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両手にヒロイン、どうもアシスト役です  作者: riyu-
第五章 どうも、雲行きが怪しくなってまいりました
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第48話 宣戦布告

*一部表現を修正しました(24/8/25)。

 尻もちをついたハンナを冷ややかな目で見つめるフリーダ嬢。ちらりと他二名を見ると、モネリア嬢には止める気がなさそうだし、ポーラ嬢も、大きなあくびをひとつしただけ。


「ほら、リア。私からも減点しなよ」

「ラキ、あなた、まだ諦めてないのね」


 少しあきれたような顔をしてモネリアが、「ポーラ、-1」、と口にする。

 ちらっとノートを確認するポーラ嬢。


「はぁー。人が増えたおかげで、ようやく抜けられるかと思ったのによー」

「……ラキ、分かっていると思うけど」

「分かってる。リアが1日に減点できる最大数は」

「ちょっと、ラキ、邪魔しないでよ」

「なんだ、リダ?お前はもうちょっと頑張れよ」

「リア!」


 なおもわちゃわちゃし続けている女子3人。本当に仲が悪いのか?むしろ、めちゃくちゃ仲良くないか?

 モネリアは、また諦めたような顔をしながら、もう一度「ポーラ、-1」と告げた。親切に、これは言葉遣いの悪さの分。これ以上、口が悪くても減点しませんからね、という説明まで添えて。

 軽く舌打ちをするポーラ嬢。まだまだ減点を狙っている様子だ。


「で、本当に質問はないのかしら?」

「お三方は、第二王子の婚約者になりたいのではないのですか?」


 モネリアの再度の問いに対し、椅子を元に戻したハンナが食い気味に答える。


「自分で戻すのはよくないわ、ハンナさん。-1ね」


 容赦なく減点するモネリア様。だが、そこに悪意の色はあまり見られない。

 なんというか、風紀委員が服装チェックしている感じ?


「私は、見ての通りだ」


 全身でなりたくないことをアピールするポーラ。それでも言葉に出さないのは、王子妃教育の成果か。


「私はなりたいわよ!……もし私じゃなかったとしても、リアかラキじゃなきゃ認めない」


 後半のセリフを、ぷいっと顔を背けていうフリーダ嬢。ツンデレか。

 それをほほえまし気な雰囲気で見守る二人の幼なじみ。

 残り一名は、答える気はなさそうだ。代わりにフリーダが、何かを言いたげな目でこちらをチラ見している。


「……あなたたちはどうなのよ」

「リダ」

「なによ、二人だって気になってるでしょ」

「私は別に」


 ラキことポーラは足を組んで座りながら、さあ、私から点を引きな、という熱視線をリアことモネリアに向けている。が、もはやモネリアは、ポーラの方向に顔を向けるのさえやめたようだ。


「……私は」


 ハンナが口を開き、ためらうような視線をこちらに向ける。やめてくれ、たぶんあなたがここにいるのは私のせいなんだけど、あなたがなんて説明を受けたのか、知らないんで。


「まだ、リファリオ様とお話しするようになって、ひと月も経っていません。……だから、分かりません」

「なによ、あなた!あれほど素敵なリオ様のことを悪くいうつもり?!」


 リダことフリーダ様のつり目がさらに吊り上がる。そこは安心するところじゃないのね。

 っていうか、リファリオ様、愛称リオなのか。さすがに、内輪だけの愛称なんだろうけど、それ、第一王子と被ってるってわかっているのかしら。


「いえ、ただ、皆さんの邪魔をする気はない、と言いたいだけです」

「どういう意味?あなた、何様のつもりっ!」


 手もとにはいつの間にか扇子が戻っている。彼女の得意魔法である風魔法が発動する兆しが再び見えた。


「ほらほら、そうやってすぐ怒るから減点されるんだろ?」

「ラキは黙ってて!」

「いいじゃん、別に。私だって、こんだけ長い間苦楽をともにしてきた幼なじみには幸せになってほしい、って思ってるんだ」


 その「幼なじみ」とは、この二人のことだろう。王子も含めたら三人か。

 ポーラ嬢、単なる変人かと思っていたが、愛情深いタイプのようだ。

 さっきからの行動を見る限り、我々新顔にも心を砕いてくれているようだし。


 ユーリ(お姉様の幼なじみ)とは別タイプの女子にモテるタイプだな。これは。なんてことを思っていたから、思いっきり目が合った瞬間、思わず心がときめいてしまった。あぶねえ。

 まるでこちらの気持ちを読んだかのように、クスリと笑った美女は、再びハンナに目線を戻す。


「ハンナ先輩がSクラスに上がって、生徒会にまで入って。今や、あなたを養子に迎えたいっていう侯爵家がいくつもあるらしいじゃないですか」

「……」

「もともと王家としては、土属性の令嬢を第二王子の王妃にしたいって考えていたんだろうし、身分問題まで解決される目途が立っているあなたが、あの事件を起こした、なんて私たちは思ってませんよ」


 昨日、一昨日と使い魔スノウ、従妹アリアのおかげである程度1学年の噂は集めたつもりだ。

 それらの噂は細かいところではずれがあるものの、大まかにいうと、第二王子婚約者候補筆頭にまで浮上してきたハンナが、最後の不安要素をつぶすために、「王太子妃婚約者の妹」「四大公爵家直系令嬢」であるアンネヘルゼ・リヴァルウェンに濡れ衣を着せつつ、現時点での有力候補3人をまとめて始末しようとした、というものだ。

 その出所について、アリアは、明確な根拠はないが、どうやら1学年のSクラスの中にいると思う、と言っていた。そうでなければ、ここまで広まらないし、信じられていないはずだ、と。

 つまり、この三名の婚約者候補のうちの誰かが、いまだ噂が根強く残る潜在的候補者二人をまとめて排除しようとしたのだ、と。


 ……だから、今日、私たちがこの場に現れたとき、ひと悶着どころか、手荒い歓迎を受けることは覚悟していた。なのに、彼女たちからは、感じないのだ。私たちが自分に危害を及ぼそうとしたのではないか、と警戒する色も、どんな手を使ってでも絶対に婚約者になりたい、という切実な思いも。


「アンネヘルゼ先輩は、わたくしたちのこと、疑っているのでしょう?」

「……なんのことかしら?」


 これまた、まるで心を読んだかのようにモネリアが、突然こちらに話を振った。


「あの噂が、わたくしたちのクラスから出たのだと思っていらっしゃいますわよね」

「……」

「ハンナ先輩は、そのせいで、大変居心地悪い思いをされているとか?」


 大変居心地悪い、なんてものじゃないだろう。昨日は、確か3学年Sクラスのルチアーナ様の取り巻きに呼び出されていたし。あの派閥中心に、初等部において学年を問わず、この2日間で急速にハンナへの敵意が膨れ上がっている。教室でさえも、何人かハンナを無視し始めたり、詰問したりする人がいたようだし。


「わたくしたちが何か言うのもおかしな話ですし、その件については静観させていただこうと思っておりますの。悪く思わないでくださいませ」

「私は、」

「リダ」


 フリーダが何か反論しそうになったところを、ポーラが止める。

 そんな二人を愛おし気に見る聖母のようなモネリア様。


「まさかお二人とこの”花の宮”でお会いすることになるとは思っておりませんでしたけど」


 花の宮。場所非公開の、離宮の一つだ。かつては身分のあまり高くない側室の居住スペースとして使われていたが、現在は主に王家の男子の婚約者を教育するための施設としての機能を有する。上からみると花の形をしているらしい。数世代前、庶民の間で流行した「花の宮」という恋愛小説の舞台でもある。


 これまたどういうシステムかは知らないが、スペシャルラウンジの地下迷路のひとつのドアが、この花の宮の1階中央の扉とつながっている。花嫁候補は、候補が5名以下に絞られ、最後の仕上げをするとき、この空間を使うこととなっている、らしい。昨日、私のもとにやってきた使者の説明によると、今後、週末はここで過ごすこととなる。そして、各週末時点で最下位となった候補者は、翌週の平日放課後も毎日補習のため、ここに来ることが義務付けられる。


 ちなみに、攻略本では、平民出身でマナーに疎いヒロインは、当然のことながらしばらく最下位をとり続ける。そんで、毎週受ける補習授業のなかで、アンセニョ先生の好感度を上げたり下げたりすることになるわけだ。ときにムチ打ちされ、ほんのときたま褒められ、罵倒される、という生活が続いて、どうやって先生を好きになるのか、私には分かりませんけども。

 まあ、ミニゲーム(簡単なパズルゲーム)をクリアして、1位をとったら本来の人格に戻るっぽいし、攻略した際のスチル、’’本当の笑顔’’の実物を拝みたい思いはちょびっとあるけどさ。

 とはいえ、そんな物語を私はあの人と始めるつもりはないし、ハンナにもやってほしくはない。じゃないと、ヒロインの出る幕がなくなっちゃう(それに、王子妃教育の担当者が、優秀な候補者と相思相愛関係になるなんて、許されない恋以外の何物でもない。実際、バッドエンドの場合、二人とも処分され、アンセニョは死ぬことになる)。



「お二人の事情を聞く気はございませんわ」

「私は!」

「リ、ダ」

「なんでよ!なんで二人は、この人たちのこと信用できるわけ?私は、絶対、認めない!」

「フリーダ、-1」


 容赦ないモネリア様。ノートの数字がまた変わる。1位、強いな。いくら減点の上限があるとはいえ、これをうまく使えば、彼女の順位は不動では。


「とはいえ、お二人のこと、応援することもできませんの。先輩とはいえ、今までどおり、全力でやらせていただきますので。……先輩方、改めてよろしくお願いいたしますね」


 にっこり微笑む。開かれた扇子の奥の瞳では、何かが、もがいていた。 

お読みくださりありがとうございました。

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