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両手にヒロイン、どうもアシスト役です  作者: riyu-
第一章 どうも、導く者です
5/56

第5話 失敗したら繰り返すってことですか

少し説明多めです。

「あと5分じゃな」


 手元の銀色の懐中時計もどきが、ちかちかし始めた。


「どうじゃ、やっていけそうか?」


 セリフだけ見たら優しげだが、声が笑っている。たぶん目も笑っているだろう。

 あまり礼儀にかなっていないが、リアス様の目を見て答える余裕もない。

 ひとまず、曖昧な笑みを浮かべておく。あとは、察してくれ。


「ふふふっ。まあ、よい。時間になれば自動的に部屋の外へ追い出すからの」


 ああ、無情。


 一瞬、どうにかなるかと思ったけれども、読めば読むほど、どうにかならない気しかしない。

 そもそも、攻略対象が多すぎる。結末が物騒。アシスト役、仕事量、鬼畜!


 ひとまず攻略対象の把握とありうる結末だけ確認しようと思ったものの、その攻略対象の把握でつまずいた。

 あらすじやら、表紙やらに出てくる攻略対象は隠しキャラを含めても全部で6人。

 だけども、どうやらこのゲーム、スマホのアプリバージョンもあるらしい。攻略本に書かれているってことは、この世界はそのアプリ版なんだろう。


 そんでもって、このアプリ版ではめちゃくちゃ攻略対象が追加されている。クリスマスやら正月やら、各イベントごとに5人ずつくらいのペースで増えたようで、非常に恐ろしいことに最終的には50人まで増えている。いや、よくぞ50人で止まってくれたと制作陣を褒め称えるべきなのか……。

 そんなこんなで何もしないよりましかと思って、イラストとキャラ名とキャッチコピーをなんとなく覚えようとしたら、それだけで時間が溶けた。ははは。


 しかもですね、悲しいことに、アシスト役はアプリ版でもきちんとお仕事をするようで、ヒロインが運命的な出会いをした後、アシスト役の働きを経て再会するパターンがまあ多い。あはははは。


 公爵令嬢だから私が積極的に何かしなくても会う可能性のある人は多いけれど……。そもそも、私、前世の頃から人の名前を覚えるのは苦手なのだ。リアス様除いても55人でしょ?で、そのストーリーに関係してくる人たちまで覚えるってなったら、パンクしちゃうわ。


 しかも攻略本の目次を見るに、これハーレムルートとかあるんだよなあ。ヒロインがハーレムルートに入らないように邪魔したりとかしちゃだめなのかなあああ。


「そうじゃ、そなたに基本的な説明をするのを忘れておった」


 え、リアス様、あと3分くらいなんですけど。


「この水晶は、魔法属性とそやつの役割を示すものじゃと習っただろ?」

「はい」

「それは、正確ではない」

「は?」


 あら、いけない、変な声がでてしまったわ。


「この水晶は、確かに、その色で適した魔法属性を示す。そなたのこれは、精神系。それもこの濃さ、美しさからすると、相当強い。磨けば、幻想を見せる術だけじゃなく、心を読む、操る術まで体得できるであろう」


 おおー。もはやチートキャラじゃん。でもそれって結構危険では。


「精神系は、各世代にひとりくらいはおるが、使い方を誤れば非常に危険な力でもある。それは分かるな?」

「はい」


「じゃから、精神系魔法の使い手は、判明し次第、いったん魔法の塔の預かりになる」

「……へ?」


 魔法の塔ってのは、名前からするとちょっと怪しげだが、リアス様を信仰する国内最大の魔法研究機関のことだ。うん、言い換えてもちょっと怪しいかも。

 「信仰する」ってだけあって、ちょっと宗教ちっくなところもあり、国教のような位置づけも与えられている。国内の各地には教会のような見た目をした塔があり、そこでリアス様に仕える人々は「ブラザー」「シスター」と呼ばれている。

 もともとは、リアス様の一の忠臣であったファリオット卿が作った私的な集団で、今もファリオット公爵家が中心的な役割を果たしている。ただ以前、暴走したことがあるらしく、名誉会長というか監督者的なポジションでリアス様も関わっているらしい。(と、後でシスターに聞いた)


「で、この役割だとかいわれている文字じゃが」


 時間がないのを分かっているからか、リアス様の話す速度がどんどん速くなっている。

 いや、前世の記憶があっても一応私6歳児なんで、脳の処理速度が追い付かないんですけど……!


「この一つ目の文字、そなたの場合だと『導く者』だが、これは神が与えし役割じゃ」


 はあ。ええ、ヒロインをアシストしろってことですよね。


「じゃが、これは役割というよりも、願いに近い」


 ほお???


「そんで、この二つ目の文字、そなたの『予言者』は、役割というよりも使命じゃ」


 ああ。


「これを果たさねば、そなたは何度もこの世界をループすることになる」


 そこの説明をもっとほしいが、残り時間は1分を切っている。


「3つ目の『転生者』は、……とくに意味はない。」


 ……意味ないんかーい。


「じゃが、この文字を見て、転生者は前世を思い出すらしい」


 じゃあ、意味あるじゃん


「ループすれば、ここに『逆行する者』の文字も刻まれる」


 わーい、じゃあまだ1回目のなのねーやったー(棒)。いやいや、そんな文字、絶対見たくないです。


「『予言者』は、未来を予言する。正確には、予言の書を読む資格を与えられた者じゃ」


 これですよね、全頁カラーの乙女ゲームの攻略本ですが。


「じゃが、そなたは単なる『予言者』であって、神ではない。そなたに与えられし役割は、そこに書かれた道すじを、そこに書かれた主人公が歩めるよう、時に助け、時に見守る存在にすぎぬ」


 銀の懐中時計がまぶしく光り始めた。


「よいか、アンネヘルゼ・リヴァルウェン。そなたは、何も変えてはならぬ」


 部屋全体が真っ白に包まれた。

 

お読みくださりありがとうございました。



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