赤い炎のように
気絶してどのくらいが経っただろうか。俺は冷水をぶっかけられ目が覚めた。
「起きたか。動くなよ。」
話しかけてきたのは、つのが生えた赤い鬼のようなやつだった。左手には鎌、右手には手枷をつけている。何をしてくるのかわからないのでとりあえず動かないでおこう。
仰向けで寝かされているようだ。妙に指が痛い。
目線だけをずらし、横を見た。沢山の人が俺と同じように仰向けになっている。
そしてもっと奥には赤い砂で覆われた遺跡のようなものがあった。
さっき話しかけてきた鬼は忙しそうに他の人に冷水をぶっかけている。
そのシュールさにこの状況で思わず笑みがこぼれてしまう。
ピーンポーンパーンポーン〜
どこからか放送が流れてくる。音源が特定できない。そこかしこから出ているようだ。
「今から呼ばれる方はA号室までお越しください。朝霞さん、濱田さん、赤松さん、木下さん、根霜さん」
言い忘れていたが、俺は赤松広大。俺は呼ばれたのでA号室まで行くことにした。そういえば動いて良いのだろうか。動くなって言われたけど。
一応俺は不動を貫いた。すると、馬面の鬼が、「早く行け!」と怒鳴ってきたので俺は立ち上がって足速にA号室に向かった。
なんだよ!動くなって言ったのお前らだろ!
A号室の扉を開けると男女4人が既に揃って座っていた。気の弱そうなやつや、逆にいじめっ子のような気の強そうなやつ。いろんな奴がいる。
俺は空いている席に腰掛けた。それと同時に天井から放送が流れた。
「こーんにちわー!僕は黄鬼だよー。まずいきなりこんなところに連れてこられて戸惑っていると思うけど、今から教えるから大丈夫だよー。さて、ここは地獄。君たちは生前に罪を犯したからここにいるんだよ〜。」
ん?俺は何も犯罪なんて犯してないぞ?
「君たちの中にはあれ〜?僕なんもしてないよーと思っている奴もいるかもしれない。だけど実際行っちゃうと天国なんてないから。死んだ人はみーんなここに送られてくるんだ〜。生前にほっんとになんもしてない人なんていない。呼吸するだけで環境に害するし、虫を殺すなんてここじゃ重罪。まあここまでいえばわかるよね〜。」
すると、突然気の強そうな奴が立ち上がった。
「ふざけんじゃないわよ!そんなのあんたらもやってるし生きていくために仕方ないことでしょ」
怒号がA号室に響く。
だが、黄鬼は動揺など1mmも感じていないような口調で話し出した。
「だ〜か〜ら〜...それが問題なんだよ!」
最初は意味がわからなかった。え?生きていくことが問題?って
「人間が生きることで他の沢山の生き物は食べ物にされたり見せ物にされたり。それこそどうはまたからしたら地獄だと思うよ。」
A号室は静まり返った。
「まあ、君たちには生き返るチャンスをあげよう。そのためにはいくつかの試練をクリアしなければならない。他の試練はそんときそんときで言うからねー。おまちかね!最初の試練は〜」
黄鬼は大袈裟に思えるほど息を吸った。
「赤い炎のように!」