第四十八話 殿下の魅力
夜。
わたしは今日のことを、ベッドで横になりながら思い出していた。
今日は、王太子付補佐として、初めて殿下の執務室で仕事をした。
充実した一日だった。
殿下も、わたしの助言を褒めてくれた。
これで少しでも殿下のお役に立てたのなら、うれしい限りだ。
それが何よりもわたしの力になっていく。
しかし……。
わたしは、王国の為になりたいという殿下の真剣で力強い姿に、何度も何度も心が急速に沸き立っていた。
抱きしめてほしい。その腕の中で、うっとりしたい、殿下のやさしさに包まれたい!
という気持ちが強く湧き出していた。
その度に、その気持ちを抑え込もうとする。
今は仕事中。王国の為に働いている。そういうはしたないことを想ってはいけない。いや、仕事中ではなくでも、想ってはいけない。
そう思うのだが、心のコントロールは難しい。
それでも要所では、なんとか自分の心をコントロールしたので、助言をすることはできたのだが、こういう調子で大丈夫なのかなあ、という気がする。
今までは、殿下に好意を持っていたとは言っても、恋というところまでは到達していなかったわたし。
でもわたしは、今日、殿下への思いがかつて経験したことがないほど盛り上がっていくのを感じていた。
殿下は魅力がとてもあって、素敵。
そして、わたしは殿下に対する気持ちが、恋に変わってきていることを認識し始めていた。
殿下との昼食。
昼食は学校ではいつも一緒とはいっても、場所が違うと雰囲気がまた全然違う。
殿下の執務室で食べているので、より一層、殿下の存在が近いものになってくるような気がする。
そして、一緒に食べ、楽しくおしゃべりをしている内に、わたしは、先程のような殿下への想いが湧き出していた。
そして、殿下に対する恋する心をより一層持ち始めるようになってきた。
わたしは殿下のことが好き。今すぐ抱いてほしい。キスしてほしい!
そういう想いも強く湧き上がってくる。
どうしたのだろう。わたしはなぜこういう恥ずかしいこと想ってしまうのだろう。
いつもの昼食では、そこまで思うことはなかったのに……。
殿下は、そんなわたしの気持ちには気がつかないようだ。
殿下ともっと仲良くならないと、その先には進めない。もっと努力して、殿下のお役に立つこと。それが、わたしのしなければならないこと。そうすれば、自然と殿下との距離は縮まっていく。今は我慢。
ここでもなんとか殿下への想いを抑えきったのだけど。心にはつらさが残った。
夜、こうしてベッドの上で横になっていても、つらい気持ちが残ったまま。
殿下への想いがその中で、また強く湧き出している。
そして、胸のドキドキが大きくなってくる。
これって、恋煩いってものなのかしら……。
今までは、婚約破棄され、追放されたこともあって、殿下に対しても好意というところで止まっていたわたし。
でも殿下は、そういったものをすべて乗り越えさせるほどの魅力を持っている。
ああ殿下。
わたしは殿下のことが好きです。愛しています。
そう言いたい。
でも、と思う。
殿下がわたしに恋をしていなければ、それは片想いとなってしまう。
わたしは、殿下に好意は持たれているのは感じていた。
今まではそれで満足していたところがある。でも、もうそれだけでは満足できない。
はしたないことだとは思っているんだけど。
ああ、殿下もわたしのことを好きになってくれたら……。
わたしは、殿下の素敵な姿を思い浮かべるのだった。
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