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第五十五話 殿下の夢に出てきた女性

殿下は、


「そうは言うが、王国の為、国民の為、この身をささげていかなくてはいけないのだ。自分の生命を気にしていては、難しいことだと思っている」


と言う、


「殿下……」


わたしは涙が出てきた。


殿下の崇高な心は理解できる。


でも何より大切なのは、殿下のお体。


「すべては殿下あっての王国です。殿下がお元気でなければ、国民も悲しむと思います。そして王室の皆様も」


「そこまでわたしは国民に思われているのだろうか?」


「殿下のことは、皆様お慕い申し上げています。お体のことも皆様心配されています。これからは、お体に気をつけながら、政務を行ってくださいませ。仕事量自体もなるべく減らしてください。そして、今はまずゆっくり休むことが大切です」


殿下はわたしの言葉をじっと聞いていたが、やがて、


「ありがとう。あなたの言葉、心に届いた。少し休養を取ることにする。仕事量についても、相談をしながら調整することにする」


と言った。


「そう言ってくださるとありがたいです」


「あなたには心配をかけた。申し訳ない。これからは、より一層あなたの力を借りていきたいと思っている」


「もったいないお言葉。わたしは今まで以上に殿下のお役に立てるよう努力していきます」


わたしの目から涙がこぼれてくる。


しばらくの間、手を握り合っていたわたしたち。


殿下のやさしい気持ちがますます流れ込んでくる気がする。


心が沸き立ってきて、なんとかそれを抑えようと苦労する。


やがて、殿下は、


「セリフィーヌさん」


と言った。


「なんでしょう?」


「わたしはさっき夢を見ていたんだ」


「夢ですか?」


「そう夢だ」


「どんな夢でしょうか?」


もしかすると、先程の寝言の時に見ていた夢のことだろうか?


「ちょっと恥ずかしい気持ちになった夢なんだが、それでも言っていいかな?」


「是非ともお聞かせください」


殿下の方も、わたしと前世で会っていると思っているかもしれないので、その話は聞きたかった。


少し躊躇していた様子の殿下だったが、


「じゃあ、話そう」


と言った。


「話をして、お疲れになりませんか」


「大丈夫だ。わたしはあなたと話がしたい」


「お疲れになるようでしたら、言ってください」


「お気づかい、ありがとう」


そう言った後、殿下は話し始めた。


「あなたと同じ様な容姿をしたリナグリッドという女性がいて、わたしはその人が好きになった」


「わたしと同じ様な容姿ですか?」


少し恥ずかしい気持ちがする。


「それで、わたしはその人に告白し、婚約してほしいとお願いしたんだ」


「その人は、殿下のお願いを受け入れたのですか?」


「それが残念なことに、夢はそこまでで終わってしまったんだ。返事を聞きたかったんだけど」


「返事が聞ければよかったですね」


わたしがそういう立場だったら、すぐOKしたと思う。


あら、わたしったら、恥ずかしい。


「以前も、リナグリッドという女性が夢の中に出てきていたんだけど、最近は毎日のように出てくるようになって」


「毎日なんですか……」


「それで、もしかすると、そのリナグリッドという女性が、セリフィーヌさんの前世じゃないかと思って……。わたしはあなたと始めて会った時から、どこかで出会っていたのではないかという気がしていた。なつかしさを覚えていたんだ」


「殿下……」


「わたしは前世というものが今まであるかどうかわからなかった。でもあなたのことをなつかしく思い、リナグリッドという女性が出てくる夢を見ていると、前世というものはあって、あなたとそこで出会っているとしか思えないんだ。いや、そうであってほしいと思っている」


殿下はそう言うと、微笑んだ。


「面白い」


「続きが気になる。続きを読みたい」


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