第44話 協力者、誕生
*かなり遅くなりました。もうそろそろ定期更新に戻します……。頑張ります。
*タイトルと表現を修正(24/7/27)
「アンネお姉様!お加減いかがですか?」
部屋に入るなり、わたし、とっても心配しました!という副音声も聞こえてきそうな速度で従妹がかけよってきた。
「アンネお姉様、少しお痩せになられたのでは?」
まだ1日しか立っていないものの、主観的には一気に2キロは落ちている気がしているから、それは見た目にも表れているのだろう。
曖昧な笑みを浮かべ、お見舞いに持ってきてくれた果物とお花のお礼をいう。
「わぁ……やはりアンネお姉様も人気者なのですね。」
身内として鼻が高い!というお顔。身分差はわりとあるんだけど、血縁上は従姉妹だし、別に口に出して変なことを言ったわけではないのでスルー。
確かに、今日だけで私の部屋は一面お花畑のようになっている。壁際には、他にも療養中に読む用の本やら、果物やら、ちょっとした高そうなお菓子やらが所狭しと並んでいる。
ただねー、もらったらさ、お礼のお手紙を書かなきゃならないわけですよ。特に我が家(というか母)の方針として、どれだけ身分が低い相手であっても、自筆で手紙を返すように、って常々言われてきたし。あ、もちろん、今後、付き合いたくない相手には、ノーリアクションでOKらしいんだけどね(入学前に、リストでもらった)。
そういうわけで、このお見舞い品の山は、今週末の課題の山とニアリーイコールなんです……。
「ごめんなさいね、きちんと身支度もしていなくて」
「いえ!」
お見舞いに来たにしては、目が輝きすぎているよ、アリアさん。
まあ、後で来てくださるらしいお姉様と、さっき、ちらっと来た同級生シャルネ(公称・女性)のほかは、直接のお見舞いを断っているから、特別扱いされてる、私、特別っ!!ってなっているんだろう。ははは、かわいいなー。
「昨日は、あなたたちが主役の会だったのに、倒れてしまってごめんなさいね?」
「何をおっしゃいますか、アンネお姉様!むしろ、わたくしたちを、守ってくださったこと、Sクラス一同、心より感謝しておりますのに!」
強い。圧が、強い。一応非公開の場なので、私が軽く謝罪するのは、マナー的にも一応セーフなはずなんだが。
とはいえ、聞きたい話のきっかけを、そっちから出してくれたのは好都合だ。
「これでも生徒会役員だから、皆を守るのは当然よ」
「さすがですわ。あの火の鳥も素晴らしかったですし。私も、ローゼお姉様やアンネお姉様、フランお兄様、フラメお兄様に恥じないよう、なお一層努力いたします」
お、おう。
「でも、もう、新入生にも知られてしまっているのね、私が倒れたことも、何が起きたのか、も……」
少々オーバーだが、わざと顔を斜め下に向け、自分の髪で顔を影にする。
さあ、言っておくれ!
「アンネお姉様が懸念されるようなことは、何もございませんわ!」
むむっ、抽象的~。
「まさか、神聖な生徒会に、あのようなことをする方がいるとは。それも、かの忌むべき兵器を用いただなんて。お姉様が、火魔法で事態を収拾しようとすることまで見越して、アレを選んだのでしょうか……、本当に恐ろしいですわ」
落ち込んだ私を励まそう!と思うがあまりなのか、ちょこちょこ過激モードのアリアちゃん。
「アンネお姉様が、あんな女に負けるわけありませんもの。きっと、Sクラスの方々とお近づきになるために、裏で糸を引いている者がいるにちがいありませんわ!そもそもあの女一人で、アレを入手できるはずありませんし……」
もはや、私が目の前にいることを忘れていそうだ。
そして、ごめん。確実に、私、今後もハンナには実力で勝てません。
「お姉様から、手を出すな、と言われておりますし、私が進んで何かするつもりはないですよ?でも、ええ、正直、将来の大公殿下の奥様ともなれば、この国で二番目に身分が高い女性になりますよね?それを、そんなことする人に任せてよいのか、と言われれば、……。ええ、やはり、私としては……」
「アリア?」
はっと目を見開きようやく停止したアリアさん。
今の”お姉様”は、おそらくローゼお姉様のことだろう。
「あなたたちは、ハンナさんが、昨日の事件の犯人だと考えているの?」
「……はい」
「なぜ?」
「あの風船を用意されたのは、ハンナ先輩だと伺いました」
「誰に?」
「……確か、モネリア様だったかと」
確かに、あの風船の準備担当はハンナだった。空気を送り込むのは、風魔法を使える誰かに頼む、と言っていた気がするけど。
「モネリアさんは、どなたから聞いたの?」
「……そこまでは」
聞いてないのね。ふむ。
誰が何を担当しているかってのは、先生たちに提出した資料にも書いてあるし、生徒会役員が当日手に持っていたボードにも挟まっていたからなー。誰から聞いたか、ってとこはあんま重要じゃないのか?いや、でも、だからこそ、ハンナ犯人説が有力になっているわけでしょ?
「……アンネお姉様は、ハンナ先輩ではないとお考えなのですか?」
ちらりとアリアを見る。本家の人間が、カラスは白い、と言えば、はい、カラスは白です、と答えるのが分家の人間のあるべき姿だ。それを、彼女はきちんと理解しているのだろう。
正直、個人的には、ハンナが犯人である可能性は、ほぼゼロだと思っている。
でも、それは、ハンナが転生者であることを知っているからだ。それを抜きにしてみれば、確かに彼女は怪しすぎる。貴族たるもの、より上の地位を目指すのは当然であるわけで、男爵令嬢のハンナが、第二王子の正妻におさまるために何かするのは、この世界ではさほどぶっとんだ話ではない。
それでも、私は、彼女じゃないと思うのだ。だって、彼女は、もっと頭がいいと思うから。
数回しか話したことはないけれど、あの子は広く周りを見て、熟慮してから動くタイプな気がする。だから、自分が準備した風船に、異国で使われた凶悪兵器を使うなんてこと、直接的にも、間接的にも、絶対にしないと思う。
とはいえ、まだハンナから直接話を聞いたわけでもないし、誰が真犯人なのかについてもはっきりとは決められない。だから、ただ、ハンナじゃない、と公爵令嬢たる私が言ったところで、それが吉とでるか凶とでるかが読めない。
ふー。あー、先にお姉様と会うべきだったわ。後悔してももう遅いんだけどね。
「アンネお姉様?」
「誰が犯人なのか、私は知らないわ」
「え?」
貴族であれば、ここで自分に都合よい噂話を流し始めるのが正解なのかもしれない。でも、私は、そういうことが上手くできるほど器用でもなければ、貴族に染まりきってもいない。
とはいえ、貴族令嬢としてのマナー、価値観を私以上に身に着けているこの子に、いじめダメ絶対!ハンナとも皆仲良くして!って言っちゃうと、この子の私に対する信頼は大きく下がる気がする。それは、少なくとも今は避けたい。
だから……
「あの会場を準備したのは生徒会役員なのだから、本来は私たち皆が平等に疑われてしかるべきなのよね……」
「そんな!アンネお姉様や、王子殿下がやっただなんてありえません!」
「ありがとう……。でも、誰かに疑われる余地を残すわけにはいかないの」
わかるでしょ?という意味ありげな笑顔をアリアに向ける。
私に、誰かを悪者にする噂を流す度胸はないけれど、それでも関心を別に向けるくらいのことは、できる、はず。
「もちろん、もし、本当にリファリオ様の婚約者をめぐっての争いならば、王家忠臣の筆頭たる我がリヴァルウェン家が見て見ぬするわけにもいかない」
「……はい」
アリアの瞳は、戸惑いで溢れている。
……うん、ごめん。正直、私も今、思いつくがままに話してるし、まどろっこしい言い方になっちゃってるかも。
「そのためには、いろんな可能性を見て、きちんと見極めなければならないわ。……貴女も耳にしたのでしょ?当初、私が火を付けたせいで、大惨事になりかけた、という噂を」
「……それは、すぐにルーウェン様が否定してくださいました」
本家の正統な血筋ではないルーウェンが、本家の正当な血筋の尊敬に値する私の窮地を救った、ということがご不満なようだ。とはいえ、今は、その態度は注意しない。
というか、やはりルーウェンだったのね。心の中で感謝する。ま、もし、その代わりにハンナがやったって噂を流したのもルーウェンなら、お呼び出しの必要がありますけど。
「そう。……でも、そんな噂が流れていたなら、犯人は、私の、ひいては我が一族の評価も下げようとしたのでしょうね」
「!」
アリアの瞳に、たちまち怒りの火が灯る。……予想以上に、感情表現が豊かだ。それほど、私に気を許すようになった、ということなのかもしれないが。
「ねえ、アリア?」
「はい、アンネお姉様」
「私に、協力してくれる?」
じっと目を見つめる。スノウを派遣して思ったが、やはりただ人々の話を盗聴するだけでは、埒があかない。そんでもって、今、私の部屋に入ることができるのは、ほんの数人。その中で、私のお願いを忠実に聞いてくれる、となると、もうこの子しかいないのだ。
「もちろんですわ!お姉様っ!」
感極まったように、アリアの大きな瞳から、涙が一滴こぼれる。
そこまでオーバーな反応をされると、ちょっと、なんだかむずむずするんだけど。ひとまず、しおらしく微笑んでおく。そうすれば、勝手に良いように解釈してくれるはずだから。
さて、いよいよ、本格的に調査スタートである。
お読みくださりありがとうございました。
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