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第一部 生命の二重らせん開弦(Type I string theory) (https://en.wikipedia.org/wiki/Type_I_string_theory) 

 0000(フォーゼロ)の扉を開くと、時和大学の主人公の二人は眩い光に包まれた。


 二人は意識を失うと、一つの音が彼らを満たした。




―――――――――

――――――

―――




 海の音。

 海。そこでは、無数の命がさざ波のように誕生し、儚く消えていく。その過程は永劫なる回帰を繰り返し、やがて遂に、一つの帰結を迎えていくだろう。


 太陽が海を照りつける。

 晴天の中、誰かが浜辺で遊んでいる。一人の少女のようである。砂の上の小石や貝殻を見つけて、夢中になっている。大きな海は彼女の前で広がっているというのに。


「滑らかな小石、比較的綺麗な貝殻、ざらざらした砂……そしてその先の海の地平線……あれは?」


 しかし、彼女の浜辺での遊戯も途中で中断されることになった。


 彼女の手に乗った、滑らかな小石、比較的綺麗な貝殻、ざらざらした砂の先に見える海に、何か浮かんでいたのである。


「……?」

 彼女は、それらの物体を手に持ちながら、顔をさらに海に近づける。


 そこには衝撃の光景があった。


「あっちょんぶりけ!」

 彼女は、まるで洗礼のように水から浮かび上がる人間の体を見て、驚愕した。


 成人した二人の体であった。和服を着用した中年男性と中年女性だろうか。二人の体には傍からでも分かる程の外傷が刻まれており、迅速な対応が必要とされることは明らかであった。

 そして、時和大学という刺繍が、和服の端の方に刻まれている。


「ブラックジャック先生!!!」

 ピノコは先生の名前を叫びながら、浜辺から自宅に走っていった。




―――――――――

――――――

―――




 自宅のリビングルーム。ブラックジャックは椅子に座り、

「……」


 ブラックジャックは、一つの光り輝く真珠を手にとって眺めていた。

 すると、どこからか声が聞こえてくる。叫び声だ。声の主は、明らかにピノコである。


「ん……?」


 勢いよく扉を開けて、ピノコは飛び込んできた。


「ブラックジャック先生!!!大変です!!!」

「ど、どうしたんだ?」


「ブラックジャック先生、大変です!人が海から流れてきたんです!!!」




―――――――――

――――――

―――




 洞窟を通り、浜辺に辿り着くと、そこには二人の男女の体が打ち上がっていた。


「心中だろうか……」

 と、ブラックジャックは呟きながら、取り敢えず、作業に移った。


 ブラックジャックは、浮かび上がってきた体に対して水を頭部に流して、海から引き上げると、

二人の体を自宅まで運び込んだ。


 浜辺から自宅まで運んでいる最中に、ブラックジャックは謎の二人の体の状態を調べる。

「どうやら、息はしているようだ」




―――――――――

――――――

―――




「ピノコ、今すぐ手術を始める」

「分かったのら!」

 ブラックジャックは、手袋を着けながら、宣言した。


「うーむ……」

 ブラックジャックは瞬時に観察を済ませる。


「女性の方は軽傷だが、男性の方は深刻だ」

 二人の傷は大差があり、女性の方は命に別状はないようだ。しかし、男性の方は胸から心臓辺りに刀のような金属の破片が突き刺さっている。放置すれば直ぐに死に至る可能性もある。

「どうやら、何かしらの戦闘で、外傷を受けたようだ」

 喧嘩、それとも、一体どのような原因なのかは把握できないが、深刻であることは確かである。


「ピノコ、メスを」

「はい!」

 しかし天才外科医であるブラックジャックにとっては、そんな深い傷でも技術的には問題はない。




―――――――――

――――――

―――




「……」

 心臓に突き刺さった金属の破片を取り除くことは極めて危険な手術である。もし繊細さが欠けたのならば、一瞬で心臓は破裂し、致死に至ることもあるのだ。


 鋭利な刀の破片は、不思議と、心臓を貫くことなく、突き刺さっているらしい。その金属片に沿って、ブラックジャックは、心臓周辺部分を明らかにしていく。


 まずはメスで体の内部にへと切り込んでいき、内蔵部分を把握しようとすると、


「これは……糸?……」

 ブラックジャックは思いもよらぬ事態に衝撃を受ける。


 心臓の外側から何か、糸状の物体が二本通っているのだ。まるでペースメーカーのように。


「……?」

 さらに、心臓の内部を覗いてみると、そこには衝撃的な光景が広がっていたのだ。


「二重らせん構造の糸……?」


 心臓外部と内部は、謎の糸が二重らせん構造で繋がっていたのだ。


「そうか、そういうことか!」

 男性の心臓内部には、謎の糸が二重らせん構造で埋め込まれているのだが、一つの糸ともう一つの糸が螺旋状に絡み合っており、胸の表面から見て、その奥にある方の糸が、元々は刀であっただろう、その金属の欠片を食い止めていた。


 つまり、もし糸がなければ金属破片は心臓を貫いて、今頃は命を失っていることは確かである。


「な、なんてことだ……」

 ブラックジャックは驚愕した。


 調和した神の干渉(Harmonious Divine Intervention)


 神の奇跡とでも形容したくなるような、そんな衝撃。


「謎の糸があったことで、刀が心臓を貫くことを妨げているだと……?」

 そもそも、この糸は一体何なんだ?そして、どうして心臓の中に埋め込まれているんだ?一体、誰がそんなことを?

 また、外傷的に判断すれば、この金属の欠片は刀のようなものであり、きっと何らかの戦闘で食らったものだろうし、その勢いは途轍もないものだったはずだ。だからその攻撃を止めたとすれば、心臓の糸は相当な強度を誇るのだろう。


 あらゆる疑問が渦巻く中、ブラックジャックは手術を続けていく。



「……」


 取り敢えず、刀の金属の破片は、一本の糸の一点に、食い込んでおり、取り外す必要がある。

 ピノコとの華麗なる連携を取りながら、ブラックジャックは、心臓の中の金属の欠片を取り除くことにした。

 

「よし、これで大丈夫なはずだ」

 そしてブラックジャックが、金属の破片と糸を引き剥がすと、糸は面白い現象を起こした。


「ん……?これは……音?」

 ブラックジャックが、奏の心臓の金属を取り除いてみると、旋律が奏で始められた。時和奏の心臓にある糸が奏でるのは、美しい旋律であった。




 ―――オープニング―――


 悲しげに咲く花に 君の面影を見た――


 Janne Da Arc - 月光花

 https://youtu.be/tHk4thfcL9Q

 



 ”神のようなメスさばきで奇跡を生み出す命の芸術家 時代が望んだ天才外科医 ブラックジャック”




 ―――9999 第一部 生命の二重らせん開弦―――

 

 (Type I string theory)

 (https://en.wikipedia.org/wiki/Type_I_string_theory)


 ブラックジャック カルテ9999「時を奏でる生命の糸」


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