第五十三話 殿下に付き添うわたし
わたしは今殿下の部屋にいる。
殿下は眠っていた。
先程まで、国王陛下と王妃殿下がおられたが、重症でないことが確認できたので、二人は二人の執務室の方に戻られていった。
今は殿下と二人きり。
夕方になった。
わたしは、昼食をいただいた以外は、殿下の回復を願い、ずっと殿下のそばにいた。
こんなに殿下のそばにいたのは初めてだ。
その間に一回、侍医が殿下の様子を診に来た。
「まだ目を覚まされません。大丈夫でしょうか?」
とわたしが心配そうに言うと、侍医は、
「回復の方向に向かっているので大丈夫です」
と言っていたので、とりあえずは安心した。
しかし、その後もまだ目は覚まさない。
重症ではなかったとはいっても、疲れは相当たまっていたのだろう。
このまま殿下のところにいたい。
殿下が目覚めたら殿下を癒してあげたいと思う。
しかし、王室の役職についているとはいうもの、王室の一員ではないので、そろそろお暇をいただき、帰らなければならないだろう。
残念な気持ちになってくる。
結婚すれば、一日中殿下のそばにいることが可能になる。
婚約者でも、今よりもっと長い時間、殿下と一緒にいることができる。
わたしは、まず婚約者を目指すべきなんだろうと思う。
いや、そういうことよりも、殿下のことをもっと心の底から恋し、愛していくことが必要だ。
わたしは殿下に心の中で話しかけていた。
侍医は、今回は重症ではなかったけど、今日のように倒れることが続くようだったら、生命に関わってくるとおっしゃっていました。
そうなっては、本当に困ります。
殿下、もう無理はなされないで。
殿下が倒れたと聞いた時、わたしは、自分の身がちぎれるような思いになりました。
このまま殿下があの世に旅立たれたらどうしょう……。
そういうことはもちろん思ってはいけないことはわかっています。
でもわたしは、まだ殿下に自分の恋する気持ちを殿下に伝えていない。
想いを伝えていないのに別れるなんてつらすぎます。
わたしは、今まで、殿下に恋する気持ちが強くなってきているのに、それを伝えるのを躊躇していました。
恥ずかしい気持ちがまず強かったということがあります。
そして、わたしのような女性が殿下に恋すること自体、殿下の御迷惑になるのではないか、と思っていました。
殿下は文武両道に精通し、ハンサムで、人にやさしい素敵なお方。
そういうお方にわたしのような人間が恋していいものかどうか。
フレナリック殿下は、わたしのことをゴ-ジャスではないことを、婚約破棄の一番の理由としてあげていました。
殿下はそういうところで、女性を選ぶ方ではないと思いますが、どうしてもそこのところは思ってしまっていました。
でも今日、殿下が遠いところへ行ってしまうと思った時に、このままではいけないと思いました。
自分のことを顧みず、国民の為に尽くそうとするそのお姿。
わたしはその姿に、感動し、恋する気持ちが沸騰してきました。
この恋する心を殿下に伝える。
通じなければ、もうそれで仕方がないと思います。
それだけ殿下に対する気持ちは熱くなってきています。
殿下、好きです。愛しています。
わたしは、眠っている殿下にそう呼びかけた。
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