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両手にヒロイン、どうもアシスト役です  作者: riyu-
第五章 どうも、雲行きが怪しくなってまいりました
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第26章 日直イベントが発動するようです

アンネのひとりごと的な説明部分が多いです。お許しを。

「はじめまして!ハンナです。優秀な皆様と一緒に学べること、大変光栄に思います。どうぞよろしくお願いいたします!」


 ああ、ついに新学年が始まってしまった。

 カイル先生の紹介のあと、教壇に登場したハンナは、きらきらとした笑顔で自己紹介を終えた。



《アン姉様、無理せず、すぐにでも早退してください》


 皆と一緒に何食わぬ顔で拍手をしながら、二つ横のブロックの、前から二列目に座るルーウェンが心の声を送信してくる。

 いや、大丈夫、むしろ今は教室にいる方がいいの、と返信したいが、ルーウェン相手では伝わらない。というか、私の方が後ろに座っているのに、なんで私のコンディションが分かるんだよ。

 

 確かに、今、すこぶる私の体調は悪い。心のコンディションが崩れ、それが如実(にょじつ)に体調にあらわれた、というべきか。

 約1か月の春休みの最初の3日間は高熱に苦しみ(たぶん知恵熱)、始業式前の2日間、またもや高熱を出したために(これもたぶん知恵熱)、結果、寮に帰ってきたのは今日の朝。そのせいで、やろうと思っていた情報収集はほとんどできていない。


 何を悩んでいたのかって?そりゃもちろん、新たにSクラスに加わることになった「彼女」のことで、だ。


 そもそもSクラスに昇格するには、Sクラス以外のなかで3回1位を取る+昇格試験を受けることが必要になる、はずだった。ただ、これは原則で、実は例外ルートがあったらしい。具体的には、一年間の総合成績の平均で、トップ5に入ること。この場合は、一発でSクラスへの昇格が確定するらしい。(ちなみに、昇格試験では、Sクラスの生徒5人に実技で勝つ必要があるらしく、Sクラス側がわざと負けでもしない限り、基本、無理ゲーらしい)


 だけどさ、この例外ルートで昇格するには、Sクラスの人間を(しの)ぐ成績を取り続けなきゃならないんだよ?それって、普通は、努力だけじゃどうにもならない。だって、魔法の特別な才能に恵まれてるから、われわれはSクラスへの入学を許可されてるんだわさ。いくら筆記で頑張っても、技能面での圧倒的優位性は覆らない……はず。だから、今までこのルートで昇格したのは、39年前、Sクラスの初期メンバーが3人しかいなかったときに起きたのが最初で最後らしい。


 という話をルイス様から解説されたせいで、実家へ帰る道すがら、珍しく私は一言も喋らなかった。

 そんな特別なルート、攻略本には載ってなかったんですけど??(そういう経歴の人間って攻略対象の属性としてありそうなのに)

 何より、攻略本に彼女の名前はもちろん、そもそもゲーム開始時点では、同じクラスに所属する女子はヒロインのほか、私しかいないことになっていた。……そこが、めちゃくちゃ、ひっかかった。



 彼女は物語開始までに何らかの理由で消えるのか。でもそれって、希望的観測すぎない?彼女が転生者で何らかのチートを使っているんじゃないかって考える方が、私も転生している以上、ありえそう。仮にそうだとすれば、物語開始までに彼女がストーリーをいじってしまうのでは。そもそも私が気づいていなかっただけで、もう既に何かゆがめられちゃっていないのかな。そうだとしたら、私は今から、何ができるのか……。

 一度考え始めると、疑問は尽きず、結果、王都の実家に着くころには発熱していた。……私、弱すぎねえか。これじゃ、実際に病弱な子じゃん……と思いつつ、連日ベッドで悪夢を見た、気がする。


 本当は、あのときハンナのことを知っているらしかった塩顔少年ロナルドにいろいろと聞きたかった。だが、カイルが追加情報を話している隙に、やつは消えていた。で、新学年始まる前に、ちょっと早く行こうとしたら、家族全員にぎりぎりまで実家にとどまることを説得され、実際熱のせいで出発が今日までずれこんだ。春休み中は、ルーウェンにそれとなく聞こうとしたのだが、なんだか恋愛的な意味で興味がある、と誤解されそうになったので諦めた。


 何が言いたいかって?だから、今、私がハンナについて知っていることは、ほぼないってことさ!はっはははは!



 波打つ茶髪と、茶色の瞳という平民にわりと多い色彩的の彼女は、美人というよりは、なんだか親しみやすさがある。明るく素直で愛嬌のあるような性格が、見た目にもあらわれているようだ。

 なぜSクラスにいなかったのか、と不思議に思うくらい彼女の周りには輝く魔力がくっきりとみえる。ひまわりの花びらのような色からは、土属性系の魔法を得意とすることが見て取れる。その光が、ちょうど彼女の雰囲気とあっていて、余計にまぶしい。


 自己紹介を終えた彼女は、迷うことなく、今までロナルドが一人で座っていた中央ブロックの、前から二列目の席に座った。

 カイル先生が、第2学年開始にあたってのありがたいお言葉と注意事項を淡々と話し始めたが、それはまったく頭に入ってこない。



《あー、やっぱそうだよねー、転生者だよねー》


 彼女が登場した瞬間から、いつもは最低限かけている防心術を、彼女限定で解いている。

 さーて、ここで、ちょこっと豆知識。狭義の防心術は、自分の心を他の術者に読ませないものを指すんだけど、広義では、自分が相手の心を無意識に読まないようにするという術も含まれるのでーす。


 成長すると魔力の器は大きくなる。それはどの魔法でも同じ。ただ、私らの場合、それに伴い、自然に聞こえる声も大きくなっちゃうんですよ。つーまーり、この年になると、無防備な表面上の心の声って、読心術使わなくったって、聞こえちゃうんです☆(例;おなかすいたー)

 だけど、そのことを師匠はカイル先生にも、国や学園のお偉い方々にも話さなかったようだ。おかげさまで、心を読む魔法を使うと、今やカイル先生に感知されちゃうけど、全体の魔力量をあげることで、自然に聞こえる声の範囲を増やせば、防心術を解くだけで、だいたいの情報は得られちゃうのだ。


 というのを去年一年、いろいろ試した結果、確信した。だから、今は、来る日に備え、日々魔力量増量につとめている。なんてったって、使えば使うほど、魔力は増えるのだから!

 その努力のおかげか、さっきから、彼女の声はわりとクリアに聞こえている。

 私的にリプレイするとこうだ。


☆☆☆

[ドアが開けられる寸前](ちなみに、この時点ではまだ防心術も解いていなかった。)

《あー、くわばらくわばら、ドアの向こうはイケメンパラダイスやろ、心臓持つ自信ないわー》

 ……うん、こっちで生まれてから、そんなおまじないする人、見たことないです。


[カイル先生が教室に入室]

《いや、まってーな、まだ心の準備が。……仕方ない、人食うか》

 ……いや、貴族でそんなおまじないするやついないだろ。まさか、今、廊下で、ほんとに人書いてんのか……。え、ちょっと見たい。


[入室。教壇へ移動]

《……うわぁ、キミサゲ、キャストそろい踏みやん。こりゃ、テンション上がるわ》

 ……なんでちょくちょく言い回しがちょっと古いんだ。そして、なぜに関西弁。いや、でも確か攻略対象者に関西弁のキャラもいた気がするから、それはいったん置いておこう。


☆☆☆


 あとは、しばらく特に意味のあることは言っていなかったので省略。

 重要なのは、「キミサゲ」ってとこ。一応、隠し指輪に触れて、攻略本を出す。

 ……うん、そうだ。このゲームのタイトルは、「君に捧げる、指輪とともに」。普通省略するなら、「きみ・ゆび」とか、せめて「きみ・ささ」じゃないか、とか思うけど、まあ、「キャスト」ってたぶん登場人物ってことだろうし、こりゃ話を知っている転生者、確定だな。はぁ。


 と、ため息をつきそうになるのを全力で押さえているうちに、カイル先生の話が終わったようだ。


「んじゃ、そういうことで、今年度もよろしく、以上、解散」


 そして、誰よりも真っ先に帰ろうとする先生。相変わらずである。


「先生!」


 ルイスが何やら手を挙げている。嫌な予感がする。


「んー、なんだ?」

「私たちは今、ハンナさんの自己紹介を聞きましたが、我々はまだ彼女に自己紹介していません」

「あー、ん、なら、今から端から自己紹介でもしたらいいんじゃねえか?」


 放課後に勝手にやれ、俺はさっさと帰りたい。心の声を聞かなくても、きちんと伝わる。


「いえ、そうではなく」


 あ、まさか。

 さっき扉絵を開いたまま放置していた攻略本をめくる。

 そうだ、確か、ヒロインは、高等部から一人だけSクラスに加わることになる。だから、皆となじめるように、的な配慮で、ルイスが提案するんだ。


「ハンナさんが、よければ、ではあるんですが」

「……はい!なんでしょう」

《まさか、日直イベント、私がやんの?》


 ハンナも同じことを思ったようだ。返事とともに勢い余って立ち上がっている。


「明日から、しばらく、日直を二人体制でやりませんか?」


 ……ビンゴ。


「……それは、ハンナに、13日間連続で日直をさせるってことか?」


 カイル先生が当然の突っ込みをする。そりゃそうだ。


 この学園にも日直があって、毎日交代で担当させられている。仕事としては、まず朝礼に出て連絡事項を聞くところから始まり、授業前と終わりの号令、先生のお手伝い、放課後の掃除まである。

 学園内では、人に迷惑をかけない限り、魔法は自由に使っていいから、そういう日常生活において魔法を実践してみる、っていう側面もあるんだけどね。そんでもって、Sクラスは人数が少ないから、他のクラスとちがって基本は1日1人で担当している(他クラスは2人)。

 それを13日連続ってのは、私なら絶対嫌だ。


「まあ、確かに手っ取り早くクラスになじむにはいいかもしれないが……どうする?」

「そうですね~」

《え、嫌なんやけど》


 ハンナの目が泳いでいるであろうことは、その声の感じからだけで察される。


「んー……やらせて、いただき、ます!」


 確かハンナの家、バルネア男爵家は、土の一族(その名の通り、土の魔法を使い、土の門の守護を任され、その周囲の領地「土の国」を治める貴族の一派。我が家は、その分類方法でいうと火の一族)にぎりぎりぶらさがっているような位置にいる家だから、まあ、断れないよね。ルイスのパーライト侯爵家は、土の一族のなかでも、確か2番手とかだったし。

 だけど、ここでためらったってことは、前世のプレイヤーの知識を活用して、逆ハーを目論む系の転生者ではない、ってこと?信じていい??


「じゃ、明日からがんばれ。ってことは、……アンネヘルゼと、だな」

「へ?」

「どうぞよろしくお願いいたします!」


 くるっと半回転して、深々と綺麗なお辞儀をされる。

 おう、そっか、新学年に入ると、また名前の順、先頭に戻るんですね。


《あー、なんか嫌な予感がするなぁ》


 だが、ここで異を唱えるキャラでは、私はない。

 最近すっかり定番になった曖昧な笑みを浮かべるしか、私にできることはもうなかった。

お読みくださりありがとうございます。

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