揚げ出し豆腐_01
ここはとある、城下町近くの繁華街にある
女性オンリーのバー「L‘stalk」
開店時間は金、土、祝前日の夜20時から25時まで
お店の特徴はつきだしが手作りで日替わりな所。
今日もそろそろ開店の時間。
本日は金曜日。
まだお客様から連絡が無い。
どなたが来るのかわからないから、つきだしとチャームは準備していく。
今日のつきだしは『揚げ出し豆腐』なので、揚げ出し豆腐にかける和風だしの餡を温めていたら、ドアベルが鳴った。
入ってきたのは、眼鏡をかけたセミロングの少しふっくらした女性だった。
「いらっしゃーい、ナカさん」
「こんばんは」
「今日は一番乗りですよ」
「みたいですね。21時なので誰か来ているかと思いましたけど」
「みんな残業してるのかもですね、何にしますか?」
「今日のつきだしは、何ですか?」
「揚げ出し豆腐ですよ」
「何がいいかな?焼酎かな?」
「麦のソーダ割、美味しいですよ」
「じゃあそうしようかな?」
「準備しますね」
私は麦の焼酎をメジャーカップで測った二階堂60ml、グラスで炭酸水と割る。
次いで揚げ出し豆腐を準備していると
「店長、カナコちゃんって最近来ました?」
「カナコちゃん?ああ。」
カナコちゃんは、ナカさんが気になっている女性の事だった。
声を掛けたら良いのに。と思うのだけど、この界隈は外見が優勢される事が多いのか、どうにも自信が出ないらしい。
「先週は金曜日に来ていたと、はい。麦のソーダ割りと揚げ出し豆腐」
「ありがとうございます、そうですか。店長も飲んでください」
「いいんですか?ありがとうございます」
勧められたので、同じものを準備する。
「じゃあいただきます。乾杯」
「乾杯」
私用に作った麦のソーダ割りのグラスをナカさんのグラスにあてる、チンと軽い音がした。
「カナコちゃんが来たら、お話してみたいですか?」
「んー」
ナカさんは、揚げ出し豆腐をお箸で割りながら考え込んだ。
「話しては、みたい……でも……自信が無い」
ナカさんは小さな声で話す。
「自信かぁ」
私はそう言って、麦ソーダを一口飲む。
「私、34歳だし……おしゃれじゃないし」
「カナコちゃん、30歳なのであんまり変わらないし」
「変わるよぉ、4歳って大きいと思うし、私は小さくて丸いし」
話している内に自己嫌悪に落ちてしまったのか、下を向いてしまった。
ナカさんはこう言っているが、大学卒業してから転職もせず一途に企業でSEとしてお勤めをしている。
おしゃれじゃないというが、ちゃんとメイクもしていてTPOを弁えた格好ができていて
話していても、優しくまじめな感じがしていて好印象だと思っている。
話題に上がっているカナコちゃんは、アパレル関係のお仕事に就いていて少し派手めの女性だ。
「気にせずにお話したら良いのに」
「可愛いからきんt「こんばんはー」」
「いらっしゃいませ」
カナコちゃんがやってきたのだった。
つづく