第七十三話 だんだん好きになっていく (殿下サイド)
わたしは学校で、セリフィーヌさんとおしゃべりをしたいと思うようになった。
そこで、セリフィーヌさんが初登校した時、こう言った。
「お昼ご飯を一緒に食べたいのだが?」
この言葉を言うのは勇気がいることだった。
恥ずかしくてしょうがない。
いや、セリフィーヌさん以外の女性とであれば、ここまで恥ずかしいとは思わない。
やはり、セリフィーヌさんには好意以上のものがあるのだろう。
彼女の返事が心配だった。
断られたらどうしょう、と思った。
しかし、彼女は、
「嫌などということはありません。ただ、他に一緒に食べたいと思う方がいらっしゃるのではないかと思って……」
と言ったものの、そのことは気にしないでいいと言うと、
「ありがとうございます。殿下のご都合さえよろしければ」
とOKしてくれた。
わたしはうれしかった。
セリフィーヌさんもうれしそうだったので、これからの昼食が楽しみになった。
こうしてわたしは、毎日セリフィーヌさんと昼食をとるようになった。
一緒に食べるとおいしい。そして、おしゃべりは楽しい、
セリフィーヌさんとはフィーリングが合う。
恋かどうかはまだわかっていない。
でももっと仲良くなって行きたい。
セリフィーヌさんの方はどう思っているのだろう。
好意は持ってくれていると思う。
この関係は大切にしていきたい。
そうわたしは思うのだった。
わたしは心配なことがあった。
セリフィーヌさんがクラスで孤立しているのではないか、ということ。
セリフィーヌさんが、わたしと昼食を一緒にとっていることで、心よく思っていない人がいることは予想していた。
そういう人たちが、セリフィーヌさんを無視しているという噂が耳に入っていたからだ。
わたしは心配になり、もし、必要であれば救けに入ろうと思っていた。
そこで、
「クラスの人たちとはうまくやっているのかな? イジメとかはない?」
とセリフィーヌさんに聞いた。
しかし、セリフィーヌさんは強い。
「困ったことがあっても、よほどのことがない限りは、自分の力でなんとかしょうと思っています」
そう力強く言った。
「わたしはだんだんあなたが……」
好きという言葉は、さすがに小声になったが、わたしはセリフィーヌさんのことが、ただの好意以上に好きになり始めていた。
そして、わたしはこう言った。
「とにかくわたしは、いつでもあなたの力になりたいと思っている。もちろんあなたは、つらいことがあっても自分の力で乗り越えていこうとするだろう。その力は十分あると思っている。でもあなたがもし救けを求めてくるのなら、いつでも救けたいと思っている。わたしはあなたの為だったら、全力を尽くすことができる。わたしがそばにいることをいつも忘れないでほしい」
セリフィーヌさんの言葉があったので、もう少し様子を見ようと思ったが、もし状況が悪化するようだったら、その時は絶対救けに入ろうと思っていた。
しかし、その言葉通り、セリフィーヌさんは次第に孤立状態から脱出していった。
わたしは改めてセリフィーヌさんの強さに感動した。
セリフィーヌさんに対する嫌な噂も同時期に立っていた。
こちらは自然発生的なものだった。
しかし、根本的には、セリフィーヌさんのことをよく知らないところからきているのだと思った。
彼女の素敵なところが伝わっていけば、嫌な噂はなくなっていくと思っていた。
そこで、わたしは学校の周囲の人たちに彼女のことを褒めた。素敵な女性であることも伝えた。それが少しずついい噂になることを期待して。
もちろんセリフィーヌさんに好意以上のものを持っているというような話はしていない。これはちょっと残念なことだが、仕方がない。
また、女性の中にも彼女の素敵なところを理解する人がが少しずつ増えてきたようだ。
その二つの動きの成果があったのだと思う。
少しずつではあるが、嫌な噂の勢力は弱まり始めていた。
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