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とある白い結婚にて間違い続けた女の独白

作者: 月乃ふくや
掲載日:2026/10/03



 私の娘は器量が悪い。


 二人いて二人ともだ。けれど、仕方がない。醜い夫との子どもなのだから。私もそれを中和できるほどの容姿でもなかった。

 金とご立派な爵位だけの夫は、肥えすぎたあげくに先に死んだ。それまでは多少の贅沢ができていたのに、そこからは残されたものを使い潰しながらの生活になった。だって、幼い娘たちを連れた女一人に何ができるというのか。

 運が良かったのは、ちょうど同じ頃に妻を亡くし、娘が一人いるという男と出会ったことだった。境遇が似ている僕たちなら、助け合えるだろう。そう言って、信じられないことに彼は私に求婚した。

 美しい男だった。

 けれど、彼の娘と出会った時、私は青ざめた。その子は、まだ幼かったが、ハッとわかるほどに美しい子どもだった。

 私は自分の娘たちを見た。


 新しい夫は、私の寝室に来ることは一度もなかった。

 それはそうだ。わかっていたことだ。娘がこれほどに美しいなら、男だけでなく母親の容姿も想像がつく。美しい女のあとで、こんな醜い女を、誰が好き好んで抱くものか。彼が本当に愛したのは一人きりで、再婚相手に私を選んだのは死んでしまった伴侶に操を立てるためだったのだ。そして、最悪だったのは、この夫が、私も亡き夫に対して同じ気持ちだろうと考えていたことだった。

 夫が私に望んだのは、娘の【新しい母親】であることだけだった。

 私はその通りにすることにした。だが、継子だからと気を遣ってただ可愛がっては、私の娘たちがどう思うか。まだ子供のうちはかまわない。だが、成長して、自分と彼女の容姿の差に気づいてしまったら。そこで私まで彼女を愛しているように見えたらーー

 私は、私流の方法で、新しい母になることにした。つまり“厳しい継母”だ。……珍しいことでもない。

 私は、私の娘たちにはボウル皿いっぱいにスープを入れたが、夫の娘には「あなたはまだ小さいのだから」と皿の底がうっすら見えなくなるだけの量を入れさせた。貴族の子女には教育が不可欠だと言い、私の娘たちと同じ内容を講義しては、幼い彼女が間違いや失敗をするたびに強く厳しく叱責した。

 ……夫が亡くなった。もともと病気がちではあったらしい。夫は、私を少し厳しいだけだと思っていた。間際の枕元で「これからも頼む」と告げられたときは馬鹿らしいと思った。そして、翌日から、私は彼女を召使の代わりにした。

 娘たちに贅沢をさせるのに屋敷の金を使い潰し始めていたからだ。使用人を全員やめさせ、彼らがしていた仕事をすべて、彼女に押し付けた。掃除をするのにドレスは邪魔だろうと奪い、ぼろきれのような服をあげてやった。

 その頃には娘たちと彼女の背丈はほとんど変わらないくらいにまでなっていたから、彼女のドレスは娘に渡った。

 気分は悪くなかった。……だが、いつまでも晴れることもなかった。

 彼女は、どれだけ私が惨めに扱おうとしても、ずっと美しいままだったからだ。

 幸い、私の娘たちは心からきちんと彼女を見下せていた。意地悪を言い、こき使うことに疑問を抱かなくなっていた。

 それだけは救いだった。


 月日が経ち、彼女は、毎日の仕事を当たり前にこなせるほどに成長した。しかも、卑屈にならず、小鳥のさえずるような声と、輝くような瞳を持ったままで。

 鏡を見るたびに気落ちする、なんてことがなかったのだろうと思う。羨ましいことだ。

 一方の私の娘たちは、器量も悪ければ要領も悪かった。何を習わせても身につかず、歌声は金糸雀には程遠い。お互いに「足を引っ張った」と罵り合うばかり。それでもなんとか男性の前で畏まるくらいの知恵はついていた。良い縁談を組みさえすれば問題はないと、そう思っていた。

 だから、ある日、開かれる王子との見合いを兼ねた舞踏会に、年頃の娘たちは全員参加するようにとの御触れを聞いた時はさすがに胸が躍った。

 上等のものを着せてやらなければ。化粧も、姿勢も話し方ももっと矯正して。

 そう思っていた後ろで、あの子が私も行きたいと言った時ーー本当はぞっとした。参加したいと言ったことじゃない、私たちが手伝いも時間もやらなかったのに準備ができていたことでもない。

 ただ、私の娘たちと並ばれたくない。


 私たちは、あの子を置いて行った。


なのに、ああーーシンデレラ。


 後日、現れた城の従者はあの子を探しにきて、ガラスの靴とともに笑顔の彼女を連れて行った。

 いつのまに選ばれたのか、そんなことは知らない。

 ただ彼女はきっとあの美しさで、優しさで、国の中心にいて愛され続けるのだろう。


 そして、私はやっと安心していられる。

 かわいい娘たちと、ただ。


 そして、もしも、この先、誰かがあの子について「あんな素敵な方をどう育てたのか」なんて聞いてきたなら、こう答えるのだ。


 わたくしはなにも。ただ、実の娘以上に甘やかさず厳しく育てただけですわ。


 ーーと。




昔から絵本や原作も読んだことはあるんですがね。童話のシンデレラは受け身なヒロインだと思っていました。それが先日初めて映像のほうを見て、いや、シンデレラ…結構強い女性だな?といろいろ思ったのと、いま白い結婚もので色々話を考えていたところで…、冒頭の一文が浮かび、ビビッときて勢いで一気書きしました。


ちょっと息抜きに。


…にしてはちょっと暗すぎますかね。でも好きです。こういう女もたまには。


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