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第六十三話 前世のわたし・倒れてしまったわたし

時は進んでいった。


四月になり、春の空気がこの地を覆い始めた頃。


殿下との距離はなかなか縮まらなかった。


二人の婚約者候補は、懸命に殿下にアプローチをかけているようだが、殿下は興味を示していない。


それに対して、わたしにはいつもやさしくしていて、好意を持ってくれている。


それだけでもうれしい。


それが恋という気持ちに変化してくれるといいと思っているのだけど……。


政務がどんどん忙しくなってきているということもあり、まだまだ時間がかかりそうな気がする。


休日も会えるようになれば、仲はもっと進んでいくと思うのだけど、現状では難しい。


わたしの方は殿下に対する恋する心がどんどん大きくきている。


抱きしめられ、キスをしたい、と思うようになってきていた。


我ながら恥ずかしい。


もう少し殿下との仲が進んでいけるといいなあ、と思っていた時。


わたしは倒れ、そのまま入院した。


苦しい……。


それは今までの中でも、もっともつらいと思えるほどのものだ。


病気は重くなっていき、わたしは意識不明の状態になった。


どれほどの時間が経ったのだろう。


目覚めると、殿下が病室のベッドの横にいた。


「殿下……」


「目覚めてくれたんだね」


殿下はそう言うと、涙を流し始めた。


「このまま意識が戻らなかったらどうしょう、と思っていたんだ」


「申し訳ありません。わたしのようなものの為に……」


わたしは涙をこぼし始めた。


「いいんだ。とにかくよかった。意識が戻ってくれて。これほどうれしいことはない。


「殿下も毎日お疲れだと思います。そんな中、来てくださって、申し訳ない気持ちでいっぱいです」


殿下の顔色は決して良くはない。


以前よりも疲労度は増してきている気がする。


しかし、それを強い精神力で克服しようとしているようだ。


「あなたのところに来るのは当然のことだ。わたしはあなたのことが好きなのだから」


あれ、わたしのことを好きだと言っている。それっていうのは……。


わたしは恥ずかしくなって、手で顔を覆う。


殿下も言った後、少し恥ずかしくなったようだ。


しばしの間、恥ずかしがり合った後、殿下は、


「良くなって、学校へ行けるようになったら、また一緒に昼食をとろう」


と微笑みながら言った。


「はい。是非とも願いします」


わたしも微笑みながらそう言った。


殿下とまたご一緒に過ごす時間を作りたい、と強く思うわたしだった。




わたしの容態は、少しずつ回復していた。


それからも殿下は、時々わたしの病室を訪れてくれていた。


その度に、


「この調子でいけば、学校へ行ける日も近い」


と言ってくれていた。


それがどんなに力になっていたことだろう。


殿下のことがますます好きになっていた。


でも、わたしは、殿下に何一つ役立つことができていないように思う。


内政について助言をしていきたいという夢もこのままではかなわないかもしれない。


わたしは、自分の生命が長くないことを感じていた。


多分、今少し回復しているのは、わたしの人生の最後の輝きのような気がする。


せめて、生きている間、殿下の癒しになれればいいんだけど……。


「面白い」


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