第五十七話 殿下とのお茶会前のアドバイス
五月中旬。
気温が上がってきて、さわやかな風が吹き、周囲は美しい新緑に包まれている。
その後、殿下の体調は回復し、また元気な姿を見せるようになった。
食欲も回復したので、もう大丈夫だろうと思う。
しかし、もう今までのような激務を続けるわけにはいかない。
殿下は、周囲と相談した結果、政務は抑えるようにし、夜遅くまで続くことのないようにした。睡眠時間もきちんと取るようになった。
殿下は、そういう状態に対し、もう少し仕事を増やしたいと言っているが、そこは我慢をしてもらわなければいけない。
明日は、殿下とお茶会をする。
とはいっても、ただのお茶会ではなくてデートだと思っている。
今日、殿下は昼食の時、緊張していたようだった。
本人は努めてリラックスするようにしていたようだが。
わたしの方もしだいに心が沸き立ってきていた。
明日に向けて、胸のドキドキが大きくなってきている。
いつもの通りにすればいい、とは思っている、でも、心のコントロールはだんだんできなくなってきていた。
クラディナさんと放課後、少し話をした。
明日、殿下とお茶会をする、と私が言うと、クラディナさんは、
「よかったわね。これで念願のデートができるわね」
と言って、我ごとのように喜んでくれた。
「これでキスまで進めるといいわね」
クラディナさんも大胆なことを言う。
「それはちょっと進みすぎでは。わたしもデートだとは思っているけど、まだまだ親しさを増していく段階だし」
「もう一月に初めてお会いしたから四か月ほども経っているのよ。そろそろそこまで行ってもいいと思うわ。これは一気に仲を深めるチャンスだと思うわ」
「だけど、まだ告白もされていないし。恋人どうしになっているわけじゃないから、キスまではまだまだ遠いと思う」
「明日、殿下があなたを誘ったのは、殿下の方があなたとの距離を縮めたいと思っているからだと思う。だからこそ、あなたの方も積極的になれば、きっと恋人どうしになって、キスするところまで行けると思う、あなただって、殿下とキスしたいでしょう?」
わたしは急速に恥ずかしい気持ちになる。
「それはそうだけど」
「殿下もあなたと仲をもっと深めて、できればあなたとキスをしたいと思っていると思う」
「クラディナさんはテオフィルさんとキスをしたの?」
すると、クラディナさんは、少し恥ずかしそうな表情をする。
「うん。したよ」
「初めてのデートの時?」
「うん。そう。今もそうだけど、わたし、テオフィルさんのことが好きでたまらなくて、デートに初めて誘われた時は、舞い上がってしまうぐらいうれしかった。でもテオフィルさんは、以前も話したけど奥手な方でしょう。わたしのことを好きだという気持ちは伝わってきて、それはうれしいんだけど。デート中でも、その好きという気持ちが、なかなか言葉や行動に出てこなくて……。なんとかわたしの方でムード作りをしたの」
「それでキスまで行ったんだ」
「『わたし、テオフィルさんのことが好きです。テオフィルさんの為だったら、唇と唇を重ね合わせることができます』と言ったの。それで、やっとキスするムードになって……。ごめん、自分で言ってて恥ずかしくなっちゃった」
クラディナさんは手で顔を覆っている。こういうところはかわいい。
やがて、クラディナさんは、恥ずかしさを抑え込むと、
「わたしのことはいいわ。セリフィーヌさんも、初デートでキスまで行くことはできると思う。わたし、セリフィーヌさんを応援してるよ」
と言って微笑んだ。
「面白い」
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