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四話

 月曜日の朝だ。

 土曜日の昼までは憂鬱に感じていたけど、真水陽子とのやり取りでその憂慮は消え去った。

 もはや怖いものは何もない。



 あの後両親にDMの話をして、彼女の件は笑い話で終わらせた。

 どうやって僕のアカウントを知ったのかについては話していない。

 そもそもその辺のシステム的なことを両親に話したところで、理解が得られるかどうか。

 二人ともそういう開かれたSNSには触れていないみたいだから。



 春の暖かな陽気と、それを消し飛ばす強い風に出迎えられながら駅を出て歩く。



「蟹江君、おはよう」


「おはよう、真水さん」



 後ろから真水さんに話しかけられた。

 彼女も電車通学らしい。

 同じ制服を着た生徒達もちらほらと見かけるので、たまたまと言うよりもある意味必然だろう。

 お互いに今日と同じ時間の電車に乗れば、明日以降もきっと。

 出会い頭に真水さんがストーカーではない理由を考えるのは、彼女のためではない。

 僕の精神衛生上の問題だ。



「真水さんも電車?」


「うん。市内だけど、流石に歩いて来れる距離じゃないし、自転車は雨の日とか大変そうだし」


「まあそうだよね。ねえ、真水さんの探偵スキル、僕にも伝授してよ。技マシーンとかないの?」



 改めて聞いてみた。

 どうしても気になる。



「だめ、秘密。技マシーンは売り切れ御免」


「じゃあ、再入荷したら教えてね」


「いいよ、再入荷したらね。」



 真水さんはふふっと笑ってそう(うそぶ)いた。

 中々手強い。

 でも彼女との会話は嫌いじゃない。

 テンポが合うと言うか。

 秘密は教えてくれないけども、やり取り自体はスムーズで楽しい。



「そう言えばさ」


「うん」


「例のドッペルゲンガー君の方には話したの? 君のドッペルゲンガーがいたよ、って」


「ふふふ。どっちもドッペルゲンガーじゃん、それ。ううん、話してないよ」


「そう。どっちもドッペルゲンガーだよ。彼とはあまり連絡は取らないの?」


「ううーん、そうだね。今は連絡取れないし、どこに居るかもよく分かんないかも」


「それじゃ、本当にオバケか何かみたいじゃん」


「本当にそうかもよ?」


「えぇ、なんか怖くなるからやめてよ……」



 類友かよ。

 真水さんもドッペルゲンガー君も、ミステリアスに過ぎる。

 ホラーはダメだ。

 小説でも映画でも漫画でもアニメでも、ホラーだけは受け付けない。

 僕の人生には一片のホラーもなし。



「蟹江君。私ね、占い出来るの」



 真水さんは急にそんなことを言い出した。

 ホラーの次はオカルトか。



「へえ、どんな? 恋愛とか?」


「うーんとね、多分、後三歩歩くと鳥の爆弾が頭に落ちるよ」


「えっ!?」



 驚くと同時に足を止めて後ろに下がった。

 彼女が爆弾発言をしたのは、ちょうど校門に足を踏み入れるかどうかという時だった。



 ペチャッと微かな音と共に、目の前の地面に白いような黄色いようなシミが生まれた。



「…………」


「ねっ」



 僕が驚きで声を失って地面を見ていると、真水さんは下から僕の顔を覗く様にそう言った。

 周りからは、うわっ、鳥の糞だ、と静かな悲鳴が聞こえてくる。



「……占い?」


「占い」


「鳩をテイム?」


「違うよ。鳩捕まえたら違法だよ?」



 彼女曰く、自演自作ではなくて占いとのこと。



「ありがとう」


「どういたしまして」



 会話をしながらもどこか呆然としている僕を見ながら、彼女はふふっと笑った。



「ほら、学校着いたのに遅刻しちゃうよ。行こ」


「うん」



 僕を爆弾から救ってくれた真水さんは、軽くそう言い放ち、変わらない足取りで僕の先を歩いていく。



 手品のタネがまるで分からない。

 秘密を教えてもらうどころか、彼女と話すたんびに不思議が増える。

 意味が分からない。






 教室に辿り着き、自分の席に座る。

 真水さんは反対側の一番遠い所だからお別れ。



「蟹江君、おはよー!」


「おはよう」



 ホッと一息吐いたところで、後ろから声をかけられる。

 確か岸田さんだったかな。

 ショートヘアの、シャギーカットの溌剌とした感じの女子。

 自分の自己紹介が終わってすぐ次だったから、かろうじて名前を覚えていた。



「ねねね、蟹江君ってさ、真水さんと付き合ってるの? 駅からずっと仲良く歩いてたよね」



 ああ、もう。

 絶対に面倒臭いやつだ、これ。



「いや、付き合ってないよ。挨拶して、そのまま成り行きで歩いていただけだよ」


「えええ、嘘だぁ! だって、真水さんから挨拶してたもん! 蟹江君、金曜日はすぐ帰ってたし、誰とも話してなかったじゃん! 蟹江君の名前覚えてるの、すぐ後ろの私くらいだって!」


「いや、それは酷くない? 真水さんがクラスメイト全員の顔と名前を覚えている完璧超人なだけかもよ?」


「そんなわけないじゃん! いーもん、真水さんに聞いてくるっ!」


「あ、ちょっ……」



 はぁ……。

 まあいいや。

 なるようになれだ。



 金曜日に配布された時間割の確認をしていると、岸田さんが帰ってきた。



「本当だったぁ……」


「え、何が?」


「真水さん、クラスメイト全員の名前覚えてた!」



 まじかよ……。

 嘘から出た誠?

 クラスメイトの名簿とかって貰ってなかったよな。

 また真水さんの謎が増えた。



「でしょ。だから別に、付き合ってるとかはないよ」


「ううう、岸田の勘がぴぴーんって来たんだけどなー」


「なんだよ、岸田の勘って。蟹江の勘もあるのかよ。聞いたことないんだけど」


「蟹江の勘は知らない! でも岸田の勘は由緒正しき先祖伝来の勘だよ!」



 絶対嘘だろ、それ。

 なんか面白いからいいけど。



 少しして担任の先生が教室に入ってくると、ちょうどチャイムが鳴った。



「おはよう。ホームルーム始めるよー」



 二日目にして、既にその雰囲気は中学校の延長と言った感じだ。

 当たり前と言えば当たり前か。

 全員がついこの間まで中学生で、来てる場所も同じく学校なんだから。

 不安に思っていたのがバカみたいだ。

 産むが易しだな。



 ホームルームも終わり、チャイムが鳴る毎にそれぞれの教科の先生が教室に入ってきては出ていく。

 ほとんど教師の自己紹介と教科の概要で、教科書を開くこともなかった。



 4限のチャイムが鳴り、瞬く間に昼休憩となる。



「ねねね、蟹江君、ご飯は? お弁当?」



 何となく、予想していた流れな気がする。



「いや、購買か学食かな」


「じゃ、学食行こ! 真水さんも誘うから!」



 ほら、やっぱり。

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