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両手にヒロイン、どうもアシスト役です  作者: riyu-
第二章 どうも、シスター見習い(仮)です
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第6話 攻略対象様のキーワード

今回も説明多めです。お許しを。

 どうも、シスター見習い(仮)です。

 水晶の儀から気づけば早いもので、もう3年。

 魔法の塔に来てから明日で3度目の誕生日を迎えます。


 ◇◇◇

 白い光に包まれた後、あれよあれよという間に魔法の塔へと連れていかれました。

 一緒に部屋を出てきたリアス様が、国王様と一緒に待っていたお父様、お母様に、私が精神魔法のポテンシャルをもっていること、習わしに従い魔法の塔で10歳まで預かることなどなどを説明されたらしい。


 その間、私は、軽い時差ぼけのような状態で頭がぼーっとしていて、両親に別れの挨拶をすることもできないまま。気がつけばリアス様の転移魔法で、魔法の塔の本部、通称「碧の塔」に連れてこられておりましたとさ。

 なんでもあの水晶の塔は、リアス様の魔法により異なる次元に存在しているらしい。リアス様の魔法がなければ、1時間過ごしたはずが、外では10年経っていました~なんてことも起きかねないだとか。さらに、部屋の作成者であるリアス様以外は、外に出ると本来の年齢に急激に戻される(というか進められる?)らしく、中で過ごした時間と外で過ごした時間の乖離が激しいと、体への負担が大きいそうだ。


 っていう説明は、魔法の塔の創立者一族であるファリオット公爵家の次男、ラウル・ファリオット様(8)にされた。ちなみに、彼もアプリ版攻略対象です。 

 リアス様が、「じゃ、また呼んであげるから」というよく分からない言葉を残して去った後、世話係として部屋に入って来たのが彼、まさかの攻略対象。

 ただでさえ痛い頭が悲鳴をあげたようで、私、気を失っちゃいました。てへっ☆



 彼のことは、攻略対象プロフィールの最初の方に出てきたから、顔と名前だけはなんとなーく覚えていた。そのせいで、逆にキャパオーバーしちゃったんだけど。

 あっ、アプリ版で最初に追加された攻略対象5人のうちのひとりじゃん……ってなったわけです。

 まあ、それ以外の情報は思い出せなかったんですけどね。いやー、こんな記憶力で、ちゃんとアシスト役つとめられるのかなー、っていう不安が、その後、目覚めた瞬間強烈に襲ってきましたわ。



 体調不良は2日くらいで治まって、早くも3日目からは精神魔法の使い方を学んだり、碧の塔で軽くシスターたちのお手伝いをしたりする日々が始まった。

 碧の塔では、(リアス様以外の)人類は皆平等ってな考え方のもと、一応王家の血を(つまりリアス様の血も)引いている公爵令嬢の私も、リアス様に仕えるシスター見習いのひとりとして朝のお掃除とか、お洗濯とかの当番も任されました。(まあ、貴族であることを考慮してか、手が荒れたり、汚れたりする仕事はさりげなく回されないようになっていましたが。)

 基本的にはみんな平等!ってな雰囲気で、前世庶民の記憶が戻ってしまった私にとっても過ごしやすい空間ではあった。


 ただ、精神魔法の使い手ってのは、ちょっと距離を置かれてしまうみたいだ。上級シスターは目を合わせてお話ししてくれるけども、今までニコニコ話してくれていたのに、手首のブレスレットを見た途端に壁を築かれるというか、目を合わせてくれなくなる人も多い。

 ひとりでいるのは好きな方だが、申し訳なさそうに目をそらされるとちょっと悲しい。


 このブレスレット自体は、一般に魔法制御が未熟な子につけられるようなもの。ただ、魔法の塔でこれをつけている子は皆、精神魔法の使い手だ。

 精神魔法自体はリアス様も使えるものだから、リアス様を崇めるこの組織で、差別されるようなことはない。ただ、やっぱりみんな心を読まれるんじゃないか、みたいな思いがあるのだろう。



 ちなみにラウルも、精神魔法の使い手で、それも100年に1度レベルのポテンシャルを備えているらしい。

 初代ファリオット卿がリアス様を精神魔法では凌ぐほどの使い手だったらしく、彼の家はこれまでにも強力な精神魔法の使い手を輩出していて、それもあってファリオット公爵家とつながりの深い魔法の塔が、同じ才能にめぐまれた子どもたちを預かり、初期教育を施すようになったそうだ。

 水晶の儀の結果は、国王様とご両親にしか伝えられないが、逆にいえば両親には知られてしまう。当初は、そういう子たちをその両親が自主的に魔法の塔に連れて来たことが始まりのようだ。親としてもどうしてよいか分からなかったんだろう。だけどその後、魔法の塔で教育を受けなかった子たちが、親に捨てられたりいじめられたりして、魔力を暴走させる事件が続いて起きて、リアス様の助言もあり、魔法の塔に預けることが習わしとなったそうだ。


 ただ、そうやって半ば強制的に魔法の塔に集めたら、ファリオット公爵家が彼らを独占することになって危険じゃないのか、って意見も貴族からは出たらしい。だけど、魔法の塔自体が今や公爵家と独立した機関として成熟しているし、そもそもファリオット公爵家は王家との血縁的なつながりも最も濃い一族だから信用できるんじゃね、ってことになったらしい。


 まあ、精神魔法の使い手って役にも立つけど、危険でもあるから、どの家も手綱を握り切る自信もない、って最終的には思ったんだろうね。ってラウルが言っておりました。



 さて、このラウル、攻略対象なだけあって幼くして既に大層お美しいんですが、頭もよいし、性格もものすごくよくて、天使のような御方です。ええ。

 魔法の塔に10歳まで住まなければならず、9歳までは家に帰ることもできないって言われたとき、泣きそうになった私の手を静かに握ってくれたこと、私、忘れません。



 そんな完全無欠なラウルのキャッチコピーは、「心を操る最強魔術師~君の心を奪いたい~」。

 すごくギザな感じがして、個人的には作者に異議申し上げたい。



 あ、ちなみに、読み切れなかった攻略本は、リアス様が毎週1時間だけ水晶の塔に呼んでくださることになって解決しました。水晶の塔は、異次元?異空間?にあるから、魔法の塔から出ることにはならないし、おっけーってことらしいです。


 毎週リアス様のところに行っているってことは、お世話係のラウルを含め塔の人々にも秘密。理由を説明するには、予言者であるってことまでいわなきゃならなくなるし、そしたらいろいろと面倒なことが起こりそうだしね。

 ただ、リアス様よ、夜遅くにベッド脇に現れられるのは怖いのでやめてほしい。



 で、まずラウルの攻略ページを読み込んだわけです。身近な人なわけですし、知ったうえで読めば頭にも入りやすいですし。

 ……乙女ゲームでありがちな攻略対象の悩みや恋の障害が、ラウルに今後辛いことや悲しいことが起きる系ならば、それを見守るしかなくても、あらかじめ覚悟しておきたい、って思いもありました。


 だから、おそるおそる開いたわけです。そのページを。



「アンネ?」 


 そしたらですね、なんと驚くことなかれ、


「……ア、ン、ネ!」

「ふぎょっ!」


 あらま、ラウルがいつの間にか目の前に来てました。

 気づかなかった私も悪いけれども、そんなに近づいて顔を挟まないでほしい。心臓に悪い。


「ふふふっ。ほんとにアンネは考えごとに夢中になると周りがみえなくなっちゃうよね」


 ラウルの柔らかい笑顔がまぶしい。そんな顔してもらえるのはアンネさんだけですよ、ってこの前、後輩のシスター見習いに言われた。

 なお、私はこの塔に、正式なシスターになるためではなくて、あくまで精神魔法を暴走させない訓練をするために住んでいるだけだから、シスター見習い(仮)と心の中で自称している。

 だから、後輩のシスター見習いに先輩風を吹かせないよう、日々気を付けているのだ。


 ……じゃなくって、そう!ラウルの話!

 なんとなんと、こう書いてあったわけですよ。


 ♯シスコン


 って!!

お読みくださりありがとうございました。


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