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第30話 二人を繋ぐ

 リモート会議を退出した亜朱沙と駿は無言だった。ただ二人の間に置かれた襷を見つめるだけだ。亜朱沙はそっと襷に手を触れる。14年前の梓の心がここに込められている。なんと神々しい心だったろう。


「あたし、なんて子を苛めたんだろう。本当に自分が嫌になる…」


 駿の手が襷に潜らせた亜朱沙の手に重なった。


「梓ちゃん、体育大会のリレーが自信になってたんだ。もしかしてあれがなかったら、彼女は普通に避難して助かっていたかも知れない。トレーニングしたことが果たして良かったんだろうか…ってちょっと思う」


 亜朱沙は涙目で駿を見上げた。


「そんなこと言わないで! 『たられば』は幾らでも出てくるけど、リレーが梓の自信になったんだったら、それはそれで尊いことだったよ。梓の一部になってたんだよ。竹内君は間違ってない。結果が裏目に出ただけよ…、一人で走り回るような事さえなければ、こんなことにはならなかった」


 駿の手は亜朱沙の手を握り締めた。


「そう… だよね。だから、俺たちは、これからこういう悲劇を起こさないようにしっかり考えなきゃいけない。梓ちゃんが生命いのちと引き換えにくれた宿題なんだよね」


 亜朱沙は駿の手を握り返した。


「うん。手伝って欲しい。竹内君の業務範囲じゃないけど」

「いや、そう言う問題じゃない。これは俺たちに課された宿題なんだ。北端中学陸上部はただ走り回るだけじゃないって証明する。藪副キャプテン、俺も一緒にやるよ。梓ちゃんの名誉回復を」


 襷は14年ぶりに二人の心も繋いだ。



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