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第七話 意識が遠くなっていくわたし

「わたし、殿下と仲良くやっていけるかどうか、心配でなりません。もともと女性関係についてはいい噂を聞きませんし」


もともとこの婚約には乗り気ではなかったわたし。


女性について、殿下は次々と付き合っては別れている、という噂も聞いていた。


とはいうものの、婚約するまでは、その噂の細かい部分を聞いていたわけではない。


婚約したからには、わたしは殿下を好きになる努力していかなければならない。


好きになっていけば、殿下もわたしのことを好きになり、幸せな夫婦になっていけるだろうと思っていた。


しかし……。


婚約してから、細かい部分を聞くようになり、その別れた女性たちの苦しみの話を聞くようになってから、殿下は、とても冷たい人なのでは、と思うようになってきた。


そして、婚約の話を受け入れたことは、間違っていたのではないか、と思うようになってきた。


「今までいろいろな女性と噂があったということだろう。それはわたしも聞いている」


「そんなお方のところに嫁いでもやっていけるのかどうか……」


「わたしは殿下を信じたい」


「お父様」


「今はそうでも、お前のやさしさで殿下を包んであげれば、殿下も変わるはずだ。そう思いたい」


「お父様、わたしにできるでしょうか」


「お前ならできる。そう信じている」


「できるだけ努力します。ただ、もしその努力が実らなくて、離縁されたら……」


これもわたしとしては心配しているところだ。


「その可能性はないとは言えないな」


「離縁される可能性はかなりあると思います。その時は、生きていく力がなくなってしまうと思います」


「申し訳ない」


お父様はそう言うと、涙を流し始めた。


「そういう懸念のあるところへ嫁がせなければならない。こんな親を許してくれ」


「お父様、もったいない言葉です」


「わたしもお前と同じ懸念は持っていた。でも王室からの申し出で名誉なことだから、進めたのだ。殿下もお前のことを大事にしてくれると信じるしかないと思っている。もし、お前の努力が報われなくて離縁されたとしても、どこかでその努力は実を結ぶと信じたい」


「お父様……」


「セリフィーヌよ。幸せになってくれ……」


この会話から数日後、お父様はあの世に旅立った。




わたしはお父様の遺言を受け、殿下の為に一生懸命尽くそうと思った。


そして、好きになろうとした。


会える時間は限られていたが、少しでも殿下との距離を縮めていけるよう努力した。


しかし……。


継母はあきらめていなかった。


イレーヌと殿下を接近させて、わたしから殿下を奪おうとしていたのだ。


でも今日までわたしはその動きに気がつかなかった。


表面上は、わたしの婚約を祝っていたからだ。


そして、わたしは殿下との仲をどうやったら進めていけるのだろうか、ということに集中していた。


一か月前のパーティーで、イレーヌが殿下とダンスを一緒に踊ったことも、特に気にしたいなかった。


まさかあの時のダンスが、殿下の心がイレーヌに傾くきっかけになるとは……。


それからは怒涛の攻勢だった。


もともと男性と話すのが苦手だったわたしと違って、イレーヌは積極的なタイプだった。


殿下もその積極性に心を奪われたところはあるのだろう。


殿下の為に、と思って行動してきたわたしだったけど、後少し積極的なところがあれば、と思う。


でももうこの世での生命は尽きようとしている。


あの世があるのかどうかはわからないが、もしあるのなら、もう少しつらいことの少ない人生をおくりたい。


世の中には、継母とうまく生活ができる人もいると思う。でもわたしはそれができなかった。


血のつながった両親のもとで、ほのぼのとした生活がしたい。


お父様、わたしは離縁どころか婚約を破棄されてしまいました。結婚するところまで到達できなかったのです。


努力はしたのですが、足りなかったようです。


申し訳なく思っています。


ああ、もう冷たさも痛さもなくなってきている。


いよいよこの世を去る時がきたようだ。


わたしの意識は遠くなっていった……。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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