第七十一話 なつかしく思う女性 (殿下サイド)
その人は、体の半分以上が雪に埋もれ、気を失っていた。
身なりはボロボロ。
しかし、美しい女性だ。
どうしてこんなところに、と思ったが、今はとにかく救けなくてはならない。
わたしは側近と協力して、彼女を雪の中から救出した。
そして、
「きみ、大丈夫か? しっかりしろ!」
と、その人に呼びかけた。
歩き疲れてここで倒れてしまったようだ。
まだそこまで体は冷えていないようだが、このままでは生命が危ない。
わたしのところまで運んで、治療をする必要がある。
そう思っていると、
「う、う……」
という声がしてくる。
「気がついたようだね」
わたしはホッとした。
それと同時にわたしの心に衝撃が走った。
どこかで会ったことがある!
それまでは、彼女を夢中で救けようとしていたので気がつかなかったが、どこかなつかしさを感じた。
しかし、どこで会ったかは思い出せない。思い出せるといいんだけど……。
ただ、今はまず彼女を救けなくてはならない。
「だいぶ疲れているようだけど」
「はい」
話そうとしているが、力がでないようだ。
「無理しなくていい。とにかくここにいては生命にかかわる」
わたしは、側近の方を向くと、
「この人をわたしのところまで連れて行く。いいね」
と言った。
「かしこまりました」
側近は、頭を下げた。
わたしは、彼女を抱きかかえて馬車に乗せなくてはいけなかった。
女性に興味がなかったわたしではあるが、女性と接するのはやはりドキドキする。
恥ずかしい気持ちになってくる。
でも、今はその気持ちを乗り越えなければならない。
この人の生命の危機なのだ。わたしはこの人を救わなくてはいけない。
わたしは、恥ずかしさを抑えながら、彼女を抱きかかえ、なんとか馬車に乗せた。
彼女はまた気を失ってしまっている。
このままでは生命がいよいよ危ない。
わたしたちが乗り込むと、馬車は王宮に向かって走り始めた。
彼女が回復しますように。元気になりますように。
わたしは、そう願い続けた。
馬車が王宮に着くと、彼女をわたしの部屋の一つに運んだ。
わたしは侍女を呼んで、服を着替えさせた。
そして侍医を呼んだ。
この国でも有数の名医だ。
「申し訳ないが、この人を診てほしい」
「わかりました」
診察している間、わたしは彼女のことを心配していた。
容態が急変したらどうしょう……。
そういう思いが浮かんできて、つらい。
せっかく、なつかしさを思える人に出会えた。
そして、約束をした人に出会えたかもしれないのに……。
わたしはただ待つしかなかった。
やがて、侍医が、隣の部屋で待っているわたしのもとにやってきた。
「彼女の具合は? 大丈夫なんだろうか?」
わたしが言うと、
「一日もしくは二日休養を取れば、だいたい回復するでしょう。ただ、歩き過ぎて足を痛めているので、全体で五日程度は無理をしない方がいいでしょう」
と侍医は言った。
「生命に別条はないんだね」
「はい。もう大丈夫です」
わたしはホッとした。
「ただ、後もう少し救助が遅れていたら生命の危機になっていたと思います。彼女が救われたのは、殿下のおかげだったと思います」
「いや、あなたが適切な治療をしたおかげだと思う。今までもあなたに救われた人はいっぱいいるんだから」
「そんなことはありません。わたしはいつもあたり前のことしかしていませんから」
この人はこんなにも優秀なのに、偉ぶったりするのは見たことがない。
大した人物だと思う。
「ありがとう。わたしはこれから彼女にずっと付き添う」
「お体には気をつけてください。また定期的に診察にまいります」
「ありがとう」
「それではわたしは失礼します」
侍医は頭を下げ、部屋から去っていた。
「面白い」
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