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両手にヒロイン、どうもアシスト役です  作者: riyu-
第五章 どうも、雲行きが怪しくなってまいりました
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第38話 どうやら私、情弱のようです

*タイトルと本文の表現を一部訂正しました(24/6/15)。

「……ようやく全員揃いましたね」


 こちら、生徒会室3階「生徒会会議室」。ラウンドテーブルに椅子が7つ。中央には大きなシャンデリア。

 一番奥の席に会長であるラウル兄さまが、その両隣に副会長、2年生副会長リファリオの右隣に書記ルーウェン、その隣に書記代理ハンナ、その隣に会計。で、不本意ながらその横が私の席だ。


 生徒会室3階には、この会議室と生徒会長室の他、給仕のスペースもあるようで、専属のメイドさんが各自の好み・気分に合ったお紅茶やらコーヒーやらを出してくれる。すごい。ちなみに、私の前には、ミルクティーが置かれている。


「今日の議題について話す前に、新しく加わった二人を紹介しますね」


 落ち着いたトーンでラウル兄さまが話を進める。

 

「まず、この春、3年Sクラスに転入してこられた留学生のルドルフさん。留学期間は春学期で終わってしまうんだけど、その間、副会長を務めてもらおうと思っています」


 驚くべきことに、今日はちゃんとした格好で(なんと、上衣のボタンが一番上まで止まっている!)、ちゃんと座っている(頬杖はついているけど)。ただ、その態度はいつもどおり、不遜だ(まあ、実際偉いんだけどね)。紹介されても頬杖をついた姿勢のまま、嘲笑うような顔で、ほぼ対角の我が弟を見つめている。……ルーウェン、その握りこぶしはほどこうね。


「ですので、以前話していたとおり、秋学期以降のことも考えて、今年度は副会長代理を設けることにしました。2年Sクラスのアンネヘルゼさんです」

「よろしくお願いいたします」


 さすがに立ち上がり、全体に向けて軽くお辞儀をする。末席に加わらせていただき光栄ですわ、的な挨拶の一言くらいすべきかもしれないけれど、6人中少なくとも4人は、私がなりたくないのになったことを知っているはずだし、大目にみてくれるだろう。


「さ、じゃあ早速だけれど、今日の議題について話し合おうか。アルジャン、お願いできるかな」

「はーい」


 私のすぐ横に座る会計、アルジャン・オフェイルが声変わり前の高めな声で、ゆるりと返事をする。

 王臣侯爵家オフェイル家の嫡男、水色マッシュヘア、分厚いレンズの眼鏡の奥に、ぱっと見黒にしか見えない濃紺の瞳、14歳にしては背が低めなこの少年、もちろん攻略対象者である。系統としては、無害な見た目で、のんびり毒を吐く系とでも言おうか(攻略成功して、家が豊かになると、眼鏡をはずす設定らしい)。


「今日の議題は、明後日開かれる新入生茶話会(さわかい)について、です」


 新入生茶話会。高等部だと新入生歓迎会という名前で舞踏会のようなものが開かれるのだが、まだ社交界デビューをしていない初等部段階では、もうちょっとカジュアルな、ガーデンパーティー的なものが開かれる。昨年は、王子、ルーウェンの周りと当時の生徒会長ハウル、副会長ラウル兄さまの周りだけ異常な密集状態になっていた(主に女子生徒によって)。

 確か午後いっぱいがその時間だったんだけど、お姉様の助言もあり、私は1時間くらいで退出した(後から聞いた話によると、遠目からみると、私も三番目に大きい集団の中心になっていたようだ)。

 ……当時、あまりにも攻略対象だらけで、あんまり周りを見れってなかったってのもあり、正直、その日の記憶はほぼない。


「例年どおり、席を自由にすると、昨年の二の舞になるおそれは大きいと思われます。」

 

 つまり、何カ所かで「密」状態が発生する、と。ちらりと、テーブルを見渡す。ルーウェン、王子を見習いなよ、ほら、そんな嫌そうな顔しないの。


 基本、生徒会長と副会長(学年が上の方、つまり、今年はルドルフ)がホストとして各テーブルを周り、他の生徒会役員は、会場運営と見回りをすることになる。

 他方、新入生は、自由に席に着き、小さなケーキや、お茶を楽しみながら交流する、というのが本来のコンセプトだ。だが実際には、いったん全体での挨拶やらが終わると、皆さん親からなんかいわれてるんだろうなー、と分かるような動きをする。つまり、こぞって高位貴族の子女のもとに集まるわけである。

 

「別紙の新入生リストをご覧ください」


 一枚めくると、その名の通り、新入生の名前が並んだ紙が何枚か綴られている。それも、ファミリーネーム付きの上、ご丁寧に、何番目の子か(「長男」は太字になっている)、や、婚約者の有無(いる場合にはその名前)まで書かれている。

 身分は学園内では関係ありません、とか言いつつ、そうはいかないのが貴族なのだろう。


「Sクラスが5人、か。」

「はい」

「意外と少ないんですね」

「ええ。来年がその分多いようです」


 自然と漏れた感想に、律儀にコメントしてくれるアルジャン様。良い人だ。

 そんでもって、なんとも羨ましいことに、下の学年は5人中4人が女の子だ。うちの学年が異常すぎるだけともいえるけれど。


「……なるほど。確かに、これは揉めてしまうかもしれませんね」


 リファリオ様が、事情を察したらしく、ちょっと困ったような顔をしている。他方、私には、まだよくわからない。むしろ、人寄せパンダはほとんどいないのでは?って思ったんですが。


「というと?」


 ルーウェンが代わりに聞いてくれた。


「この侯爵家のお三方、今、私の婚約者候補の筆頭なんですよ」

「……ほう」

「しかも、幼稚舎の頃から、何かと揉めているらしくて」

「……はあ」

「ま、こういう公式の場で問題を起こしてくれれば、選好の手間が多少省けるんですがね……」

「……」


 皆沈黙である。


「はっ、お前、おもしれーな」


 はい、皇太子ルドルフ様の攻略ルート開始条件、「お前、おもしれーな」いただきましたー。王子、おめでとー、ぱちぱちぱち。……ごほん、ごほん、えっと、そうではないですね。はい。

 なぜかラウル兄さまから生温かい微笑みがこちらに向けられている。

 こんな変な独り言を(心で)いうような従妹をかわいがってくれて、ほんとうにありがとう、ラウル兄さま。


「……つまり、そのお三方がリファリオ様をめぐって揉めるかもしれない、と?」

「人数が多いから、正式なテーブルは6人席の円形ものを10と、長テーブル4つ、ちょっとした談話スペースとして、2人用の応接セットを6、4人用の応接セットを4つ用意する予定なんだ」


 1クラスの定員が30で、初等部はSを除くと4クラスしかない。つまり、今年の新入生の数は125人なわけだ。きっとSクラスは6人用の席に座るんだろうけど……。


「生徒会役員が立ち寄った際の座席を、どこに作るかで揉めるってことですか?」

 

 6人席にSクラスの5人が座ると、残りは1席。6人用の席ならば、正面ではなく隣に座りたい、と思うのだろうし、あわよくば談話スペースで二人きりで話したいって思うだろうし、そこで揉めるってこと?んん?

 だとすると、めっちゃくちゃ、くだらない。そもそも、2年の副会長であるリファリオ様は一緒に回らないでしょ?


「それもあるだろうね。今年は、私とリファリオ副会長でホスト役を務める予定だから」


 ああ、そっか。確かに、この人(皇太子)にホスト役は無理だな。変に口説きまくって新たな火種を作りそう。


「なんだ?俺がホスト役やってやろーか」

「いや、結構です」


 めずらしく乗り気なルドルフをばっさり切る会長。


「ただね、その三人は、自由席だったら、おそらく別々のテーブルに着くと思うんだ」

「はあ」

「そうするとね、私たちが誰のいるテーブルにまず行くかっていう問題が生じてしまうんだ」

「?」


 一番近いテーブルから行けばいいんじゃない?その侯爵家内の序列、ほぼないんだし。そんな誰のところに一番先に行ったかで、婚約者レースの有利不利、わからないでしょ?


「昨年の状況を鑑みるに、会長が一番先に行くテーブルの令嬢が、リファリオ様の婚約者第一候補なんだ、っていう噂が生じかねないんです」

「その結果、1学年女子のパワーバランスまで決まっちゃうんだろうね」


 まじか。会計と会長が遠い目をしている。


「……去年も、そんなことが起こっていたんですか?」


 またしても代弁してくれる弟。今日は、私ら、気持ちが通じ合っているようだね!


「あれ?知らない?Aクラスのシュルリア侯爵家のご令嬢の話?」

「え?」

「彼女、ハウルの婚約者候補だったんだけど……」

「ハウル前会長、Sクラスのテーブルに寄ったとき、ランスロット家のご息女に長々と話しかけちゃったの、知らない?」


 もう1年も前のことだし、会長が挨拶しに来たことなんて、覚えてなんか……。いや、まてよ。


◇◇◇

(そう、あの日は、前日に仲良くなったシャルネと、双子と一緒に席に着いてたんだった。ルーウェンは、王子たちのテーブルにいて、会長たちは、先に王子たちのところに行ってから、こっちに来て……)

『皆さん、楽しんでますか?』

『ええ、会長。お気遣いいただきありがとうございますわ。副会長もご苦労様です』

(って先に私が挨拶した。そう、このときはラウル兄さまと一言も交わしていなかったんだよね)

『かわいいお嬢さん、お名前を伺っても?』

(って会長が、私の隣で緊張しすぎて小さくなってたシャルネに声をかけたんだったな)

『しゃ、シャルネです。ごきげんよう』

『ふふふ、そんなに緊張されてしまうと、私が悪いことをしているようだ』

(きらりと目を光らす会長、もはや真っ赤なピュアなシャルネ)

『シャルネ、かわいらしい名前だ。君にぴったりだね……今はあまり長居できないのが残念だ。また、お話ししよう。じゃあね、シャルネ、みんな』

(会長、チャラって思った記憶、うん、あるわ)

◇◇◇


 そうだよね、ああいう公式に近い場で未婚者のホストが回るときってさ、特に異性の未婚者に対しては、二言以上声をかけないんだよね。例外は、婚約者とその家族。だから、そうやって長く声を掛けている=婚約者に内々定してますアピールだったりするわけです、ええ。

 まだ社交界デビュー前の未成年だから、っていえばそれまでだし、少なくともハウル本人はそう思ってそうだけど、……周りがそうは受け取らなかったのか。


「あの後、ランスロット侯爵家のご令嬢、1か月ほど学園を休学されたんだ」

「えっ」

「噂によると、今、ハウル様の婚約者はシャルネ様が内々定しているらしいですよ」


 ラウル兄さま、アルジャンが遠い目をしたまま淡々と語る。

 というか、シャルネの自称親友であるにもかかわらず、その話知らなかった私、情弱すぎねえか。

 そもそも、シャルネ、男なんだが?え、もしかして、性別バレしたとき、登校できなくなっちゃう一因って公爵家嫡男までだましてたから??


「まあー、座席を決めたところで、(トラブルが)起こるときは起こるでしょうけれど」

「……申し訳ございません」

「いやいや、王子が悪いわけじゃないですから。でも、減らせるリスクは減らしましょう。ということで、座席、決めちゃうってことで、いいですか?」


 アルジャンが賛否を問うと皆(正確には、席決めしねーほーが、おもしれーじゃんって顔のルドルフ以外)は同時にうなずいた。


◆◆◆

 この間、同じく王子の婚約者候補と噂されるハンナが一言も話さなかったことに、なぜか、その場の誰も違和感を覚えてはいなかった。

 そうして、茶話会、当日がやってくる。

お読みくださりありがとうございます。

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