第25話 氷結の科学
深夜の学院。
静けさを破る足音が響いた。
――来たな。
《サーモ・センサー》が反応。
複数、研究室側から接近中。
俺はベッドから飛び起き、《オーディン》を開く。
「ページ切り替え、戦闘モジュール――起動。」
導体が淡く光り、魔力が収束していく。
「レン!」
リシェルが駆け込む。
「侵入者よ!」
「わかってる。」
次の瞬間、研究室の扉が爆破された。
黒装束の刺客が三人、煙の中から飛び込んでくる。
「オーディンを渡せ!」
「誰が渡すかよ!」
リシェルが雷撃を放ち、ダリオが剣を振り抜く。
だが、刺客は連携して攻撃をかわし、こちらに迫ってきた。
「――なら。」
俺は即座にページを切り替える。
「「プラズマ熱量、収束率99.7%。照準OK。
焼き尽くせ――
集熱閃!」!」
閃光と轟音が室内を満たし、刺客たちが一瞬動きを止める。
その隙にユリウスが防御障壁を展開し、エリシアが後方支援に回った。
――だが、これだけじゃ止まらない。
「なら……凍れ。」
俺は新たなページを開き、式を書き加えた。
「N₂を液化そしてΔT -196℃ ...よし、固相転移完了。
瞬間凍結!」
床から青白い霧が吹き上がり、侵入者の足元を瞬時に凍結。
彼らの動きが鈍り、まるで床に縫い付けられたように動けなくなる。
「なっ……!」
刺客の一人が驚愕の声を上げる。
「超低温の液化ガスで相転移させただけだ。」
俺は冷ややかに言った。
「動けば足首から砕けるぞ。」
形勢が逆転したのを悟ったのか、刺客は即座に煙幕を張り、氷を砕いて撤退した。
「逃げたか……!」
ダリオが悔しげに舌打ちする。
俺は《オーディン》を閉じ、深く息を吐いた。
「――狙いは本体だ。
《オーディン》を奪う気だったな。」
リシェルが険しい顔で頷く。
「もう学院の防衛だけじゃ足りない。
どこで襲われてもいいように対策が必要ね。」
「……わかってる。」
俺は机に新たな図面を広げる。
「次世代型の開発を急ぐ。
防御機能も、戦闘補助も――全て強化する。」
叡智を奪おうとするなら、世界を敵に回す覚悟で来い。




