第七十五話 倒れてしまったわたし (殿下サイド)
セリフィーヌさんは、わたしの思っていた以上に優秀だった。
わたしたちが悩んでいた内政の問題について、的確な助言をしてくれる。
これほどありがたいことはない。
彼女の評判はどんどん高くなっていく。うれしいことだ。
ただ、わたしは、別のことで悩むようになった。
休日の二時間ほど、わたしは助言を受ける為、セリフィーヌさんと二人きりになる。
美しく、いい匂いがする素敵な女性と二人きり。
仕事は、もちろんきちんと行っている。
しかし、わたしは、彼女の魅力に心がしばしば沸き立ち、それを抑えるのに苦労するようになっていた。
そして、セリフィーヌさんがますます好きになっていく。
もう恋というものの入り口に到達してきていると思う。
セリフィーヌさんはどう思っているのだろう。
わたしに好意は持っているようだが、心の傷が、それ以上に発展するを妨げていることはないだろうか?
いや、それ以前に、ただ好意を持っているだけの存在なのかもしれない。
もしそうなら、彼女に恋をしていくということは、彼女にとって迷惑なことでしかないのでは、と思ってしまう。
相思相愛ならこれほどうれしいことはないのだが……。
わたしは、父王からさらに政務を移譲され、激務という状態になってきた。
それでも、国民の為に、と思い一生懸命努力していた。
睡眠時間がどんどん短くなり、食欲もなくなってきていたが、精神力と体力でなんとか耐え抜いてきた。
しかし……。
休日、朝食が終わった後、わたしは執務室に向かって歩いていた。
既に朝食の時点で食欲がなかった。めまいがして、体がフラフラだ。
これくらいで倒れてはいけない!
そう思ったのだが……。
執務室に入ったとしたところで限界がきた。
わたしは気を失った。
わたしは夢を見ていた。
リナグリッドさんというセリフィーヌさんと同じ様な容姿をした女性がいた。
最近、毎日のようにわたしの夢に出てくる人だ。
今日もわたしの夢の中に出てきている。
夢の中のわたしは、その人が好きになった。
恥ずかしくてたまらなかったが、勇気を振り絞って、わたしはその人に告白し、婚約してほしいとお願いした。
その返事を待っていたのだけど……。
夢はそこまでで終わってしまう。
わたしは目を覚ました。
どれだけ眠っていたのだろう。
目を覚ますと、セリフィーヌさんがそばにいた。
わたしは、執務室で倒れた後、自分の寝室に運ばれていた。
その後、侍医の診察を受けたが、ずっと眠っていたようだ。
セリフィーヌさんは、わたしのことを心配して、ずっとここにいてくれた。
心から感謝したいと思う。
「ありがとう」
わたしはそう言った後、恥ずかしい気持ちを我慢して、セリフィーヌさんに、
「手を握ってもいいかな」
と言った。
セリフィーヌさんは少し恥ずかしそうだったが、
「もちろんいいです」
と言ってくれた。
わたしは、セリフィーヌさんの手を握る。わたしがセリフィーヌさんの手を握るのは初めてだ。
セリフィーヌさんの手の感触。心が沸騰していく。
「あなたの手を握ることができてうれしい。ありがとう。もう手を離そうと思う」
わたしは恥ずかしさが限界に近くなり、セリフィーヌさんから手を離そうとした。
「い、いえ、殿下のやさしさが流れ込んでくる気がするので、もう少しこのままでいていただけるとうれしいです」
セリフィーヌさんは、恥ずかしさを我慢して、わたしに好意を伝えてくれている。
「わ、わかった」
わたしはセリフィーヌさんの好意に応えようと、手を握り直した。
彼女の好意がうれしくてたまらなかった。
「面白い」
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