店だった。到着後、入口より一歩店の中へ踏み出した瞬間、以前とは全く違う店にいたのだ。店の場所も入口も一緒だったが、どうやらロックの有無で入店出来る店が変わる仕様らしい。

「レニンスキは大きいだけあって、キレンスクロフより商品が一杯あったね」

「そうですね。一部おかしな物も混じってましたが……。これで一度二機の改修計画を立てましょう」

 おかしな物、それは三件目の店に行った時に遭遇した。今まで同様新たに目にする装備を眺めていた時、それは見つかった。外見は特に他の品との差異を感じない。ただ表示されていた詳細説明を見て、キースとビエコフの二人は思わず吹き出し、意味が理解していないエレノアに白い目で見られたのであった。


 シールド:ミサイルシールド(弾数十発) 2,000,000Y(イェン) / アキバ商会謹製 備考:これは良い物です。


「しかし、何であんなネタ武器があそこまで高いんだ……」

「確かにあれは当分手が出ない様な金額でしたね」

 因みに二百万Y(イェン)は、初期機体が百五十万から百八十万Y(イェン)するので、更に上乗せした価格に相当する。

「えー、あんな誘爆が怖い盾要らないよ」

「でも威力は折り紙付だったろ。誘爆は怖いが」

「じゃあ、キースは欲しいの?」

「……いや」

「取り敢えず今後もあのメーカーは注意しておきましょう。色々と……」

 そんな感想を話しつつ、拠点へと戻りスヴァローグの修理及び改修作業の話を始める。




「現状それ程大きな手を打てる訳ではないですけど……」

 そう前置きを置いてビエコフは自分の案を説明し始めた。

 スヴァローグは修理と共に、出力装置のユニットを現状より性能の良い物へと取り替える。ユニットに関しては、解体屋(ジャンクヤード)で目星を付けているので問題無いそうだ。それに伴い、余裕が出た分を使ってシールドを新たに備える。金銭的に余裕があれば、アサルトライフルも新調したい所だ。

 カグツチに関しては現状では手は加えない。ナックルとパイルバンカーを新調する位だ。これにはエレノアの嗜好が多大に影響している。

「だって……、ロボットでの殴り合いをするために始めたのに、それを辞めたらねー」




 その辺は個人の拘りや楽しみの部分でもあり、あまり周りがとやかくいえない所だ。

「壁役がいれば攻撃に専念させられるけどな。今の状態だと、ある程度の妥協を頼むかも知れないぞ」

「今後敵が強くなると接近時の損傷も増えるだろうし、段々と辛くはなっていくから……」

「それは分かってるんだけどさー」

 この様な趣旨のゲームに於いて、拘りを持つのは決して悪い事では無い。

 しかし現状のチーム構成だと、それは段々と難しいものへとなっていくであろう。

 各自の楽しみを尊重しつつ、今後いかに進めるかが当面のテーマだと、キースは頭の片隅に留めておく。


 スヴァローグの改修には時間が掛かることもあり、ビエコフを拠点に残し二人は街中へと暫し散策に赴く。

 その後ビエコフの改修の終了の合図を受け、拠点へと一旦戻るとすぐさま試し狩りに三人で出掛けて行った。


 スヴァローグの出力装置には、解体屋(ジャンクヤード)でビエコフが見つけ出した、掘り出し物の現行機体85式のユニットが組み込まれた。それもビエコフによる改修を施されてからである。


 ここで改修スキルに付いて説明を入れる。まず既存パーツに改修を行っても、数値や性能などが増えたりする訳では無い。『鋼鉄の新世界』での改修とは、性能の方向性を変えることを意味している。

 今回の出力装置を例に説明をする。改修を行っても、出力装置の数値の上限が増えることはない。ただ出力と一言で言っても、同じ能力値のものでも様々な性格が存在する。瞬発力、馬力、耐久力と色々な要素がある。既存品は全ての人が不満を感じないように作られた物で、使用者全員にとって100点ではなくても70点は取れるといった性格の調整が多い。そこで、アレンジを施す事で個人の嗜好や能力といったものにそれぞれ合わせ、搭乗者一人のための機体を作り調整を行うことを差す。

 今回の場合は、二機ともビエコフによって出力装置を改修されている。

 スヴァローグは速度や馬力といったことに無縁であり、移動の際に常時探索等を長時間行うことから耐久力を上げる方向でアレンジを行った。

 カグツチの場合は元々Sタイプということで、既存の瞬発力の高い設定から馬力を上げるものへと変更をした。理由としては、現状の被弾率の高さからこれ以上瞬発力を弄っても、さほどの効果は望めない。ならば多少遅くなろうとも、攻撃力を上げ早期決着を狙った方が、最終的に損傷率が下がるのではとの考えからだ。因みにカグツチは出力系BP(バックパック)を付けているので、改修によって多少瞬発力が落ちても通常のカグツチより十分に早い。

 便利そうな改修スキルだが難点も一つある。実はスキルレベルなどの技術以上に使用者のセンスが求められるのだ。

 今回のカグツチも元々は瞬発力を生かした機体なので、出力装置以外のパーツや設定も全てその設計思想に基づいて作られている。その一部だけを弄ると簡単に全体のバランスが崩れて、以前よりも性能が格段に落ちる。なので、スキル使用者には技術以上にバランスや調整、見極めなど様々なセンスが必須となる。特にレベルが上がる程にその傾向は顕著になっていく。今回はビエコフのスキルレベルが低いため、そこまで影響が出る程大きな変更が出来なかったこともあり、特に問題は起こらなかった。


 そして今回の改修を受け、スヴァローグはようやく念願のシールドを装備することになった。

 それとカグツチも予定通りにナックルとパイルバンカーをロック後の物に買い替えた。これにより、パイルバンカーには今後弾数制限が発生する。

 そしてトレーラーにも武装が付いた。以前MOBで現れたロケットポッド付バギー。それと同様の六連式ロケットポッドを解体屋(ジャンクヤード)で発見し、トレーラーへと取り付けた。

 当初は機関砲を検討していたが、そもそも一人で運転をしつつ銃撃での攻撃は難しい。そこでAIによる制御が可能なロケットへと変更をした。但し、弾の補充は自動では行えないので、運転中に弾が切れたらそれで終わりである。


 新規装備での試し斬りならぬ初戦闘は、いつもの山賊狩りとなった。

「もー、新しくなったんだから強い敵の所が良いのに……」

「武器だけでなく戦闘方法もちょっと変えたいから、これで上手く行ったらな」

「試し切りで初めての所に行ったら、差が分からないですからね」

「むー」

 それぞれが新装備に期待をしながら、いつものように街を出て一路南下をして森の奥へと進んで行く。




――マスター、アンノウン感知。方位1-9-4、距離16.5kmに車両三台。方位1-8-8、距離17.7kmにARPSが二機います――

「分かった。エレノア、打ち合わせ通りに頼む」

「遅かったら、先に倒しちゃうからねっ」

「分かってる。すぐそっちに向かうよ。ビエコフ行くぞ」

「了解です」

 いつも通りエレノアが単身、森の中を敵に向かって一直線に駈けていく。

 そしてキースも敵車両へと向かって行くが、今回はビエコフもトレーラーでスヴァローグの後ろを追走する形で付いて行く。


 これまでと変わらずに、まずは敵との予想遭遇地点で待ち伏せる。

「アデリナ、ジャミング開始」

――了解です。敵の探索に対し妨害を開始します――

 敵に妨害を掛け、進行方向に対し死角となるように、森の陰から敵の到着をビエコフと二人で待つ。

 暫くすると、視界に敵車両が入って来る。

 今回の敵車両は機関砲を搭載したバギーが二台、対ARPS用砲塔付装甲戦闘車が一台だ。

「ビエコフ頼む」

「了解。ロケット発射します」

 そういうと、トレーラーに搭載したロケットポッドから敵に対し三発の弾が発射される。

 ジャミングの効果で不意を突き、奇襲の成果を確かめずに、スヴァローグはシールドを構えたまま敵へと飛び出していく。

 煙を引き、飛んで行ったロケットは、そのまま爆音と共に視界を遮る煙幕となった。

――破壊二、小破一、装甲戦闘車がまだ残っています――

 視界を埋め尽くす土煙りの中、アデリナから敵状況の報告が送られてくる。

 生き残った一台に対しシールドを翳し、接近を試みる。どうやら直撃は免れたものの車輪をやられたらしく、襲撃を仕掛けた時から全く位置が変わっていない。

 派手に舞った土煙りが徐々に薄れる中、止めとばかりに三点バーストの一撃を至近から撃ち込む。

――敵車両、破壊確認――

「よし、このままエレノアの方に向かう」

――了解です。方位1-0-5、距離2.3kmの地点で現在敵と交戦中――

 森の中で、単身二機のARPSを相手にしているエレノアの元へ急行する。




 森の中に陣取っていた二機のARPSは、以前遭遇した機種と同じ80式だった。その戦い方も変わらずに、エレノアを挟む形で攻撃を仕掛けて来た。

「まったく、何でこう同じ攻め方ばかりを……」

――それが理に叶っているから、しょうがないだろ――

「そうだけどさー、毎回代わり映えしないとやる気がさー」

――敵もエレノアのやる気のために、襲ってくる訳ではないからな――

 今回のエレノアは以前と違い闇雲に接近を仕掛けず、逆に極力損傷を避け距離を開ける様な位置取りをしていた。

「躱すばかりじゃ詰まらないから、先に攻めちゃおうか?」

――現在損傷率4%、先程アデリナから連絡が入った。もうすぐスヴァローグが到着するから待て――

 攻撃を仕掛けたくてうずうずしているエレノアに対し、しっかりと手綱を取っているGARP(ガープ)。立場がすっかり逆転している二人である。

 そんな事をしていると到着の一報が入る。

「お待たせ。カグツチの背に向かっている一機を引き受ける」

「おそーい、私がそいつも倒すからしばらく押さえててね」

「分かったよ、了解」

 返事をした直後、今までの鬱憤を晴らすかの様に、一気に速度を上げ敵ARPSへと向かって駈け出す。

 突然の豹変に、今まで散発気味に撃っていた銃弾が逸れていく。的外れの方角に飛んでいく銃弾を横目に、カグツチはそれでも木を遮蔽に使いながら敵のARPSに向かい、あっさりと接近することに成功する。

 そのまま右手のナックル、新しく新調したストライクボルトを敵胴体に打ち込む。

 一撃を受けた敵ARPSはそのままアイカメラの光が消え、膝を付くように地面へと沈んで行った。

「おー、一撃っ」

――攻撃力がかなり上昇したからな、当然の結果と言える――

 呆気無く終わったことに対し、少し物足りなさを感じながらも、エレノアはキースが相手をしてる敵に向かって反転をする。




 キースはシールドと木で遮蔽を取りつつ銃弾を放ち、距離を一定に保たせ意図的に小康状態を演出していた。

「敵を倒さず、損傷はせずだと楽な筈が、色々と気を使って倒すより疲れる……」

――現在損傷率3%、もうすぐエレノア様がやってきます。マスター、それまで頑張って下さい――

 敵ARPSがこちらに対して距離を詰めようとする所を、銃撃での牽制で阻止しつつキースは溜息を一つ吐いた。

 するとその溜息が聞こえたのか、キースが相対している敵ARPSの肩越しに、凄い勢いで向かって来るカグツチが見えた。

 ローラーダッシュで機体の背後へと盛大に落ち葉を撒き散らし、木を縫うように進路を取っているため、拘りの赤い色が見え隠れしている。

 敵を反転させないように、遮蔽より機体を出してより激しい銃撃を仕掛け、エレノアを援護する。カグツチは速度を落とさず、肩から敵の背中へと突っ込んだ。敵ARPSはその衝撃を立て直せずに、そのまま正面から地面へと俯せに倒れる。カグツチはすかさずその背中を踏みつけると、左腕に装着した新しいパイルバンカー、ニードルステイクで一気に刺し貫いた。


 新装備での初戦は完勝と言って良い結果となった。二機の最終損傷率も5%を切り、これにより狩りによる収益が大幅に上がることになる。

 更に戦術幅が広がったことにより、ARPSが複数機であっても安全に狩る事が可能となった。

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