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「現世最強の科学者、異世界では科学の力で最強魔法使いに」  作者: Naoya


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第43話「廃村に刻まれた痕跡」

 白き尾根を越えた一行が目にしたのは、深い谷間に広がる灰色の影だった。

 そこはかつて人の営みがあったであろう村。しかし今は、屋根は崩れ、井戸は枯れ、壁は黒く焼け焦げている。


「……ここに、確かに人が暮らしていたはずなのに」

 リナが震える声で呟いた。


 ガルドは剣を抜き、周囲を警戒する。

「嫌な匂いがする。これはただの焼き討ちじゃねぇ……」



 レンは《オーディン》を起動し、残留魔力を解析する。

「波形が不自然だ。自然発火でも、普通の火炎魔法でもない……」

 画面に浮かんだ数式は、ある特異な現象を示していた。

「酸素濃度を強制的に下げた痕跡がある。窒息によって村を無力化し、その後で炎を使った……」


 オルドが目を細める。

「つまり、奴らは“呼吸”そのものを奪って村を滅ぼしたか」

「……人を殺すためだけの科学と魔法の融合」

 レンは拳を握り締めた。



 ミリアが倒壊した家の隙間から、金属の欠片を取り出す。

「博士、これを」

 それは円環を模した符を埋め込んだ小片だった。

 レンが顕微観察用の小型レンズを取り付け、詳細を調べる。

「やはり……ウロボロスの実験器具だ。魔力を媒体にして酸素分子を捕縛し、局所的に“真空領域”を作り出した痕跡がある」


 ガルドが唸る。

「人間を実験台にしてやがったってことか……!」



 一行はさらに調査を進める。

 井戸の底からは異形の獣の骨が発見され、それもまた符で汚染されていた。

「ここで魔獣を放ち、村人と同じ空気を吸わせ……生存率を観察した形跡がある」

 レンの声は低く沈む。

「科学を歪め、魔法と掛け合わせ、ただ“効率的に人を殺す方法”を試している……」



 その時、ミリアが弓を構えた。

「誰かが……見てる」

 森の影に、一瞬だけ人影が揺れた。だが次の瞬間には消えていた。


 オルドが杖を強く握る。

「監視されておるな。わしらの動きを逐一見張られている」


 レンは冷たい風を受けながら、仲間たちに告げる。

「……この廃村そのものが“警告”だ。

 ここから先、奴らは必ず姿を現す。幹部クラスが待ち受けているはずだ」


 夜の闇が迫り、廃墟の影が不気味に揺れた。

 一行は息を呑み、次なる戦いを覚悟した。

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