第二話
………..
……一体どれだけ歩いたのだろう。緊張と高揚感が徐々に冷めていき、急に肌寒さが強くなる。上がった息のせいで喉に乾いた空気が入って痛い。唾を飲んでも飲んでも潤わない。
どこに、行けばいいのだろう。自分の正体を知るにはどうしたらいいか。ヒジヒジキ族が何故自分を作ったのか、わざわざ言葉を話せないフリをしている訳も分からない。…いや、そんなことより。もう体力がほとんどない。村は、町は。きっと見つかるはずだ。もう少しだけ。もう少しだけだから…
あぁ、意識が遠のく。せっかく、少しだけ進めた気がしたのになぁ…
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目が覚めると。という展開を期待した。
しかし、アは死んだ。死んだというよりは、在るべき姿に戻った。意識体とそれを収めていた肉体に分離したのだ。肉体はどうやらヒジヒジキによって改造されていたようだったが、あくまで生体としての機能をいじっただけで生物の範疇ではあった。
肉体が動かない以上どこにも行けない。意識体はただ存在しているだけの時間を長く過ごした。
暫くして肉体はイノシシに喰われた。肉体に内在していたアの因子にイノシシは適合し、意識体はそれを乗っ取った。例のごとく顎が少し変形する性質を得て、イノシシとなったアは、アゴラー社会を捨て自然界で情報を得ることにした。