第9話 異端の成果発表
王立魔導学院・大講堂。
円形の壇上に立つと、視線が一斉に集まる。
貴族出身の学生、白髪交じりの教授陣――敵地に立った気分だ。
「レン・カミシロ。辺境出身の新入生が、発表だと?」
「たかが冒険者上がりが何を語るつもりか」
嘲笑が漏れる。
俺は一歩前に出て、堂々と告げた。
「――新しい治癒術と破壊魔法の実験結果についてだ。」
背後の魔導スクリーンに映し出されたのは、先日の探索で得たデータだ。
スライムの腐食組織、毒沼の成分、傷口修復の効率変化。
「まず、従来の治癒魔法は浅層の修復しかできない。
そこで、魔力を一点に収束させ深部組織の再生と毒素分解を同時に行う複合術式を開発した」
ざわめきが広がる。
「さらに、腐敗型スライムには**《デストラクション・ウェイブ》**を用いた。
アルカリ反応を応用して酸性組織を中和し、内部構造を崩壊させた――これは既存の“炎による焼却”より効率的だ」
教授陣の一人――白髪交じりの大柄な男が立ち上がる。
「……ふざけるな。」
威圧的な声が講堂に響いた。
王立魔導学院理論学部教授会議長、オルドラン・ヴァルクスだ。
「魔法とは神より授かりし神秘の御業――それを“反応”だの“構造崩壊”だのと貶めるとは、貴様は何者だ!」
俺は首を傾げる。
「神秘? 曖昧な言葉でごまかすな。
魔法は再現性のあるエネルギー変換だ。
理解できないものを“神秘”と呼ぶのは、思考停止だろう」
「なっ……!」
会場がどよめく。
一部の若い教授や学生が目を輝かせていた。
「深部再生だと? もし本当なら画期的だ……!」
「組織再生の効率化……軍医療でも役立つぞ」
だが古参教授陣は顔を真っ赤にして怒鳴る。
「魔法を学問の実験台にする気か!」
「そんな異端を認めたら学院の権威が崩れる!」
壇上に上がってきたリシェルが俺の隣に立った。
「落ち着きなさい。彼の術式は本物よ。
私は実地で確認した。結果が出ている以上、理論も検証する価値があるわ」
「リシェル嬢……!」
首席の言葉に会場が静まる。
俺は締めくくった。
「魔法は“わからないから神秘”で終わらせるものじゃない。
理解し、組み替え、進化させる――それが俺のやり方だ。
嫌なら異端と呼べばいい。
だが、結果は覆せない。」
沈黙。
そして――ざわめき。
この日、俺は学院で最も危険な異端者として名を知られることになった。