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絶対主権  作者: ユウライ
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1話《これはよくある転生ってやつ?》

初投稿です。楽しんでいただけたら嬉しいです!

「創作、創作〜! 今日も創作だー!」


鼻歌交じりにスマホの電源を入れる。


「今回は何を作ろうかなー? 新しい従者にするか・・・武器にするか・・・魔道具にするか・・・国を作るのもアリだなぁ・・・どれも捨て難い・・・」


そう呟きながら、いつものように創作アプリを開く。


気付けば、創作は俺にとって生活の一部になっていた。


新しいキャラクターを考え、武器や魔道具を生み出し、一つの国の歴史や文化を作り上げる。


誰かに見せるためというより、自分が「こんな世界があったら面白い」と思えるものを形にする時間が好きだった。


「よし、今日は・・・」


そう言って、気付けば時計の針は夕方を指していた。


夢中になって創作していると、時間が過ぎるのは本当にあっという間だ。


「あ、もう晩御飯の時間じゃん。なんか適当に作って済ませるか」


そう呟き、スマホをベッドの上へ放り投げる。


その瞬間。


『ピコン』


聞き慣れない通知音が部屋に響いた。


「ん・・・?」


画面には見覚えのない通知が表示されていた。


だが、どうせ広告か何かだろうと思い、俺は気にも留めず部屋を後にした。


「ふ〜、食ったー・・・さて、続きだ」


食器を片付け、自室へ戻る。


ベッドの上に置いたスマホを手に取り、何気なく画面を点けた。


「・・・ん? さっき通知来てたのに、通知欄に何も無い・・・気のせいかな?」


少し不思議には思ったものの、深く考えることはなかった。


「まぁ、いっか」


そう呟き、いつものように創作を再開する。


気付けば再び時間は過ぎ去り、窓の外はすっかり夜になっていた。


「あー・・・今日も書いたー・・・疲れるなぁ・・・相変わらず・・・」


大きく背伸びをしながら、俺はベッドへ倒れ込んだ。


(明日は・・・武器でも作るか・・・いや・・・街の設定を優先するか・・・)


そんなことを考えながら、ゆっくりと瞼を閉じる。


今日も創作漬けの一日だった。


心地よい疲労感に身を任せ、俺の意識は静かに夢の世界へ沈んでいく――はずだった。


(・・・ん・・・)


(あー・・・寝ちゃってたか・・・)


ぼんやりとした意識のまま目を開く。


だが、すぐに違和感を覚えた。


(・・・なんで俺、座ってんだ・・・?)


身体を預けているのは、家のベッドではない。


まるで王族でも座るような高級な椅子だった。


柔らかいのに身体をしっかり支え、長時間座っていても疲れを感じさせない、不思議な座り心地。


(え・・・何これ・・・)


ゆっくりと目を開ける。


視界に飛び込んできたのは、見覚えのない天井。


重厚な石造りの壁。


淡く揺れる蝋燭の灯り。


天井から吊るされた豪華なシャンデリア。


そして、大きな窓の向こうには月明かりに照らされた夜の街並みが広がっていた。


「・・・ここって・・・」


思わず周囲を見渡す。


壁には世界地図。


本棚には無数の書物。


机の上には地図や羊皮紙が広げられ、隅には剣や槍が整然と立て掛けられている。


まるで王や領主が政務を執るための執務室。


「・・・いや、待て」


心臓が大きく脈打つ。


「ここって・・・俺が考えた・・・執務室・・・」


創作の中で何度も思い描き、細部まで設定したあの部屋。


忘れるはずがない。


その景色が、今まさに目の前に存在していた。


「まさか夢の中・・・? ここまでリアルな夢を見るようになったのかな・・・」


頬を軽くつねる。


「・・・痛っ」


夢にしては痛みがある。


半信半疑のまま椅子から立ち上がり、本棚へ歩み寄る。


並べられた本の中から一冊を手に取り、何気なくページをめくった。


「これは・・・」


内容は国の統治や商業、税制度について書かれているようだった。


見たこともない文字。


読めるはずがない。


・・・なのに。


「え・・・」


自然と意味が頭に入ってくる。


一文字ずつ読んでいる感覚ではない。


文章を見た瞬間、その内容が最初から知っていたかのように理解できる。


「何これ・・・理解できないはずなのに・・・理解できる・・・?」


困惑している。


・・・はずなのに、不思議と恐怖はなかった。


むしろ、


(あぁ、そういうことか)


と、どこかで納得している自分がいた。


その感覚が、何よりも奇妙だった。


コンコン


扉をノックする音が静かな執務室に響く。


「ユウライ様、失礼します」


(え!?)


突然聞こえてきた女性の声に、心臓が跳ね上がる。


(誰か入ってくる!? やべぇ!!)


どうする?


隠れるか?


いや、この部屋に隠れる場所なんて・・・。


頭の中が真っ白になり、俺は意味もなく立ったり座ったりを繰り返す。


完全に軽いパニック状態だった。


ガチャ・・・


扉がゆっくりと開く。


「失礼します。そろそろお疲れだと思い、紅茶をお持ちしました」


銀のトレーを手に、一人の女性が静かに部屋へ入ってきた。


黒を基調としたメイド服。


頭には小さな角。


腰から伸びる黒い尻尾。


赤く澄んだ瞳が、真っ直ぐこちらを見つめている。


「え・・・」


思わず言葉を失う。


見間違えるはずがない。


その容姿も、服装も、表情も。


全部――


俺自身が創作した従者、そのものだった。


「・・・? どうかなさいましたか?」


不思議そうに首を傾げながら、彼女は紅茶を机の上へ静かに置く。


「あ・・・いや・・・ありがとう・・・」


「いえ。ユウライ様のお役に立てることが、私の喜びですので」


そう言って、彼女は柔らかく微笑んだ。


(落ち着け・・・)


(ここは一旦、冷静を保つんだ!! 下手にボロを出すわけには!!)


心臓は今にも飛び出しそうなくらい激しく脈打っている。


目の前にいるのは、俺が考えた創作キャラクター。


そんな馬鹿げた状況を理解できるわけがない。


だが、動揺を表に出せば何が起こるか分からない。


(平常心・・・平常心だ・・・)


必死に表情を取り繕いながら、何事もないように紅茶へ手を伸ばした。


カップから立ち昇る湯気と香りは、夢とは思えないほど現実そのものだった。


(この紅茶・・・なんていう品種なんだろ・・・)


カップを口元まで運び、香りを確かめる。


どこか日本の紅茶にも似た、落ち着く香り。


創作をしていると、武器や建築だけではなく、食文化や茶葉まで調べることがある。


だからこそ、紅茶の知識も多少はあった。


「シェリス、今日の紅茶は何?」


シェリス。


それが、彼女の名前だ。


俺自身が生み出した、忠実な従者。


「本日は《アルティア茶園》で収穫された《ルミナス・ティー》でございます。渋みが少なく、花のような香りを楽しめる品種です」


「へぇ・・・」


一口飲む。


「・・・美味い」


口の中へ広がる優しい甘みと、ほのかな花の香り。


紅茶なんて飲んだことはない。


それなのに、この味が良いものだということだけは、不思議なくらい理解できた。


(俺が設定した茶園・・・俺が考えた紅茶・・・)


(そんなものまで存在してるのか・・・この世界は・・・)


(やっぱ・・・夢じゃない・・・)


紅茶の温かさ。


喉を通る感覚。


口の中に残る香り。


そのどれもが、あまりにも現実的だった。


(味も感じる・・・匂いもある・・・痛みもあった・・・)


(これって・・・本当に異世界に来た感じ?)


数秒、真剣に考える。


そして――


(うぉぉぉ!?)


心の中で、全力で叫んだ。


(夢に見た転生!! しかも俺が考えた世界!! こんなのアリ!?)


(それにシェリスがいる!! 俺の従者が本当に目の前にいる!!)


(最高じゃん!!)


顔に出ないよう必死に堪える。


だが、口元がわずかに緩むのを止められなかった。


「・・・ユウライ様?」


「いや・・・何でもない。少し、紅茶が美味しくてな」


「お気に召していただけたようで何よりです」


シェリスは静かに微笑む。


その姿を見て、俺は改めて確信した。


これは夢じゃない。


俺は本当に、自分が創った世界へ来てしまったのだ。


(そうと決まったら! 他の従者にも会ってみるか!!)


興奮は、まだ全く収まっていなかった。


むしろ、時間が経つほど胸の高鳴りは大きくなっていく。


だが、それを表情に出すわけにはいかない。


俺は必死にポーカーフェイスを作り、何事もないように咳払いを一つした。


「シェリス」


「はい、ユウライ様」


「俺はこれから、みんなの様子を見に行きたい。いいか?」


その言葉を聞いたシェリスは、少しだけ目を丸くした後、優しく微笑んだ。


「もちろんでございます」


「皆様も、ユウライ様がお越しになると知れば、大変お喜びになるかと」


「そうか」


(よしっ!!)


内心ではガッツポーズを決める。


(シェリスだけじゃない!! みんな本当にいるんだ!!)


(早く会いてぇ!!)


それでも表情だけは崩さず、静かに椅子から立ち上がった。


廊下へ一歩足を踏み出す。


磨き上げられた漆黒の床は窓から差し込む月明かりを静かに映し出し、壁には等間隔で絵画や装飾品が飾られていた。


歩くたびに、足音だけが静かに響く。


(おぉ・・・)


(廊下までここまで再現されてるのか・・・すげぇなぁ・・・)


俺が何日もかけて考えた屋敷。


部屋の配置から廊下の幅、照明の位置まで細かく設定したはずだ。


その記憶と、目の前の光景は寸分違わず一致していた。


(確か・・・この屋敷は契約領域の一人・・・クロードが管理してるんだよな?)


契約領域を司る従者。


屋敷の維持管理から来客対応、結界の維持まで全てを任されている存在。


「さすがクロードだな・・・」


思わず小さく呟く。


するとシェリスは少しだけ微笑み、


「はい。クロードは本日も屋敷全体の管理を行っております。何かございましたら、すぐに駆け付けるかと」


「そうか」


(設定通りだ・・・)


(本当に・・・俺の世界なんだ・・・)


胸の高鳴りを抑えながら、俺はさらに廊下の奥へと歩き出した。


廊下を歩き続ける。


屋敷の中は静かで、どこか落ち着く空気が流れていた。


(なんか・・・不思議だなぁ・・・)


(自分で考えた屋敷を歩いてるって・・・)


見渡す景色の一つひとつが、自分の記憶と一致していく。


その度に、ここが夢ではないという実感が強まっていった。


(それにしても・・・思ったより広すぎるなぁ・・・)


設定では何度も見ていたはずなのに、実際に歩いてみると想像以上だった。


「ユウライ様、こちらです」


シェリスが一枚の大きな扉の前で立ち止まる。


「研究室に着きました。中にはハル様がいらっしゃいます」


「分かった」


(来た・・・)


(二人目の従者!!)


(研究室も気になるけど、それ以上にハルに会えるのが楽しみなんだけど!!)


期待で胸が高鳴る。


設定では何度も書いた研究室。


魔導具や試作品、設計図が所狭しと並び、ハルが昼夜問わず研究に没頭している場所。


(どれくらい再現されてるんだろ・・・)


そんな期待を胸に、俺はゆっくりと研究室の扉へ手を掛けた。


コンコン


シェリスが静かに扉をノックする。


「ハル様。ユウライ様が、お会いしたいとのことです」


「え!? ゆ、ユウライ様が!?」


部屋の奥から、慌てた声が聞こえてきた。


ガタンッ!


ガシャッ!


「うわぁっ!? あ、危なっ・・・!」


「せ、設計図どこ行った!? あぁっ、そこじゃない!!」


中では何かを片付けているのか、物が倒れる音や慌ただしい足音が次々と聞こえてくる。


(ふふっ・・・)


思わず笑いそうになる。


(オドオド系の男にしたんだよな・・・)


(ハルらしいなぁ・・・)


設定通りというか、想像以上というか。


本人に会う前から「あぁ、ハルだ」と分かるくらい、その慌てっぷりは俺のイメージそのものだった。


数十秒後。


部屋の中から深呼吸をする音が聞こえる。


「し、失礼しました・・・ど、どうぞ、お入りください!」


緊張が声から溢れ出ている。


その一言だけで、扉の向こうにいるのがハルだと確信できた。


緊張が滲んだ声が、扉の向こうから聞こえてくる。


(ついに・・・)


(二人目の従者・・・ハルか)


胸の鼓動が自然と速くなる。


俺はゆっくりと息を吸い、研究室の扉へ手を伸ばした。


「さて・・・会いに行くか」


そう呟き、静かに扉を開ける――。

最後まで読んでいただきありがとうございました!

次回はハルとの初対面です。ぜひお楽しみに!

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