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第七十九話 継母と異母妹はもう間に合わない

七月下旬。



夏の盛りになり、陽射しが厳しい。


蒸し暑さはそれほどでもないので、まだしのげる方ではある。




殿下とわたしのもとに、リクサーヌ王国の情報が入っていた。




フレナリック殿下は、異母妹との婚約を破棄していた。


わたしが追放された後、しばらくは仲睦まじかったそうだ。


しかし、フレナリック殿下が浮気をして新しい女性と付き合い出してから、その仲に亀裂が入った。


その女性は、マドリンという。


彼女は、婚約者の座を望み、異母妹との間で争いが発生した。


フレナリック殿下は、しばらくの間、優柔不断な態度を取っていた。


異母妹を婚約者のままにはしておくが、その女性との関係も続けていた。


二人により一層贅沢をせることで機嫌を取りたいのと、自分の贅沢から、税を重くするということも行った。


しかし、重税化については、反対が多く撤回せざるをえなくなった。


その心の打撃は大きかったようで、その二人に対する扱いも、雑になっていったそうだ。


二人への愛が、冷めていったことも大きいだろう。


そして、異母妹は婚約を破棄された。


それだけでなく、修道院に送られることになった。


フレナリック殿下の方も異母妹への愛は冷めていったが、異母妹の方もフレナリック殿下への愛が冷めていったようだ。


嫉妬心は弱くなっていったが、それは愛が冷めていくことと同じことを意味しているようで、フレナリック殿下に対する対応は投げやりになっていった。


自分のことを棚にあげて、フレナリック殿下は、その対応に腹を立てるようになっていった。


異母妹は、それでいて、婚約者の座は守ろうとした。


「フレナリック殿下がどれだけわたしのことを嫌いになろうとも、わたしは殿下と結婚します」


と冷たい口調でそう言ったそうだ。


そのこともフレナリック殿下の怒りが増していった要因になった。


フレナリック殿下の方は、ますます異母妹を嫌がるようになる。


そうしたことが積み重ねっていって、婚約破棄となり、修道院に送ることまでに発展してしまった。


継母も、修道院に送られた。


以前から継母について、フレナリック殿下は嫌な思いを持ち、怒りを持ち始めていたようだ。


そして、異母妹をちゃんと愛してほしい、その女性と別れてほしい、とフレナリック殿下に言い続けていたが、それがフレナリック殿下の怒りをますます増していく要因になった。


継母の方もしだいに、フレナリック殿下と異母妹が婚約しなければよかったのでは、と思うようになっていった。


でももう間に合わない。


そして、婚約を破棄され、修道院行きを言われた後、継母は泣いた。そして、異母妹は泣き叫んだという。


ラフォンラーヌ公爵家は、後継者がいなくなった為、王国の直轄地になることになった。




フレナリック殿下は、浮気相手であるその女性と別れた。


彼女は、自分が婚約者になるものと思っていた。


しかし、既に彼女への愛は冷めていて、異母妹が修道院に行った後、しばらくしてから別れてほしいと言われたという。


彼女の方も、愛が冷めていたようなので、意外とあっさり受け入れたそうだ。




フレナリック殿下は、別れた九人の女性の両親である貴族たちと対立した。


フレナリック殿下は、この貴族たちの勢力を弱めようとするが、うまくいかず、対立はますます深まっていく。


フレナリック殿下が異母妹ともう一人の女性と別れて、少し経った後。


この勢力は、フレナリック殿下を修道院に送ってほしいということを、父の国王陛下に働きかけた。


九人の両親の貴族たちの内、父親九人が国王陛下の執務室に乗り込んだのだ。


貴族たちが動いた理由は、贅沢好きで移り気なフレナリック殿下を王太子にしておくと、国王になった場合、人々を困窮させ、国を傾けてしまうということだった。


根本的には、自分たちの娘と別れたことに対する怒りがあるのだと思う。


いや、別れたというよりは捨てられたと言った方がいいだろう。


心に打撃を受け、立ち直れないままでいる多くの娘たち。


貴族たちの立場からすれば、フレナリック殿下のしたことは、残酷以外のなにものでもない。


そして、ただ別れただけならともかく、次から次へと相手を変えていくという態度。


しかもそれが九人となると、ますます怒る気持ちになるのは、仕方のないことだと思う。


貴族たちは、一生懸命国王陛下に働きかけた。


国王陛下も、フレナリック殿下の行動には、ほとほと困っていたようだ。


しかし、それでもまだ少しだけ期待は残っていたようだ。


すぐには貴族たちに賛成はしなかった。


そうしている内に、フレナリック殿下の反撃が始まる。


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